俺の仕事9(双子座の聖衣と兄貴)

 

だから、俺は兄貴のことなんて心配してないっつーの。早く兄貴から、双子座の聖衣を奪って・・・・ふふふっ。
やっぱり鱗衣はへっぽこで使い物ならねーからな。

今週のマリーナは『アイザック、変身したリュムナデスに騙さる。こんなところでやめてください、先生。』
これまたジーサン大喜び。←お前はサガに変身させて喜んでいたのであろう

 

9月11日(月)  晴れ

俺が教皇の間から帰ると、兄貴が病院へ向かうところだったので、一緒についていった。

先週のことがあったので、カウンセリングには随分と時間がかかっていた。

いい加減、兄貴の鬱が治って、早くこの通院生活から解放されたい。
兄貴に密着し観察するのはもう飽きた。

眉間のしわ:3本
殴った回数:0回
報告:飽きた!!←根性が足りぬ

 

9月12日(火)  晴れ 

兄貴は朝から鬱だった。今日は教皇の仕事の当番の日で、先週のことを思い出したらしい。

相変わらず、仕事の日は朝食を食べることができないらしい。兄貴の表情はどんどん暗くなっていた。
悪い方へ、悪い方へとものを考えているのが手にとるように分かる。もっと上昇志向でいけばいいのにな。←その通り

コーヒーだけ飲んだ兄貴は、そのまま一人で出かけていった。
ということは、今日はムウが相方じゃないわけだな。

定刻どおりに帰って来た兄貴は、飯も食わずに風呂に入っていった。
朝よりも眉間のしわは増えていたが、先週のようなことは無かったらしい。

シワの数:4本
殴った回数:0回
報告:ジジィのせいで逆戻り。←余はピチピチの18歳である

 

9月13日(水)  晴れ 

俺が昼頃目を覚ますと、兄貴は家にいなかった。
散歩か??
ちくしょう、でかけるなら昼飯ぐらい作っていけ!!←自炊せよ
兄貴はなかなか帰ってこなかったので、俺は兄貴の観察を諦めて、もう一度寝なおすにした。←きちんと監視するように

兄貴は夕方に帰ってきたようで、そのまま飯を食ったあと、リビングで本を読んでいた。
今日は特になにもなかったらしい。

眉間のシワ:3本
殴った回数:0回
報告:兄貴が家にいないと楽!←サボるでない

 

9月14日(水) 曇り

兄貴が書斎で仕事をしていたので、俺はテラスで昼寝をすることにした。
俺が気持ちよくテラスで昼寝をしていると、突然ムウのところのガキが現れた。貴鬼はおやつがあるからと俺を起こすので、俺は仕方なく白羊宮へと向かった。

白羊宮での話は別紙のとおりです。

聖衣大好き!(ペルセウス編) 

聖衣大好き!(ジェミニ編)

俺はムウのお陰で、1日に2回も石化するはめになった。しかも、2回目の石化は上半身だけで、ジジィに尻は撫でられた上に、頭にたんこぶができるはで散々な一日だ。ちくしょう、あの麻呂眉覚えてろよ。しかも、ジジィとムウのせいで兄貴の鬱がまた進行しちまった。←同じ技に二度もかかるでない、愚か者。

俺は聖衣を担いで、既に鬱MAXで独り言を言っている兄貴の手を引っ張り、家に戻った。とりあえず、冷凍庫の中からアイスノンを取り出し頭を冷やした。

俺がダイニングで頭を冷やしていると、リビングのほうからブツブツと喋る兄貴の声が聞こえた。あーーあ、まだ独り言を言っていやがる。やっぱり重症だ。
俺は兄貴の様子を見るためにリビングを覗くと、兄貴は双子座の聖衣のヘッドパーツを持って、トム!ジェリー!と小首をかしげて話し掛けていた。

『トム?・・・・・・・ジェリー??』

兄貴は恐相の面に向かって話し掛けた。しかし恐相の面が反応しないのを不思議がり、今度は優相の面にトム!といって話し掛けた。

『こっちがトムだったか??』

リビングの入り口にいた俺に兄貴が声を掛けた。兄貴の声はなんだか虚ろだ。
兄貴は首をかしげながらずーーと、トムとジェリーの名前を呼んで語りかけていた。ヤバイ、兄貴が壊れた・・・。

