早期警告サイン・再発を防ぐために

---------聴き上手になるために-----------

5月勉強会より 講師 慶應義塾大学精神神経科 水野雅文先生

 本日は新宿家族会勉強会のテキストにしています『精神科リハビリテーションワークブック』(中央法規出版)第9章の「早期警告サイン」を中心に、再発という問題についていろいろ考えながら、実際的な練習をかねてお話をさせていただきます。

 「早期警告サイン」とタイトルにありますが、精神科の病気の場合、1回で病気が終わる方と一旦お薬やほかの治療でよくなったあともしばらくしてから再発してしまう方、あるいは間があまりはっきりしない方もなかにはいらっしゃるかもしれません。今日お集まりの方々の中にはお薬で一旦よくなったあと、また具合が悪くなるということをご経験の方も多いのではないかと思います。

 その悪くなるきっかけはいろいろなことが考えられて、人それぞれなのですが、前に比較的わかりやすい理解として「脆弱性ストレスモデル」という話をしたことがあったと思います(テキスト12ページ参照)。

 これについて簡単に説明しておきますと、再発してしまうストレスの閾値があるとして、治療ではそのラインをなるべく上の方に持っていって、ちょっとやそっとではそれを乗り越えないようにしていくことを目標にするわけですが、私達の生活というのは、普段からなんらかのストレス、つまり、ぞれぞれの生活の中でなかなか避けられない問題というのがあると思います。ある人にとっては、心の病気と併発している体の病気だったり、あるいは経済的な問題、家族の問題であったり、簡単には解決のつかない日常的な問題があります。これもなるべくなら少なくしたいわけです。一方ではこうした普段からあるストレスがあるわけです。それから、日常生活には、このほかに予期しないストレス、例えば、いいほうの話で言うと結婚、就職、試験など、それから家族の方が亡くなるというような悪いストレスもありますね、これらをライフイベントと呼んでいます。そういう日常的でないストレスもあって、大きいストレスから小さいストレスまであるわけです。

 そして、普段ストレスが低い方でも大きいストレスが来ると、思いがけず自分が耐えられるラインを超えてしまうということがあります。また、普段から少しストレスが高い方でも、小さな出来事であれば、ラインを超えないということもあります。私達としては、まず普段からの再発のラインは上に上げておきたい。それにはお薬をきちんと飲んでおくということが自分たちでできる比較的手近な方法です。

 それから普段からのストレスも下げておきたい。EE(家族の感情表出)といった問題、あるいは就労のこととかいろいろな問題が一つずつ解決していくことで、普段からかかっているストレスというのは小さくなっていきます。それに加えて何か大きい出来事があるとき、これは「もう来るな」とわかっているときには、それをなるべく小さいストレスにするための心の準備をしておけばいいし、場合によってはお薬をあるときだけ多めに飲んで再発のラインを上げておくというふうなテクニックもあると思います。それぞれの方でやり方も状況も異なると思いますが、そういう工夫が必要ということです。

 普段からいろいろ心がけていても、再発というのは、ちょっとしたことがきっかけになって起こります。再発が起こってしまうラインが下がってしまうか、ストレスのほうが上がってラインを超えてしまうか、このどちらかの組み合わせだと言うとわかりやすいかと思います。

 再発が起こってしまうラインが下がってしまうというのは、例えばお薬を飲まなくなってしまうことですね。ストレスがふえて上がってしまうのは、ある程度は予測はつくけれども、人によってそれぞれ感じ方が違いますから、なるべくそのご本人の立場になって状況を早めに理解しておくということが大切になります。再発というのは思いがけず起こってしまうことがあるわけですが、人それぞれ、その起こり方、起こり始めるときの症状というのは、特徴があるようです。ある人は眠れなくなってくるとこれは再発のサインかなということがあります。またある人は周りの様子が気になって落ち着かなくなってソワソワして、なんとなくふらっと出かけることが多くなるとサインかなという人もいます。これが長い経過の中でみると、どうも一人の方を拝見していると、「いつか来た道」という印象を持つことが多くあります。

 そこで、今日の「再発を防ぐために」ということの戦略は、今までにこういうことで失敗したなという、ちょっとつらい体験ではありますけれども、それを振り返っていくことで次回に生かしていこうというのが趣旨ということになります。

 まず、ストレスがかかっときにどんな心や体の反応が起こってくるかを一般的に考えてみるというテーマがあります(テキスト106ページ参照)。どんな病気でもやはり早く気づいて早く対策をとるということで、あとの治療の結果や回復の程度がよくなるということが期待されるわけです。それによってその慢性化を防ぐということがとても大事になってくると思います。これは精神の問題でもほぼ同じ事が言えると思いますので、再発の兆候というものに対して早めに気をつけておいていだだきたいと思います。

