「薬を変えたときに注意すること、そして新薬について」

4月家族会勉強会 講師 東邦大学医学部精神神経医学講座 教授 水野雅文先生
  (水野先生は4月より勤務が変りました)

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 本日は、薬を変えるときに注意することについてお話して、それから新薬についても触れたいと思います。

【新薬だからといって…】

マッチングのいい、相性のいい薬に変える、それが新しい薬への正しいというか、適切な期待の持ち方ではないかと思っております。ですから新しいお薬がすごく合う方ももちろんいらっしゃるでしょうし、今、飲んでいらっしゃるお薬で、比較的、薬ができることに関してはかなり上手くいっていて、なにも変えるというある種の冒険をおかさなくてもいい方も実はたくさんいらっしゃるので、新しいお薬が出たとなると皆さんの期待が高まるのは良く分かるんですけれども、あわてて変えるだけが手段ではないというのもよく確認しておきたいと思います。


【どんな場合に新薬に変える?】

 では、どういう方がお薬を変えたらいいかというと、やはり一つは今飲んでいらっしゃるお薬で副作用が出ていらっしゃる方ですね。もともとのお薬が、皆さんご存知のように、ドーパミン系に対して働きかけるお薬ですから、ドーパミンがブロックされすぎることによって起こってくる色々な副作用がございます。

 錐体外路症状といわれているものですとか、遅発性ジスキネジアといわれているものですとか、それからプロラクチンといって、乳汁分泌ホルモンといいますけれども、これが上がることによって女性の方ですとお乳が張ったり、あるいは生理が不規則になるというようなことがございますので、そういったことで特に若い患者さんの場合にお薬がいやだというような方、それから非定型抗精神病薬の中で今問題になっているのが、肥満の問題ですね。どんどん太ってしまって困っている、そういったことで実際に困っている問題が、お薬が効いているというメリットよりも明らかに大きいという場合には新しいお薬に切り替えるということがひとつ理想的には期待されるところだろうと思います。


【新薬への期待】

 それから新しいお薬についてはですね、その期待をまとめると大体5つくらいになるのではないかと思います。ひとつは、リスペリドンよりも以前の定型抗精神病薬と呼ばれているものと比べてということで。

日本には現在、非定型抗精神病薬は4剤ございますけれども、今度5剤目が出るわけですね。それらのお薬に共通して言えることはいわゆる陽性症状、興奮する、幻覚妄想状態が強くなるとか、そういった目に付く症状、これに対してだけではなくて、陰性症状といわれている、意欲がないとか集中力が乏しくなる、元気が出ない、あるいは時に抑うつ的になる、そういったものに対しても効果があるという風に言われております。それがひとつの期待ですね。


【新薬と主治医の先生】

 そういう今4、5つのものを挙げましたけれども、効果が期待できるわけでございますので、これらに当てはまる方、そういった方は新しいお薬が出ていますから、主治医の先生からお勧めがあればお使いになってもいいのかなと思います。皆さんの中には今日のこういう話などを通じて、新しい情報を得られてその新しいお薬を試してみたいな、うちの子は、例えば私が今お話ししました項目に非常に合っているし、今安定しているからこの機会に新しい薬を試してみたいと思われるかもしれません。必ずしも、発売になっていたとしても、主治医の先生が、先ほどから申し上げているいろんな理由が背景にあるわけですけど、すぐにそれじゃあ新しい薬出ましたからおうちの人と相談してよかったら今度使ってみましょう、と主治医の方から言ってくれるとは限りませんよね。


【おわりに】

 統合失調症をはじめとする精神障害の治療というのは、何も薬物療法だけが全てではございませんで、心理社会的な治療が実は非常に重要なわけです。お薬を飲んで脳の機能は回復するかもしれませんが、例えば20年治療をしていらっしゃる方が、タイムマシンのように一人だけ20年前のように戻るわけではございません。本人も変わりますし、周りもちょうど20年くらい歳を取っている。これは事実ですから。その中でどういう風にご本人が生き生きとご自分らしく充実した生活を送れるか、そのためにはお薬だけでは支えきれない、補いきれないものがたくさんあるわけでして、そういった部分とあわせてですね、その一環としての薬物治療という位置づけで考えていただくことが大事ではないかと思います。

平成17年4月からの新宿家族会ホームページ「勉強会」の表示形式について

 新宿家族会では4月から「勉強会」ホームページの表示について、概略掲載とすることになりました。そして、「フレンズ」(新宿家族会会報紙)ではいままで同様、あるいはより内容を充実させて発行することにしました。これまで同様に勉強会抄録をお読みくださる方は、賛助会員になっていただけますと「フレンズ」紙面版が送られますので、そちらでお読みできます。
どうぞ、この機会に是非賛助会員になっていただけますよう、お願い申し上げます。

賛助会員になる方法

新宿家族会へのお誘い 
 新宿家族会では毎月第2土曜日、12時半から新宿区立障害者福祉センターに集まって、お互いの情報交換や、外部からの情報交換を行い、2時からは勉強会で講師の先生をお招きして家族が精神障害の医学的知識や社会福祉制度を学び、患者さんの将来に向けて学習しています。
入会方法 

編集後記

 個人的には慌しい年度末、そして年度始めの中にいる。そんな中で「新宿精神保健福祉マップ」は完成した。

 国は精神障害者のケアーにおいて、施設から地域へ、という方針を打ち出している。しかし、そのことの具体的な方策は見えて来ない。街にいかなる福祉施設があるのか、どんなサービスを行っているのか、そんなガイドすら伝わって来ない。ならば、我々家族がやれば、より判りやすいものが作れるのではないか。そんな発想からこのプロジェクトG(ガイド)はスタートした。

 昨年8月総会で発表。10月一般会員含め取材開始。12月最後の取材。年明け広告募集。3社の協力が得られた。個人の編集ソフトで編集開始。。3月、ゲラ刷り出る。と、トントン拍子に見えるが、家族であるスタッフは全員別な本業をもっている。だが、できた。そこは新宿フレンズのフォーメーションの良さであろう。出版社勤務者、カメラマン、校正マン、広告会社員、コンピュータ会社員などなど、それぞれのエキスパートがいる。

 つまり、何が言いたいか。それは家族会とはそうした組織体でもあるということも認識する必要があるのではないか。そうした家族が当事者の進む道を探すのに、こうした出版の方法でまず親(家族)が理解したという行動、活動は評価できるのではないか。