『兄貴、それは喋らないぞ。』

『いや、確かにさっきこれは話をしていた。』

『兄貴の望みで、妖怪に喋れないようにしてもらっただろう?』

『しかし・・・・・。』

兄貴は恐相と優相を見比べながら、なぜ口を開かないのか、どうやったら口を開くのか不思議がっていた。やっぱり羊のところになんて連れて行くんじゃなかった。失敗した。

『兄貴、もう寝ろ!これが喋ったら起こしてやるから。』

俺はそう言って、兄貴の手から無理矢理聖衣を奪うと、兄貴を部屋に閉じ込めた。

眉間のしわ:5本
殴った回数:0回
報告:羊家は悪魔の巣窟←白羊宮に勝手にあがりこんできた方が悪い

 

9月15日(金) 晴れ 

俺が起きると兄貴は双子座の聖衣をテーブルに置き、コーヒーを飲みながらじーっと見つめていた。兄貴の奴、何時から起きてるんだ?

俺はダイニングの壁に隠れ、

『何ジロジロ見てやがる、ごらぁ!!』

と、腹話術なみの声を出して喋った。兄貴は驚いて持っていたコーヒーカップを膝の上に落とすと、茫然となった。しかし、直ぐに膝に零れたコーヒーの熱で我に返り、慌てて膝の上を布巾で拭きとると、俺の名前を呼びながら聖衣を持って走り出した。

俺は、片足を床に突き出すと、兄貴は見事に俺の足に躓いて転がり、リビングのテーブルの足に額をぶつけた。馬鹿め。
しかし、兄貴は俺がわざと転ばせた事など関係ないようで、床に這いつくばったまま俺の顔を見ると、言った。←かわゆいのう

『カノン、そこにいたのか。やはり、喋ったぞ。どっちが喋ったかは分からんが、確かに今喋ったのだ!』

兄貴、そうとう焦ってるな。兄貴は体制を立て直し、床に腰をおろすと聖衣を目の前へと持っていき、ジーーーっと見つめた。

『いいか、こうやって見つめていると、そのうち口を開くんだ。』

『はぁ?』

俺は呆れながら兄貴の様子を観察した。

『さっきはだいたい3時間くらい見ていたんだが・・・・。』←馬鹿じゃのう

はぁぁぁ??兄貴の奴、そんな早くから起きて聖衣を見ていたのか。物好きな奴だ。兄貴は、その後も不思議そうに聖衣のヘッドを見つめていた。
俺は、兄貴が便所に行った隙を見計らって、ヘッドを持ち出した。

俺が風呂に入っていると、兄貴が風呂のドアを開けて声をかけてきた。

『カノン、風呂に入っているところをすまんが、聖衣のヘッドを見なかったか?』

俺は、兄貴に声をかけられて振り向くと、俺を見た兄貴は口をポケッと開けながら間抜けな顔で俺のことを見つめた。←間抜けなのはお前の姿である

『お、お前、何をしているんだ?』

『あ?トムとジェリーが風呂に入りてぇーって言うから、一緒に風呂に入ってんだ!』

俺は頭に被ったヘッドを撫でながら言うと、兄貴は俺が入っているバスタブに駆け寄り、俺の頭を、聖衣ごと掴んでぶんぶんと前後に揺さぶった。

『本当か!?喋ったのか!!やっぱり喋ったのか!?どっちがトムで、どっちがジェリーだ、カノン!!』

ちょっと、待てっくれ。そんなに振ったら気持ち悪くなるじゃねーか!!!俺は兄貴に、風呂には一人で入らせろ!怒鳴り、風呂から追い出した。
それにしても、兄貴のあの慌てようは楽しかった。

俺がそのままヘッドを持って風呂からでると、兄貴は俺からヘッドを取り上げ、再び観察し始めた。

『兄貴。トムとジェリーはちゃんと飯も食いたいって言ってたぞ。』

俺は兄貴に、風呂でヘッドと話をしたことを言うと、兄貴は疑いの目を俺をみた。
やば、嘘だってばれたか・・・・。
しかし兄貴は、昼になると合計4人分の飯を作り、ヘッドをテーブルの真中に置いて、それぞれの前に飯を置いた。

聖衣が飯を食うわけねーだろう!!!←その通り

よっぽど、聖衣に話をしてもらいたいんだな。自分で、妖怪に口を封じてもらったくせにな。

兄貴はその後、ずーっと部屋で聖衣のヘッドを眺めていた。聖衣が俺にばかり、話すのが納得いかないらしい。

眉間のしわ:5本
殴った回数:0回
報告:聖衣に話してもらいたいらしい。

 

