自主講座 「精神科医に期待するもの」

4月 新宿フレンズ講演会 新宿フレンズ講演会参加者の意見から

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(今号はページ数が少ないため完全表記としました)

司会:本日は予定していた水野先生が急用で来られなくなりました。そこで、今回は自主講座ということで、日ごろから当会メーリングリスト等に質問や意見として多く出ている精神医療、特に「精神科医に期待するもの」と題して、皆さんと話合いたいと思います。では、Aさんからお願いします。

Aさん:去年の暮れに息子を再入院させました。エビリファイが夜に多剤になってテンションが上がってしまいました。危ないのでドクターも本人を説得してくれて入院となりました。今まさに主治医を変えようとしているところです。本人も不信感を持っていて、なにか聞いてもまともに答えてくれないところがあって、だからいずれは副院長先生に診てもらいたいと計画を立てています。周りの方も協力してくださるのですんなりいくといいと思います。だからといって悪いことばかりだったわけではなくて、テンションが上がったことのメリットもありました。そのひとつには本人にとって入院が勉強になったとか、落ち込むと持ち上げるのが大変だけど気分が高揚して入院にはなったけれども、ひどく落ち込んではいないので行動しやすいし家族も対応しやすかった。でも、息子は今のドクターに不信感を持ってしまったので、変えたほうがいいかなと思っています。

Bさん:今かかっているドクターは90点くらいでしょうか。以前、行っていた都内某病院では11年間うつ病の治療をしていましたが、少しは良くなったものの大量に薬を出されて完治しないんですね。おかしいと思って質問をしても言いくるめられる感じで、不信感を持ったので医者を変えました。変えたらやぶだったみたいで(爆笑)、そこもやめました。インターネットで見つけたカウンセリングも投薬もしてくれるところを見つけていきましたら、今まで3割負担で1600円だった薬代が630円になりました。自分で勉強しないでひたすら医者の言うことを聞いているだけでは難しいのだなと思いました。この苦しかった11年間は何だったのだろうと思います。

Cさん:私の弟の場合、最初にかかった病院に対する不信感が大きかったので変えました。知人の弟さんが精神科医なので個人的にセカンドオピニオンを求めに行って、今度のドクターは大丈夫そうということを言っていただいたりしました。医療に不信を持った場合には他の方の意見を聞くのもいいと思います。今は薬をミリ単位で調整してくださるので、副作用の少ない状況で普通に生活できるようになりました。今はジプレキサを飲んでいて太りやすいので意識して歩くようにしたりと、副作用を理解したうえで服用するということができるようになりました。もともと?うつ?といわれて治療していたのですが、診断が違っていたようです。でもそんなこと家族には分かりません。医者がそうだといったら信じるしかないのです。だから、精神科の内情や薬の副作用について理解したい、共有したいという思いがあります。精神科にかかる前に、和田秀樹精神科医の『精神科医は信用できるか』(祥伝社 777円)を読んでおけばよかったと思っています。

Dさん:今のところは不満はありません。薬も出しすぎるということもないですし、必要なら増やすことはありましたが、必要であると説明を受けて納得した上でです。効果がなければ薬を切り替えました。今は徐々に減らしていっている状況です。入院していた頃よりはだいぶ落ち着いています。欲を言えば、忙しいのは分かりますが、もう少しゆっくり話を聞いてくれるといいなと思います。聞きたいことは聞ける状況ですが。

Eさん:うちは本人が意識して薬をのむところまではいっていなくて、でも服用すると少しは調子がいいということには気づいていると思います。「薬飲もうね」というくらいで、本人に納得するように医者が話を進めてくれないのです。本人はその医者を信頼していないように見えます。だから勝手に薬をやめてしまって悪化してしまったりということもありました。

司会:主治医に対する要求は親としてはっきり言うべきでしょうね。

Fさん:病院に10年くらい通っていますが、薬を出しすぎることもないし、いいドクターです。でもあまりはっきり説明してくれません。とはいえ安定しているので不自由もありません。元気なときもあるし、だるくなることもあるし、副作用なのかどうか良くわからないときがあります。

Gさん:うちの息子は私にはあまり相談しません。むしろドクターを信頼しています。ところがドクターから「誤診でした」と電話がありました。精神病というよりも、パーソナリティの問題が強いと。でも、息子はドクターを信用しているんです。薬の調節も自分でできますし。だから親は口出ししないで見守っています。そもそも息子が私から自立することが課題ですから。

Hさん:亡くなった主人が大変な身体の病気でした。その看病で私が大変だったときに子どもが調子を崩しました。私がかかっていた当時の医者に子どもが大変で困っていると言ったところ、K大学病院のドクターを紹介してくださいました。満足しています。私は人の病気のお世話をするヘルパーの立場から、やはり納得しないと治療は受けさせたくなかったんです。何でもドクターに話しますし、ドクターが何百人も患者さんを抱えているのも分かっていながら、「でもうちの子も忘れないで!」と伝えていました。ところが、K大病院は入院ができませんから、その傘下の病院を紹介してもらったところ、若くて明るい女医さんと出会いました。肩書きは先生でも私は人間だと思っているので、ざっくばらんにお話しします。のんでいる薬も病状もこれまで全部記録してあります。大変なことです。すると薬を決めるのも大変なことだなというのが分かりました。ドクターともざっくばらんに話をして、例えば、日に三度飲むと眠くて仕方がないといえば、では一日一回寝る前にしましょうとか。もう5年目くらいです。ドクターは多忙です。こちらから要求しないと、忘れられてしまいます。薬に関しても飲んだ状態がどうかというのはこちらから伝えるべきです。

