「私の介護体験・よかったこと・失敗したこと」

8月定例会 拡大家族交流会
参加者同士のグループディスカッション 記録 新宿フレンズ役員 E.H


 新宿フレンズでは年に一度、「拡大家族交流会」という、家族に心の病を持つ人を抱えている参加者同士の交流や情報交換を目的とした機会を設けています。今年度、平成18年度の交流会にも、遠くから近くから、たくさんの方が参加してくださいました。

前半は、当事者の年代によって4つのグループに分かれて、心の病にまつわる悩みをざっくばらんに話し合ったり、情報を交換する場としました。

後半は、参加者全員にお一人ずつ話していただいて皆で伺うとともに、新宿フレンズの印象や、新宿フレンズの活動に期待することについて、意見を述べ合いました。今月号の「フレンズ」では皆さんから挙がった意見をもとに、新宿フレンズの現在とこれからについても考えてみたいと思います。

【こんな悩みがあります】

 話し合いでは、各グループともにいろいろなお話が出て、あっという間に時間が過ぎました。当事者の病気が分かってから間もない方から、もう何年も病と付き合っている方まで、体験もそれぞれでしたので、困っていることや悩んでいることを語り合うだけではなく、改善策や具体的な情報が活発に飛び交う、非常に有意義な交流の場となったようです。

 その中で、次のような悩みが挙げられました。

・ 当事者の病気が分かったばかりで、対応に戸惑っている

・ いま飲んでいる薬が合っているのかどうか、薬の量が適正なのかが不安。どうやって確かめられるのか

・ 当事者がなかなか外に出られないで閉じこもっている

・ 暴言を吐く当事者と、毎日ずっと顔を合わせているのがつらい

・ お医者さんが忙しくて、なかなか話を聞いてもらえない

・ 妄想を信じているので、家族はどういう対応をしたらいいのか分からない

・ きょうだいが病気だが、同居の親が自分の子供が精神病になるはずがないと言って、医師に診せない

・ 当事者を就労に近づけたいが、どんな方法があるか

・ 就労しても、すぐ辞めてしまう

・ 当事者に合った施設を利用させたいが、どうやって探したらいいのか

・ どこの病院がいいのか分からない

・ 当事者がお金を使い過ぎる

 悩みの内容は、病気そのものの治療や薬のことから、当事者の生活や就労のことまで、幅広いものでした。これらについて、それぞれのグループで十分に話し合ったようですが、いずれも簡単に解決できるような悩みではないかもしれません。ですが、他の人の話を聞いて、それが改善に向けての工夫につながればよいと思います。

 例えば、「お医者さんになかなか話を聞いてもらえなくて困っている」という場合に、ある人は、「お医者さんは忙しいから、できるだけこちらの言いたいことを短い時間で分かってもらえるように、メモを書いて持っていったらどうですか」というアドバイスをしていました。また別の人は、「○○病院の先生は比較的時間をとって話を聞いてくれますよ」という情報を提供してくれます。あるいは、病院やそのほかの社会資源について具体的な情報を求めている場合には、ベテランの会員が個々の家族の状況を聞いたうえで、その家族に合った知識を提供していました。

 また、新宿フレンズでは毎月、医師や福祉関係からの専門家を呼んで勉強会をしており、困っていることを相談できる機会もあります。家族会で得た情報をうまく利用して、ご自分と当事者に合う方法をみつけることができるのも、家族会に参加することの大きなメリットのひとつです。

 悩んでいてとても苦しい状態が10点として、会場をあとにしたときに、それが9点に減ったとしたら、とても大きな変化といえるでしょう。目の前にある悩みそのものが解決しなかったとしても、同じ悩みを持つ仲間がこんなにいる、一人で悩まなくていいのだと、当事者のことで気を揉んでいる家族の気持ちが少し軽くなるだけで、一歩前進です。何よりも、当事者と接する家族のこころが元気であることが第一だと思います。

【家族会の印象】

 家族会に参加してみての印象を、たくさんの方に語っていただきました。

・ 新宿フレンズはいろいろな人を受け入れている

・ 自分のほしい情報が得られるところだと思う

・ この会は新しく参加した人のための会でも、長く病気とつきあっている人のための会でもある

・ みんな同じような悩みを抱えているんだなと思う

・ いろいろなお話を聞けて、とても勉強になる

・ たくさん自分のことを話して、気が晴れたような感じがする

 「インターネットを見てきました」という方が多かったのですが、これが、新宿フレンズの大きな特徴のひとつです。ホームページを見て遠方から足を運んでくださる方や、インターネット世代の若い方も集まってくださいます。参加者の在住地や世代が幅広いため、自然と話題も広がります。それが「新宿フレンズはいろいろな人を受け入れている」という印象につながったのでしょう。