 そのサインにはいろいろな共通点があると思いますが、いちばんわかりやすいのは体の症状でしょう。例として、「ストレスへの身体的反応」として、例えば不眠があります。不眠というのは眠りが悪いということですが、その方によって、寝つきが悪くなる方、熟睡感がなくなったと言う方、朝早く目が覚めて困るという方と、それぞれパターンが違います。いつも眠れなくなると決まっているわけではありませんが、眠れないというのは一つの大きなキーワードのようです。それから食欲が亢進してしまう。逆に食べられなくなるということもあります。また、不安な気持ちや緊張感が強くなる、イライラする、こういう情緒面の変化も大きな問題で、体の症状としては、理由もなくドキドキしたり手足が冷たくなったり頭痛や肩こりというようなことが出てきます。あるいは理由のない疲れ、疲れやすくなる、ということが反応としてあらわれてきます。

 そこで、「みなさんにとって過度なストレスにさらされているという警告サインとはどんなものでしょうか?」という問いが出ています。これを思い浮かべて、ご自分のことでも、ご家族の当事者の方のことでもけっこうですから書いてみましょう。

 ストレスに気がついていたら、これは対策をとることが大事です。気づいていてそのままにしていて「疲れているなぁ」というだけではなくて、気がついたら早めに手を打っておくということが大事になってくると思います。それにはいろいろなリラックスの仕方があって、なるべく手近で効率のいい方法を選んだほうがいいと思いますが、ストレスの解決方法の中で前に試みた方法の中でうまくいったものを試してみるということが大事になってくると思います。ストレスで悪くなるという病気は、なにも精神科の病気だけでなく、慢性疾患はみんなそうです。心臓病、ぜんぞく、胃潰瘍、糖尿病、てんかん、がんなどもストレスで悪くなると言われています。ですから、ストレスは溜めないに越したことはない。なんとかうまく切り抜ける方法を身につけていきたいものです。

 一方で、再発はそのラインが下がってしまうことでも起こりやすくなるわけです。先程も言いましたように、その一つはお薬を飲まなくなることですね。ほかにもいろいろなストレスがあって、それぞれのご家庭で状況は違うでしょうが、例えば、カゼをひいたあとなど体のコンディションが悪くなること、忙しくて寝られなかったとか、あるいはアルコールをとりすぎたとき、シンナーや覚醒剤を使ったとき・・・(テキスト107ページ) こういった薬物はまだまだ日本では一般的ではないと言いますが、簡単に入手しやすくなっている状況がありますし、精神障害の方でも、なんとなく頭がぼんやりする、現実感がないということを、本来の病気の症状で向精神薬で治療すべきものだというふうに感じないで、覚醒剤をうっかり使って最初は普段と違ってシャキッとしたように感じることがあるわけですが、二度目以降、だんだんと依存や独特の症状が出てくるということは誰にでも起こりえますから、全く関係のない問題とは考えないでいただきたいと思います。

 次に早期警告サインについて。いまお話したような原因で、ストレスが高い状況が長くつづいたり、お酒を飲みすぎたり、あるいはお薬を自分で調節した結果などで、脳の中の化学物質の反応が乱れて、せっかく向精神薬でバランスをとった状況がくずれてしまう、ということがあります。それで起こってくる症状というのは、これは再発のごく初期のサインだったりするわけですが、一般的に私達が「疲れた、ストレスが溜まっているな」と感じるときの症状に非常によく似ています。いわゆる精神科の病気の始まりも、ごく軽い初期の段階で病気になったとよくわかるような症状で始まれば比較的早く病院にかかるのですが、最初は元気がないとかなんとなく表情がさえないとか、家の中から出なくなってきたとかなんとなくイライラしているとか、誰にでもあるような、原因が他にあるのかな、ということで始まったと思います。

 再発というのも同じで、一般的には、最初から幻覚、妄想とかすごく興奮したりとか、誰もがこれは薬を少しふやさなければと思うような再発の仕方をするわけでは決してないのです。

よくよく振り返ってみると、「あれは疲れただけじゃなかったのかな」と思っていたことが再発の早期のサインになっていた、ということがしばしばあります。日常生活をしていると、よもやそれが再発のサインだとはなかなか思えないわけです。例えば学校に行っていれば、友だちとのトラブルなんじゃないのかなとか、試験が近いから大変なんじゃないかなとか、そんなふうに思うと思います。職場にしても、社会復帰して就労していても、あるとき「行きたくない」と言う。行きたくないことなんて誰でもあるよ、というのも一理あるわけですが、それが何日も続くというのはちょっと普段と違うなと考えていただきたいと思います。