Iさん:息子の発症は大学のときです。入院は医療保護入院でとても大変な思いをしました。息子がK大に縁があったので、そこのドクターにお世話になっています。息子は性格的にドクターが女性でないとだめで、男性を嫌うんです。たまたま女性の先生でよかったのですが、一人の意見では心配で都内の別の病院にセカンドオピニオンをお願いしました。本人は嫌がりましたが。最近、お世話になっているその女医さんともマンネリ化してきまして、支援センターにいってみたらなどと言われるのですが、そんなことは親でも言えることで、どうしたらいけるのかというところを説明してもらわないと物足りないです。本人はこもりたいわけではないけれど、支援センターは行きたくない。英語やプログラミングの学校は退院後すぐ行きだして遅刻もなく頑張っています。そうやって身につけたことを仕事として活かせない。だからといってできることからやるというのもイヤなんです。そういう点を手伝ってもらえたらと思います。

Jさん:うちの息子は薬を月に一度もらいにいっています。退院直後は一緒に通院していました。そのときは1分かそこらの診察でほとんど話す時間はありませんでした。今はエビリファイとハルシオンを飲んでいますが、息子が時々気分が悪かったり、眠れなかったりすると、ドクターとしては睡眠薬を増やすことになりますよね。それでいいのか心配なんですが。2年近くその病院に通って、特に悪いところもないですから、しばらく続けようかと思っています。

Kさん:私の妹が病気です。ドクターについては私も良く分からなかったので、母を通して兄が話しをしたがっていると伝えてもらったら30分時間をとってくれました。誠意を感じたけれど、統合失調症という病気が何なのかは結局よくわからなかった。でも時間をそんなにとってくださるとは思わなかったのでその点では信頼できるかなと思いました。その後、調子が悪かったときに針を飲み込んでしまったことがあって、夜中だったので主治医にかかることができなかったし、私も仕事でいなかったので、弟が対応して病院を探して、6時間後に都立府中病院に入院をすることになりました。退院後、もともとかかっていたドクターがいいのか、それとも先日入院した病院のほうがいいのか迷いました。妹は府中のほうがいいといっていますが、結論としては府中は遠いので何かあったときにすぐ行かれないしということで、今までどおりの病院に行くことにしたということです。本人が良いと言っている方を指針とするのがいいんでしょうけれども、本人は自分では動けないので。私の気持ちとしては府中のほうへタクシー使ってでも通ったほうがいいのではないかなと思います。というのも、妹は府中の病院にいい印象を持っているみたいだったので。ドクターについては言及していませんが、それも含めての印象でしょう。

Lさん:うちの子どもは発病から10年くらい経っていて、今はたまたま入院しています。薬は10種類くらい毎日飲んで、通院のときは毎週、カウンセリングを30分~1時間受けていて、主治医とも30分くらい話しをしています。僕は日中仕事なので妻が付き添います。本人は薬のことを良く調べて知っているので、ドクターと相談して変えたり、調節しているようです。薬は一度にたくさん本人に渡しておくと危険もあるので、家族が管理しています。以前行っていた病院は、本人が家族には言わないで自分で調べていっていたのですが、そのときの病院と比べると今のほうがいいといっています。ドクターについては、妻は大体はいいけれど物足りないといっています。ドクターは良くなっているところをみるけれど、実際はそう良くもなっていないので、若干意見が違うこともあります。けれど、親身になってやってくれるのでいいんじゃないかなと。

Mさん:妹が統合失調症で、大変な時期もありましたが、今は回復期で薬も最小限です。主治医の先生も、私は一度しかお会いしていませんが、ここまで回復したので、一生懸命やってくださったのだと思います。ただ、問題だと思っているのは、本人の病識がないことで、主治医の先生は病名を告げないほうがいいという主義ですが、家族としては本人の生活の質を上げるのに病識は必要ではないかと思っています。

Nさん:娘が大学の頃に落ち着かなくて自分で病院にかかり、長く続いていましたが、違う先生に変えたようです。その後どんどんドクターを変えるので、現在薬をのんでいないんですけれど、不安になったり攻撃的になったりして、親のほうが困っています。半分引きこもって夜だけ出て行って、元気はいいんですが。本人がドクターを信頼できない状態になっています。娘にいろんな第三者がかかわってくれたらいいなと思っています。