 初めて参加された方からは、「新宿家族会はインターネットで時々見ていましたが、勇気を振り絞って本日参りました。来てみたら結局自分のことをべらべらしゃべってしまい、気がすんじゃったような気がします」、「こちらにうかがうまでは悶々と一人で悩むことが多かったのです。本で読んでも分からない生身の情報を得られました」、「今日は皆さんのお話をうかがいに来たのに私がずいぶんしゃべっちゃって。悩んでどうしようもなかったのに、もっと大変な思いをなさった方がいたので反省しました」などのご感想をいただきました。

 たとえ外から見て病気が軽い状況であったとしても、大切な家族が病気で苦しんでいるという悩みを抱えた家族なのですから、遠慮なくどんどんお話していただけてよかったと思います。これらの感想から、交流会に参加することで、それぞれがご自分の心の中に何か変化を感じられたことがうかがえます。この小さな変化が、現状の改善につながる初めの一歩となり得るかもしれません。

 家族に精神障害者を抱えての生活は、物理的にも精神的にも決して楽ではありません。その悩みや苦労を理解してくれる人が、手の届くところにいる、それが家族会です。この新宿フレンズを、必要な情報を得たり、困っていることを相談して改善のためのヒントを得たり、あるいは、悩みを話して気持ちを楽にする場として、これからも上手に活用していただければと思います。

【家族会への期待】

 家族会に期待することとして、次のような意見が挙がりました。

・ 医師、当事者、病気に関する情報を教えてほしい

・ 自立支援法に関する活動をしてほしい

・ 病院や医者の選び方を教えてほしい

・ 当事者が働くために必要な情報を充実してほしい

・ 家族間のトラブル解決のための情報がほしい

・ SSTリーダー高森信子先生の講座(「フレンズ8月号参照」にあったような、再発防止やセカンドオピニオン、扶養年金に関する情報を充実してほしい

・ 入院にかかるお金や手続きに関する情報がほしい

 特に、具体的ですぐに使える情報を求める声が多く寄せられました。情報提供という意味で、家族会への期待が高まっていることが見受けられます。一般に、家族会には、他の場所にはない独自の知識・情報の蓄積があります。新宿フレンズにも、これまでたくさんの会員の方々が勉強をしてきた病気の知識や通院の工夫、服薬と副作用について、また、年金や保健センター、作業所等の利用など社会資源に関する知識の積み重ねがあります。さまざまな困った状況への対応についても、多くの会員の体験を伴った工夫の蓄積があります。

 また、新宿フレンズでは、近隣の病院情報を集めることも積極的に行っています。さらに2005年度の事業として、新宿区内の福祉施設に関する情報をまとめた『新宿区精神保健福祉ガイドマップ』(新宿フレンズ300円で販売中)を、会員自らが施設を見学して作成しました。そして今年度は、新たに「夜の家族会」を始めたところです。今後もできるだけ皆様のお役にてに立てるような活動を展開していきたいと思います。


西新宿で
新宿フレンズ・夜の家族会を開催
 記録 T.K

 7月9日、第2水曜日。初めて新宿フレンズが夜の家族会を開催した。事前にマスコミにも働きかけたので、東京新聞には大きく紹介されたし、日経新聞や新宿区報も情報コーナーに掲載。FM東京でも放送されたが、果たして何人の方がいらっしゃるかと心配しつつ、6時半に会場の西新宿のムツミ作業所へ。役員たちが受付の用意をする間も無く、初めての方が尋ねていらして、次々と来会された。

【たくさんの悩みを受け止めて】

 机を囲んで、1人ずつ自己紹介を兼ねて困っていることを話していただく。当事者の言葉の暴力に悩んでいる、暴力を振るう、妄想を信じ込んでいる、自殺未遂をした、無気力で何もしない、最初に誤診されたため医療不信で通院しない、薬を拒否している、家族を敵視している、きょうだいが当事者だが親の死後どう生活させたらよいのか、経済的な心配等々・・・。

 語られる言葉の重さに、家族の苦しみが滲み出る。自然にそれらの悩みに役員や以前からの会員、参加してくださった精神保健福祉士の方々が質問し、それぞれ相談に乗る形になっていった。当事者の方も2人いらして、心の苦しみを語ってくださった。それを聞いている家族も、自らが抱える当事者の苦しさを理解することにもつながったように思う。