 再発の「早期警告サイン」として、日常生活の中でどんなふうに出てくるかを上げれば、仕事や趣味、友人との交流に興味がなくなる、家族や友人といつものように関われなくなる、注意力や意欲がなくなって忘れっぽくなったり集中力がなくなる、リラックスできなくなる、不眠、そして極端におしゃべりになったり無口になったりする、周囲の状況が以前とは変わってしまったように感じる。感じ方が変わったように思える、緊張したりイライラすることが多くなる、頭痛や身体の一部の痛みが続くなど、いろいろなものがあります(テキスト108ページ)。

 早期警告サインというのは、周りの方が気づくことも大事ですが、その前にご本人がチェック項目として気をつけていただく項目ですから、ご本人でないとわからないようなサインも含まれます。そして、再発が起こる直前に2つ、3つ特徴的な警告サインが見られるということをまず理解していただきたいと思います。ここに出てくる全部の項目を覚えておいていただく必要は全然ないと思います。その代わり、みなさんの身近な当事者の方の場合に起こってくるサインというのをよくよく考えて、何をチェック項目にしておいたらいいかということをしぼって、それは忘れないでいただきたいのです。

 そのことについては、ぜひ今日お帰りになったらご本人と相談していただいて、家族、お友だちとか学校の先生とか職場の仲間とかそういった方たちにも、もし可能ならわかっていてもらって、すぐに対応してほしいということを伝えておくと、大きいトラブルは避けられるのではないかと思います。

 それと肝腎なのは、サインに「あっ、気がついた」と思ったら、「来週、お医者さん行くから・・・」などと待っていてはいけないということです。「早急に対策をとる」のがいちばん大事なことです。症状の悪化とか精神疾患の再発を具体的に防ぐには、気がつくだけではなくて、次の対応をとることが大切です。対応についてあとでふれますが、その前に再発につながるサインについて、もう一歩踏み込んで具体的にすると、どうなるかを見ておきたいと思います。

 テキストの例では、睡眠時間が2時間以上減り、しかもそれが1日だけでなく3日間つづけて減ってしまう、というふうに具体的な書き方をしています。また、読書を5分以上できなくなる。新聞が読めなくなる。テレビをつけてもずっとチャンネルばかりいじっているといったことですね。それから部屋に4時間以上閉じこもっていることが3日間以上続く。つまりは、家族の方との関わり方がいつもと違ってくる。このように、具体的なことが相談されていることが大事になってくると思います。では、ここで、みなさんの場合の早期警告サインを書き出してみてください。できるだけ具体的に何時間とか何日続くとか数字も含めて考えていただくことが大切なポイントです。

 ここで実際に皆さんの場合を記入していただきましょう。

では、みなさん、お書きになったところで、それぞれの方の警告サインをお互いに聞くことで、「そういえば自分の家の場合にもあてはまる」ということもありますので、質問も含めてお話しいただけますでしょうか。

Aさん:同居してないのでつかみくいのですが、感情や気持ちが落ち着かなくなったところで、電話やメールで親に対する批判などを訴えてきます。朝方、早い時間に。それも一つのサインかなと。対応をあやまるとエスカレートしてしまうが、うまく対応するとおさまります。うまくというのがむずかしいんですが、主治医はとにかく本人の言うことを聞いてあげるように、というので、同じことを繰り返しても黙って相槌をうって聞くようにしています。言ってくることに対して、「そうじゃない、君の考え方はおかしいよ」というと、どんどん不安が増長して激しくなってしまうんですね。

Bさん:動作が荒っぽくなります。ドアをバタンと閉めたり、お茶碗をガシャガシャガシャと洗ったり。あと遅い時間によく歌のテープをボリュームを大きくして聞きますが、調子が悪くなるなというときは、「少し音を小さくしてくれない」と言った場合に、ちょっと小さくしてもまたすぐに大きくしてしまいます。いいときは、そのまま小さくしてくれるのですが。ほかには、家族が帰宅した途端に自分の関心のある問題について議論をとめどなくしてくる。アトピーのかゆみとイライラの悪循環になる。のどの渇きから冷蔵庫や外のお店と自分の部屋の行ったり来たりになるなどです。

