僕たち、結婚しました!

1月家族会勉強会 講師 あかね会(昭和大学付属烏山病院患者家族会)所属 石井 斉さん
新谷 泰さん

*きょうは、毎年恒例のようになった新年特別講演会として、当事者の方からお話をお聞きしようと思います。また、この内容はCDに起こして、広く全国の皆さんにお聞きいただこうと思います。そのため、フレンズの抄録では、その一部をご紹介いたします。

 きょうお話をお伺いする石井さん、新谷さん、そして奥様方は統合失調症で、毎日薬を服用しながらの生活です。病気と闘い、お互い好きになった相手を見つけ、プロポーズして、見事結婚。いま幸せな毎日を過ごしているお二人はどんな生活ぶりなのでしょうか。それでは、まず石井さんのお話からお聞きください。*

石井さん 私は19歳の時に発病して世田谷の烏山病院に入院しましたが、当時は妄想激しくて、テレビと話をしたり、人工衛星から見つめられている気がしていました。空からレーザー光線で殺されると信じ込んでいたり、夜眠れなくて、近くの井の頭公園の桜の花の頃、見物客の間を歩き回って、自分が歩いた跡は幸せが訪れるというような考えがありました。

 すごく監視されている気がしまして、電車に乗ると見つめられているような気がして、電車にも乗れなくなって、辛い思い出があります。また、飼っている猫のおなかの中に盗聴器が入っているという妄想もありました。

 それで大学入る前に発病したんですが、大学入試で合格して、入学式に行って、その1週間後には入院ということになりました。

 3月で退院しまして、大学に戻ったのですが、全然授業に付いていけなくて、中退しました。ま、中退には後悔していませんが、親に学費の負担をかけてしまっていたので、それは申し訳ないことをしたと思っています。

 烏山病院ではデイケアに通っていて、今結婚している彼女と出合ったわけです。現在私は36歳ですから、今から16年前になります。そのときから私は彼女に一目惚れしてしまいました。それからずうっと友達関係で約10年以上が経ち、3年前に結婚することになります。引越しも二人で行いました。それから今日まで二人に生活が続いております。

*結婚に至った石井さんはこうした経歴の持ち主です。以下に石井さんの講演のレジュメをご紹介いたします。*

1)19歳で発病。

2)彼女との出会い。

3)リストラに遭って、彼女に救われる。

4)当事者同士の結婚は無理ではない。

5)家を出て6年。彼女と暮らして3年。

6)眠れないときの過ごしかたや、約束していること。

7)「愛があればお金がなくても良い」というが現実は厳しい。

8)普通に暮らすこと、普通に生きること、普通の病気なのだから。

9)悩み事は一人で考えないで。

10)絶望を捨てた二匹のウサギ。

11)病気や障害を理由に結婚や恋愛がタブーな時代は終わらそう。

12)愛に病気も障害も関係ない。

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*それでは、次に新谷さんのお話をお伺いします。*

新谷さん 私は統合失調症になって17年になります。通院している病院は石井さんと同じ昭和大学付属烏山病院です。入院は4回繰り返しました。

 今から遡ること3年以上前、私と妻は出逢いました。場所はちぐさ工芸共同作業所でした。当時私は訓練を積んで、一般就労を目標にしていました。私が病気の症状と薬の副作用に一進一退を繰り返している頃で、果たして自分にはどんな仕事が向いているのか、模索していた頃、妻が作業所にやってきました。

*では、新谷さんの講演用レジュメをご紹介しましょう*

1)出会い:いつ、どこで、その時の二人の様子

2)アプローチ:なぜ、どこで、その時の私の心境

3)交際を始めて:どのような交際、

その時の経済状態、その時の私の心境、その時の両親の様子、その時飲んでいた薬

4)交際から結婚へ:なぜ、いつ、プロポーズの言葉、その時の私の心境、その時の主治医の反応

5)入籍:いつ、どこで、どのように、その時の私の心境

6)結婚生活:いつから、どこで、その時の経済状態、結婚生活を始めてからのライフスタイル、結婚生活を始めてから起こってきた問題、結婚生活を維持するために必要な経費、今後の2人の希望・目標

7)これから結婚を考える精神障害者へのメッセージ

*以上がお二人の講演内容ですが、このあと、会場から様々な質問がお二人に向けられました。CDに入っている質問項目を次に上げておきます。*

質問1)現在の仕事と収入についてはどうなっていますか?

質問2)病気になって困ったこと、良かったこととは?

質問3)主治医との関係についてどんな風にお考えですか?

質問4)偏見についてどんなご意見ですか?

質問5)三障害の中で精神障害についてどのようにお考えですか?

*以上*

僕たち、結婚しました!のCDができました

 事務局では講演録CDシリーズの第4弾として、この「僕たち、結婚しました!」のCDが完成し、この度頒布開始いたしました。

 ¥1,000円(郵送料200円)お申込:新宿家族会事務局
   詳細

              電話 03-3987-9788まで

また、第1弾「ちょっと私の話を聞いてください」、第2弾「心の病を克服そしてホームヘルプ事業へ」、第3弾「日本人の良心」の頒布も続いております。

編集後記

 精神障害者の結婚というものに、我が子の問題と合わせて関心があった。昨年、あかね会の高山さんにご講演をお願いした際、あかね会の講演会予定をお聞きして知った。そして、今回の講演につながった。

 いま、日本に限らず世界中で精神障害者で結婚生活を送っている方は何名位いるのだろうか。私としてはあまり聞いていなかった。結婚という人生の最大ともいえるイベントを体験せずに一生を終わった精神障害者の方も少なくないのではないだろうか。

 お二人の言葉から度々聞かれたのが「愛」という言葉である。ということは、愛は人として生まれ、異性との共同生活を送る上で最も重要なテーマ、あるいは原点ともいえるものなのだろう。そして、お二人は幸せの只中にいる。病気も二人チームで回復に導いているようだ。

 精神障害と異性関係、そして愛。これは、単に一般健常者たちがメールや合コンなどといったところから、気安く結婚して、気安く離婚などという結果に至っている現実とは格段の違いがあるように思える。異性との交流の中で育まれる愛。それが病気に対して最大の薬にもなっているのではないだろうか。。

 お二人が薬を飲みながら、体調を整え、その日その日、一日一日を真摯に生きている様子が伺えた。そこには我々一般には味わえない愛の深さがあるように思える。