 具体的な病院の紹介、作業所や職業への就き方、家族の接し方、年金のしくみなど、話は多岐に渡った。
 参加者は初めての方が12人、昼の家族会会員が8人。初めての方がたくさん来てくださったのはうれしいことだったが、お一人おひとりに時間をもっとかけて話し合って差し上げたかったと思う。

 「夜の家族会」を開催したのは、昼間は参加しにくいお父さんやご主人など、男性の参加を考えてのことだったが、新たな男性参加者は4人だった。
 夜9時の解散後に近くの居酒屋で夕食をとったが、新しい方も参加され、しばし、日常の苦しみや不安を忘れて、心置きなく語って行かれた。また医療につながっていない方には、後日、保健福祉士さんが電話をかけて相談に乗った頂いたという。こうしたケアも今後視野に入れてゆきたい。

【多くの人に知らせたい】

 第2回の8月夜の家族会のお知らせは新宿区報のみ。どうだろうかと案じていたが、初めての方はお2人だった。じっくりお話を聞けて、会員もこういう考え、また別の考え方と、縷々述べ合ったのでお2人には何か役立つこともあったのではないかと思う。

 しかし、この新宿区だけでも、まだ医療につながっていない人や閉じこもりの多いこと、受けられる福祉を知らないまま悩んでいたり経済的にたいへんな思いをしている方などの多いことを思うと、より広報活動を発展させる必要を感じている。

 最近の社会を騒がせた事件には精神病の文字が新聞紙上に見えることがある。きちんとした治療を受けていれば事件は防げたのではないか、とそのたびに思う。精神疾患に対する無知と、社会的偏見・差別におびえて、「うちの子がそんなはずはない」と病院にいくのを家族までもが嫌がったりためらったりして、病状を悪化させてしまう現状がある。早く医療につなげるためにも、家族会の働きかけが大切だと痛切に思う。

 そして病気を隠すことに懸命になって偏見におびえて暮らすようなことをなくしたい。もっと病気の知識を普及し、きちんと発言していくことが、心の病気への偏見をなくすことにつながり、ひいては潜在的な当事者を、きちんとした治療につなげることにもなると思っている。「夜の家族会」は、そうした面でも社会に働きかけていきたい。

 第1回の夜の家族会には、朝日新聞・生活部記者が取材に訪れたが、残念なことにはまだ記事にはなっていない。第2回にはTBSラジオの取材があって、こちらはフレンズ会長のインタビューと合わせて、夜の家族会の意義が朝のラジオ番組「人権TODAY」で放送され、ホームページでも「精神障害についてもっと発信しよう!」という題名で、紹介されている。http://www.tbs.co.jp/radio/np/human/human_frame.htm

 次回はポスターやビラを区役所出張所や保健センターに送付して、助けを必要としている方々のもとに、この情報が届くようにと願っている。

新宿家族会へのお誘い 
 新宿家族会では毎月第2土曜日、12時半から新宿区立障害者福祉センターに集まって、お互いの情報交換や、外部からの情報交換を行い、2時からは勉強会で講師の先生をお招きして家族が精神障害の医学的知識や社会福祉制度を学び、患者さんの将来に向けて学習しています。
入会方法 

編集後記

 8月は拡大交流会で、グループ単位の話し合いのためテープ録音できず、役員の記録で紙面ができた。多少宣伝めいた内容になってしまった感があるがやむを得ないか。

 8月の例会はもう一つイベントがあった。「総会」である。昨年度から具体的に始まった役員会方式の運営は、新宿フレンズを一変させた。17年度では家族会メンバー自らの手で作った「精神保健福祉ガイドマップ」制作。会計管理においては専門員がつき、会計監査もきちっと行われた。そしてさらにいえることは、広報宣伝の充実、マスコミへの期待、ということがあった。

 我々家族は社会に対してあまりにも無口ではなかったか。自立支援法が三障害を同じ扱いにするという甘い言葉で認めてしまったが、他の二障害との違いは何かと言えば二障害の家族の声の大きさ、口数の多さ、と言えよう。その差が「精神は遅れている」という結果を生んだ一つの原因ではないだろうか。

 精神を普通の病気にする。つまり、誰でも罹りうる病気であること。恥ずかしい病気ではないこと。そうしたことを周囲が理解して見守れば必ず治る病気であること。

 一般がこれらを理解していただければ、患者も家族ももっとのびのび治療し、回復を早めることができる。我々はそんな広報宣伝をマスコミの力を借りてやっていきたい。