Cさん:精神科で母が4回目の入院をしていますが、だいたい1週間くらい不眠がつづくと調子が悪くなるように思います。

先生:その場合は1週間つづいたらもう入院しなかればならない状態になってしまうわけですから、不眠が3日間つづいたら早期警告サインと考えて、そこで何らかの手を打たなくてはいけませんね。

Dさん:不眠が2~3日つづいて普段からある幻覚や妄想がひどくなるということがあります。飲んで寝てから2時間で起きてしまうことが2日間つづいたら、ドクターに薬の量などを相談しています。それがサインですね。

 ご家族の中には、まだ入院中の方とかもいらっしゃいますから、ここでは再発を増悪(ぞうあく)とか再燃と読みかえていただいてもいいです。増悪、再燃といっても程度はいろいろあると思いますが、では、次にサインをみつけたときの作戦についてお話したいと思います。サインに気づいたらどうするかということです。増悪、再燃くらいのときは再入院は前提にしない、家族の中で対応するという一つのコースがありますね。それから再発イコール入院とすれば、この場合は病院に連れて行くか往診をしてもらわなければなりませんね。現実的には2段階くらいで考えて、対応をそれぞれ考えておくのが実際的かもしれませんね。

ただ、自宅にいらしてあくまでなるべくなら入院は避けたいという方針でみている場合には、まず増悪、再燃に対して気を配られておくということが大事になってくると思います。いずれにしても、再燃も再発の最初の一歩と言えますので、これは言葉の違いみたいなもので、やはり「普段の調子が落ち着いている状態よりも悪くなるときのサイン」、というふうにとらえておいていいと思います。

先生 いろいろ出ましたが、次の段階として量の問題、時間の問題とか、例えば不眠ですが、それがどんな不眠で、どれくらい続くか、何日間続くか、その辺も具体的に相談しておいていただければと思います。不眠自体は病気でもなんでもありません。私なども時々不眠状態になりますし、健康な人でも不眠はあります。ですから、病気のサインとして見る場合は冷蔵庫の開け閉めの頻度、つまり回数といったこととか、音楽聴くときのボリュームの大きさもどれくらいのレベルを異常な音とするか、そのレベルの基準を定めておく必要があります。ステレオのボリュームのツマミにマークをつけて、これ以上のレベルで何日間聴くようになったらサインが出ているとするのもいいでしょう。このように細かく具体的にサインを見つけられるような状況を作っておくことがよろしいでしょう。こうしたことは主治医の先生はここからが病気で、ここからは病気ではない、といった診断はできませんから、お家のかたが見ていて、具体的に決めておいていただきたいと思います。あるいは相談しておいてください。

 次に警告サインが見られたときはどうすればいいかですが、まず警告サインが実際に見られるる前に、サインに気がついたらどうしたらいいかをはっきり決めておくことが大切です。具体的には第1に医療機関のスタッフ、主治医や訪問看護婦さんに連絡することがあげられます。そうしますと主治医の方では緊急事態として受け取り、対応をどうするか相談していただけます。次の通院日に相談すればいいというようなことではなくて、せっかくサインに気がついたのですから、すぐに相談するようにしてください。次の通院日まで待って主治医に報告したりしていると対応が遅れた、という結果になる場合もあります。そこで、問題になるのがサインの量的、時間的判断基準が大切です。あまり頻繁に起こるサインでその度に主治医に報告していると、「お宅ではしょっちゅうあること」として受け取られますから、何段階かに基準をつくり、Aの段階ではこうする、Bの段階ではこの薬に変える、Cでは訪問看護を受ける、というように主治医と事前に打ち合わせておけば迷わずに対応することができます。

 第2に原因を取り除くことです。例えば薬を飲んでいなかったら、飲んでもらうようにすることです。あるいは何かの試験を受けるようなことでストレスの波のようなものあれば、それは今回は困難だからパスしてしまおう、先延ばしして体調を戻したほうがいいと判断するようなことです。そのように原因を考え、その原因を取り除く対応が必要です。

 では、ワークブックに戻っていただいて、そこに「私の早期警告サインは」と「サインに気がついたら、私は」として記入欄が用意されていますので、皆さん書き込んでみてください。この欄はご本人から周りに対してどんなヘルプを求めるか、あるいは一緒に住んでいるご家族がどんな援助を外に求めるかということを視点に入れて書き込んでください。

 この病気の早期警告サインはいつ起こるか予測することはできません。それはふだんから健康に気をつけている人でも風邪を引くことがあるのと同じで、あくまでも非常事態に備えるものです。「備えあれば憂い無し」という消極的に捉えるのではなくて、必ず起こりうるものに備えるという、具知的な手順を用意しておくという捉え方がポイントです。