Oさん:息子は今の病院に10年ほど通っていて、ドクターは3人目ですが、息子は信頼しています。でも、親が行っていろいろ言うといやな顔をされるんですね。今は薬の副作用があって、調節が難しいのですが、ドクターは量としては多くないといっています。その辺は私も良く分からないので、セカンドオピニオンがほしいとは思っています。でも本人が納得しないことにはこちらも勝手に動けないので困っています。でもだいぶ良くなってはいるのでいいかなと思っています。

Pさん:子どもがはじめて入院した病院で若い女医さんに出会いました。良かったと思うのが、何でもよく話を聞いてくださることです。最初はルーランを飲んでいて効果があまりなかったので、ドクターに、家族会でエビリファイの話を聞いてきましたと話したら、変えてみましょうかといってくださいました。いいなと思う反面心配でもありました。だけど若いドクターだとあまり体面にこだわらないのかなとも思いました。また、紹介状もさっと書いてくださったり、そういう意味では対応の良い先生でした。ただ、来月担当が替わってしまうので息子は次はどんな先生かと心配しています。

Qさん:一番最初強迫症状が出たときに、某病院に連れて行きました。デパスを出してもらいましたが副作用があったりして、どんどん薬が増えて、性格が変わったようになりました。そのためにやってしまった失敗があって、そのことで高校を中退して、大検受けて、社会に出ましたが、そこでまた強迫的な部分が出てしまいました。また服薬して一時期よくなったのですが、そのうち

を減らせません。この間も、主治医はずっと同じで、デイケアも病院のを使っていて、主治医には黙って薬を減らしてこういう状態になって、主治医に薬を飲んでいますかと聞かれると「はい」と答えています。本人は良くなっているし、薬もその先生は変える方針ではないので。

司会:私も薬は怖いなと思ったことがあります。息子が薬やめたときがありました。そしたら良くなった、ように見えました。意識がはっきりして。精神疾患はこんなに簡単に治るんだと思いました。でもそれは今にして思えば副作用がなくなったということだったと思います。それから1~2週間後に息子は症状による事件を起こしてしまったんです。このように、副作用が減ってよくなった感じがするだけのこともあるので、Qさんも良く見極めたほうがいいと思います。薬を減らすのはいいという感じはしますが、必ずしも良い結果を生むわけではないこともある訳です。

会場からの意見:主治医が処方した薬を、別の医師の指導で減らして飲んで、主治医にはきちんと飲んでいると伝えるのは危険ではないかと思います。万が一、お子さんに何か事件があったときに、それでは主治医は責任を取ってもらうことができません。つまり、ご家族に責任がいくということです。だったら、薬を減らすという方針の医者に主治医を変えるほうがいいと思います。

(マイクの関係で聞き取りにくい部分は割愛させていただきました)

平成17年4月からの新宿家族会ホームページ「勉強会」の表示形式について

 新宿家族会では4月から「勉強会」ホームページの表示について、概略掲載とすることになりました。そして、「フレンズ」(新宿家族会会報紙)ではいままで同様、あるいはより内容を充実させて発行することにしました。これまで同様に勉強会抄録をお読みくださる方は、賛助会員になっていただけますと「フレンズ」紙面版が送られますので、そちらでお読みできます。
どうぞ、この機会に是非賛助会員になっていただけますよう、お願い申し上げます。

賛助会員になる方法

新宿家族会へのお誘い 
 新宿家族会では毎月第2土曜日、12時半から新宿区立障害者福祉センターに集まって、お互いの情報交換や、外部からの情報交換を行い、2時からは勉強会で講師の先生をお招きして家族が精神障害の医学的知識や社会福祉制度を学び、患者さんの将来に向けて学習しています。
入会方法 

編集後記

 連休あたりから急に暖かく、夏を思わせる気候になった。生命の活動期を感じさせる。

 事務局へよく来る質問として「いい病院を教えてくれ」がある。私の十五年間、数か所の病院の体験として、悪い病院はなかった。また、二度とお世話になりたくない医師が一人いたが、それ以外の医師は今後また折があったらお会いしたい人たちであった。

 毎回同じことを言うようだが、精神科の治療とは人間治療であると言えまいか。患者の人生やものの考え方まで影響する治療である。精神科の「治療がうまい医師」、聴診器もメスも使わない治療技術の巧みさ・・・それは何だろう。単に薬の目利きだけであろうか。

 今回、参加者から現在治療を受けている医師の判断をうかがった。一人ひとり皆異なる受け止め方をしている。そして、医師との対応でも異なっている。それは一般社会の交流の態度と変わらないもののような気がする。  

 医師との交流に魚心に水心を感じさせる人。報恩感謝を言う人。あるいは対決色を顕わにする人。さまざまであった。

 講演録に書かれている声は一部であるが、押し並べて言えることは人と人との交流であったこと。治療がうまい・・・は、その医師の人としての品格なり人間性が問われるものであろうと思う。しかし、精神医療の暗い歴史から思えば、今我々が関係している精神科の治療は隔世の感がある。新薬の開発。情報の多さ。お互いの交流のチャンス。そして今回のようなテーマで話し合いができること。こうしたことから少しでも日本の精神医療に小さな風穴が開けられればと思う。