うつの当事者として -ピア仲間による心の癒し-

8月家族会勉強会 講師  ぴあかん主宰者 加藤道広さん

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【はじめに】

 今日は宇都宮からやってきました。新宿家族会のTさんに紹介していただいて、皆さんにお会いできるのをとても楽しみにしていました。私は51歳になります。ですから、この50年間のことをわずか1時間か2時間ではとても語れません。ですから、病気の始めから今までのこと、そんなことを中心に話せれば私も気分的に楽になります。


【ぴあかんとは】

 「ぴあかん」という言葉だけはおぼえていってください。これはうつ病友の会の一会員である私が企画・運営している精神障害者本人の自助グループです。経済的自立や心理的自立を目的に対人関係改善ワークを通して実現させようとしています。


【うつ病と感情】

 いろいろある自助グループの中でうつ病友の会と巡り会いました。それでもうつ病友の会の活動だけでは、急に落ち込むこともあったりします。そうなるとこういう場にも出られません。人間の感情は複雑です。感情は喜怒哀楽だけではないですよね。悲しみの中に怒りがあったりします。うつに見えていても心の中に暴力的なものを持っていたり、寝込むことで愛情を得ようとしたり、いろいろな感情の渦や波があるわけです。ですから言葉ではこの病気は一般化することができません。言葉ではわからない部分があります。


【うつ病友の会との出会い】

 最近、病院のデイケアがいいということを皆さんはお聞きになったことがあるかもしれません。私も行っていました。最初はうつ状態で週3回デイケアに通いました。1、2ヶ月たって躁状態に変わってしまったんです。やっかいな患者ということで、すったもんだがあって、年金を受給するようになったわけですが、その間にうつ病友の会と知り合う機会を得ました。


【ハートピアきつれ川】

 せっかく栃木県から来ましたので、施設の紹介をしたいと思います。栃木県には全家連の施設であるハートピアきつれ川がありまして、とてもいいところです。一般の方も泊れる宿泊施設で、行ったことある方もおられると思います。そこで働いている人は、働く意欲のある障害者でそこに住み込んで職業訓練をします。

【逆効果的コミュニケーション】

 ハートピアきつれ川では色々な勉強会も開催されるということで私も参加しています。中でも前田ケイ先生の勉強会はとても参考になりました。「傾聴から始まるコミュニケーション講座」というワークショップだったのですが、わかり易くてためになるものでした。特に「逆効果コミュニケーション」というお話は実践的だと思うのでご紹介します。

1.話の途中からすぐ助言する。

2.言葉尻を捕らえ、自分の気持ちを相手にぶつける。

3.権威的で取り調べ口調で話す。

4.批判、非難だけで終わる。

5.相手の人格を損ねるような言い方をする。

6.一方的に自分の価値観を押し付ける。

7.相手の話のテンポを無視する。

8.機械的にオウム返しをする。

9.ただ聞いているだけで自分の気持ちや考えをいわない。

10.相手の話をすぐとって自分の話題に変えてしまう。(ハイジャック)

11.裏づけのない保証をする。

12.沈黙を尊重しない。

<休憩>

司会: 今日はいつものように講師の先生から一方的にお話をいただくのではなく、集まっている会員の皆さんも参加して、後半の時間を使っていきたいと思います。

【沈黙について自由に語る経験】

 「ぴあかん」はせいぜい集まっても10人なんです。5、6人でしゃべるのが一番まとまりがいいと感じています。今日のように大勢はあまり経験がありませんが。後半は「沈黙」について話しましょう。ここにいる皆さんが一人ずつ沈黙をテーマに一分ほど話すというのはどうでしょうか。先ず私の沈黙についての考えを述べさせていただきます。ある映画で、カウンセリング場面があったんですが、クライエントとセラピストが沈黙のまま一時間過ごすんです。それを何度か繰返して、それでも最後には変化があるということだったんですが。それを見て、言葉でなくても、非言語的コミュニケーションでもいいのかなと思いました。では、今度は皆さんがやってみてください。


<参加者が沈黙について答える>

加藤: ありがとうございました。皆さんお話が上手いですね。真剣に本音が言えていいグループだと思いました。このままズーッと皆さんとこうした対話していたくなりました。でも、ここの会場は4時半?5時?までですか?

司会: 会場は6時までOKです。

会場: 爆笑

加藤: あ、そうですか(笑い)では、その辺は気楽に考えて。

 きょうは私はこんな背広を着てきました。それはお袋が「新宿家族会だったら精神科医の先生と同じように服装も合わせて」ということで。(爆笑)そんなことで、まあ、私も色々なサークルと関わってきました。

(本文中、敬称は略させていただきました。)

平成17年4月からの新宿家族会ホームページ「勉強会」の表示形式について

 新宿家族会では4月から「勉強会」ホームページの表示について、概略掲載とすることになりました。そして、「フレンズ」(新宿家族会会報紙)ではいままで同様、あるいはより内容を充実させて発行することにしました。これまで同様に勉強会抄録をお読みくださる方は、賛助会員になっていただけますと「フレンズ」紙面版が送られますので、そちらでお読みできます。
どうぞ、この機会に是非賛助会員になっていただけますよう、お願い申し上げます。

賛助会員になる方法

新宿家族会へのお誘い 
 新宿家族会では毎月第2土曜日、12時半から新宿区立障害者福祉センターに集まって、お互いの情報交換や、外部からの情報交換を行い、2時からは勉強会で講師の先生をお招きして家族が精神障害の医学的知識や社会福祉制度を学び、患者さんの将来に向けて学習しています。
入会方法 

編集後記

 暑い日が続いている。しかし、天候に左右される仕事をしている者として見ると、今年の夏の空は晴れても、なんとなくすっきりしない。社会のどんよりよどんだ空気そのもののようだ。

 電車の中吊りで五木寛之著「不安の力」(集英社)という本の広告を見つけ、早速買い求めた。値段も476円と買い求めやすい。

 不安についてはかねてより興味があった。以前、当会講師・水野先生に医学的立場から説明を伺ったことがあるが、ここで本の裏表紙に書かれている紹介文を引用させていただく。

 「…今の時代不安を抱かない人はいない。しかし、不安を感じることこそ正常ではないかと著者は説く。不安を受け入れることで、不安は希望になり、人を支えていく大事な力にもなる。…」

 我々家族が抱える当事者の多くが、その原因か結果かわからぬ「不安」を抱えて悩んでいる。勿論、家族である我々も日常生活の中で絶えず不安に晒されている。特に当事者の行く末はどうなるのか。治るのか。さらに悪化するのか、と。五木氏はこうした不安も希望になり、人を支えていく力になると言うのだろうか。

 「考え方」ということがあるが、当事者を抱える我々は確かに一般以上に苦労をしている。不安も人一倍持っている。しかし、この苦労・不安は果たして無駄なこと、余計なことだろうか。人類であるゆえに持つ心の病気。それをいかに克服するか。我々は学習し、考え、工夫する。それこそ五木氏の言う希望になり、大事な力になっているとはいえないか。そう考えれば不安は生きる力ではないかと思う。