 病気の初発でも、単なる思春期の暴力的行動というものもありますが、中にはそれと紛れて病気の始まりだったということもあります。ですから、早期発見、早期治療に結び付けるためにもこの病気は起こりうるものとして捉えて、警告サインが出たらどうするかの手順を事前に決めておくことが大切なのです。

 

 この早期警告サインの用紙は、絶えず内容を記憶しているわけにはまいりませんが、しかし、サインが現れたらすぐに対処の行動計画を実行に移す必要があります。従って、この用紙は常に目につきやすいところに置いておく必要があります。あるいは、何枚かコピーして治療チームに渡しておくことや、自宅の中でも1枚ではなく冷蔵庫の扉、トイレのドアなど何か所かの目につくところに貼っておくこともいいでしょう。

 早期警告サインについて、皆さん自身、さらに皆さんのスタッフや主治医に加え、一緒に住んでいる人たち、親しい友人、家族、隣人、仕事仲間、同級生、学校の先生などにも知っておいてもらう必要があるかもしれません。かかわっている人はそれぞれ、リストにある自分の名前の横に、計画を忘れないために何をするべきかを書いておいてください。みなさんのスタッフや主治医は、診察などで会う度にみなさんの早期警告サインをチェックすれば、患者さんの状態がすぐに判断できるようになります。

(紙面の都合で抄録はこれで終わります。テープ起こし:渡辺信樹・新宿社協ボランティア)

勉強会講演記録CDの2枚目が完成しました。
フレンズ編集室では講師の先生方の講演記録を生の声で聞いていただこうと、CD制作を行っていきます。
まず第1弾として、9月勉強会で講演していだいた曽根晴雄さんです。詳細

タイトル『ちょっと私の話を聞いてください』  
 =聞けば見えてくる・精神分裂病当事者が語る患者の本音=

 家族は患者本人の気持ちを知っているようで理解できていません。二十数年間この病気と戦って来た曽根さんが、自らの体験をもとに訴える精神病者の苦悩、怒り、病気のこと、希望、それはすべての精神の病いに侵された人たちの声を代弁しています。
 また、当事者仲間の先輩として語る内容は、回復しつつある皆さんのお子さんが聞いても大いに励まされます。
 そして誰よりも聞いてもらいたいのは、分裂病を全く知らない人たちです。”もしあなたのお子さんが病気になったら”という目的の他に、各地で取りざたされる障害者の事件の度に生まれる誤解や偏見を防ぐためにです。一般の方に呼びかけてください。

第2弾は
「心の病を克服 そして ホームヘルプ事業へ」 
大石洋一さんです。詳細

収録分数;61分 CDラジカセ、パソコン、カーステレオ等で聞けます。
価格;各¥1,200(送料共、2枚同時申込の場合2,270円)
   申し込みはフレンズ事務局へ E-mailでお申し込みください。frenz@big.or.jp
発売:平成14年1月
企画・制作 新宿フレンズ編集室
(新宿家族会創立30周年記念事業)

編集後記

 きのうは冷房、きょうは暖房。そんな気候のいたずらが続くきょうこの頃である。言葉いえば「一進一退」ともいえよう。無理にこじつけた感もあるが、このたびの「心神喪失者医療観察法案」はこれまでようやく進んできた精神保健福祉が明らかに後退していると思う。

 5月連休最後の日、「予防拘禁・不定期拘禁法反対5・6集会」に参加した。そこでハンセン病裁判原告団の森元美代治さんの講演を聞きながら思った。「新法案」とハンセン病者隔離政策との酷似。違いはハンセン・・・が数十年前に施行され、その過ちが昨年小泉首相をして国が反省したこと。そして「心神喪失者医療観察法案」はこれから施行されようとしている点だ。時代が逆戻りしているといえる新法案。

 要するにこの法案はハンセン病者隔離政策同様、強者が弱者を駆逐する原理である。この法案を推進している団体員や政党人で、精神障害者の苦しみ、辛さを理解できている人が何人いるだろうか。

 しかも恐ろしいことに、法案を推進している団体には精神医療関係団体もあるという。まだまだ日本の精神医療のレベルの低さを感じる。

 一方、うれしい変化もある。ある当事者から聞いた話。床屋に行くと必ず『お仕事は?』と聞かれるので、『僕は精神障害者で何もやっていない』と答えるという。すると、若い理容師さんが『あ、そう。じゃあ、大変ね。早く治るといいわね』と言ってくれるそうだ。

 時代は変わってきている。新法案推進派の医師たちは若い理容師さんの心を学んでもらいたいものである。