9月16日(土)  晴れ 

兄貴は朝早く起きると、相変わらず聖衣のヘッドを見つめながらコーヒーを飲んでいた。

聖衣のヘッドを持った兄貴は教皇庁にある図書館へと向かった。途中で、デスマスクやカミュに会い、なんでヘッドパーツを持っているのか聞かれた兄貴は、調べたいことがあると言ってお茶を濁していた。
流石に、聖衣が喋ることは言わなかった。そんなことを言ったら馬鹿にされるだけだもんな。

兄貴は図書館へ行くと、大量の本を本棚から引っ張り出し、片っ端から読み始めた。聖衣のヘッドは相変わらずテーブルの上の兄貴の前に置かれたままだ。

全ての本に目を通すと、兄貴は溜息をついた。兄貴は本を戻し、図書館にいる神官に鍵を貰い、俺にヘッドを預けると、図書館の奥へと向かった。そこには鍵のかかったドアがあり、兄貴は鍵を開けるとドアの向こうにある地下への階段を下りていった。

兄貴は燭台を片手に長い螺旋階段を下りていった。図書館にこんな地下があったのか?←地下は沢山ある
階段を下り、長い廊下を突き当たると再び扉があった。
その部屋にも地上の図書館と同じくらいの量の本や羊皮紙に書かれた文献が並んでいたが、どれもこれも古い本ばかりで、中には既に文字が擦り切れて判別できないものまであった。

兄貴は燭台をテーブルに置くと、再び本や羊皮紙に目を通し、双子座の聖衣の秘密を調べ始めた。

しかし兄貴の努力は無駄に終わった。結局、ヘッドが喋るヒントすらみつからなかったのだ。
そんなものを調べる前に、自分の病気の勉強をしろ!←その通り

兄貴もこれ以上調べるのを諦め、双児宮へと戻った。

その夜、俺がリビングでテレビゲームをしていると、風呂場から巨大な笑い声が聞こえてきた。

俺が風呂を覗くと、黒くなった兄貴が鏡の前で馬鹿笑いをしていたのだ。

うるせーぞ、風呂場でデカイ声で笑うな!!
ちくしょう、羊のせいだ。←他人のせいにするでない

俺は手元にあったボディブラシを、スナップをきかせ、小宇宙を込めて黒い兄貴に投げつけた。光速で回転したボディブラシは、見事に黒い兄貴に後頭部に命中し、体制を崩した黒い兄貴は、足元にあった石鹸で足を滑らせて、ぶっ倒れた。

ごーーーん、という鈍い音と、黒い兄貴が倒れる音が風呂場内に響いた。どうやら、転んだ拍子に頭をぶつけたらしい。
気を失った兄貴の髪は、だんだんと元に戻りはじめた。
俺は、そのまま兄貴の髪の毛を掴んで、脱衣所に引き釣り出し放置した。ここにおいておけば、いつか気が付くだろう。

眉間のしわ:5本
殴った回数:0回
報告:ストレスが溜まると風呂場で黒くなって馬鹿笑い。

 

9月17日(日)  晴れ 

俺が、朝起きると、兄貴はくしゃみをしていた。どうやら、風邪を引いたらしい。そりゃ、あんなところで寝てたら風邪も引くだろうな。

兄貴は、長々と風呂に入っていた後、再び図書館に出かけていった。
何だよ、まだ諦めてねーのか?兄貴はやはり双子座の聖衣のことが気になるらしく、聖衣のヘッドを持って、地下図書館に行ってしまった。←しぶといのぅ
もういい加減付き合ってられないので、一人で行かせることにした。

夕方になって、誇りまみれになった兄貴は帰って来た。その表情からして、やはり喋る聖衣のことは分からなかったらしい。

地下の図書館で誇りまみれになったヘッドを綺麗に拭くと、兄貴は聖衣の箱にヘッドを戻し、風呂に消えていった。

どうやら、やっと聖衣のヘッドのことを諦めたようだ。

眉間のしわ:4本
殴った回数:0回
報告:未だに、俺が聖衣と話をしたと信じているらしい。兄貴は単純!

 

明日は教皇に報告する日だ。聖衣と話せるようになったら、双子座の聖衣は俺のものになりますか?←出来るものならやってみよ

 

いつも白羊宮でタダ飯を食うておるのだから、石化されたくらいでガタガタゆうでない。
お前らごときに見つかるような場所に、重要文書を保管しておくわけがなかろう。抜かりないわ。
そんなに聖衣の秘密を知りたくば、一回死んで牡羊座の元に生まれなおしてくるがよい。

教皇 シオン


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