恒例・拡大家族交流会 

新宿区後援・8月新宿フレンズ講演会
新宿フレンズ8月定例会参加者全員

今月は全文紹介しています

いつもは1~2時の家族ミーティングと、講演会の後の5時~6時の懇親会が、家族の話し合う時間ですが、今日は年に 1 度の拡大家族交流会です。 

今年は5つのグループに分かれて新宿フレンズ役員がリーダーとなって司会を務め、また当事者のグループは会員の方にリードして頂いて、それぞれ話し合いました。このまとめは交流会の後半に行われた報告会をもとにしていますが、前半部分の話合いや、後からのアドバイスも含めています。

<グループ1> 医療について

リーダー1
(母):こちらは医療・薬について話そうということでしたが、病院との関係や服薬拒否などいろいろな話が出て、強迫神経症の辛いお話も伺いました。

家族A(母):30代前半の息子は、10代後半に発病しました。夏になると、かなり具合がひどくなります。息子だけがエアコンをかけていますが、寝られない。頓服を飲んでも寝られない。それが続くと被害妄想が強くなる。ともすると我々も身の危険を感ずることが多々ありました。薬のことなど皆さんの話を参考にしたいと思います。

家族B(父):息子が高校生のときに「頭が痛い」ということで精神科に通うようになって、高校は何とか卒業できました。その後、眠気が強くて1日中寝ているときがあって、「薬を減らしたい」という話を医者にしたら、薬を全部無しにされて、爆発したように陽性症状が出ました。それから5年間具合が悪く、今は大分落ち着いてきました。しかし今度は逆に、眠れなくなって困っているところです。その辺りのことは「眠気が強い」というブログに書き綴っています。

家族C(母):30代初めの息子ですが、今年の春に「もうだめだ、耐えられないから助けてくれ」と言い出して、タクシーを呼んで医療保護入院をさせました。「嘘だろう、どこに連れて行く気か」と言うのを、医師が説得してくれて治療中です。

家族C(父):10代で陰湿ないじめにあって引きこもりになり、10年ほど精神科クリニックに通院して、うつ病ということで治療していました。本人は「独立したい」といろんな面接を受けて、週2日くらいはアルバイトをしていました。
 病院の診断では強迫神経症のある妄想型の統合失調症ですが、4ヵ月たって病院は「いろんな薬を試したが効きません。あとはECT(電気けいれん療法)ぐらいしかないですね」と言います。2つ目は「デイルームに出て皆さんと慣れる形で治療していきましょう」という話でしたが、今の診断としては「引きこもりでも自傷行為さえなければ、それでいいですよね」という感じで、病院にもう少し考えてほしいなと、悩んでおります。

家族B:ECTは、劇的に効果があります。しかしやらずに薬で良くなればいいですね。

リーダー1:昔はECTが懲罰的に使われていたのでイメージの悪さがありますが、最近は麻酔をかけて体にけいれんを起こさない方法が一般的だそうです。重症のうつ病、ことに自殺しそうな時や、統合失調症で身体が固くなって食事も食べられない緊張型の混迷状態や、やはりうつが重なって自殺の危険が高いとき、難治性の場合、あと、お薬の副作用が酷いときも、ECTで状態を良くして、少量のお薬で治療できるようにすると聞きます。問題は、部分的な物忘れが起きるそうです。
 お薬は、クロザピンは副作用があるので指定病院に入院して血液検査をしながらの治療になりますが、60%くらいの人に効くと医師は言っています。他に注射や崩壊錠など剤型が違うと効果も微妙に違うとか、新薬の開発もありますから、体に合うものが見つかるといいですね。
 でも何より、デイケアで人間関係を良くしていって、退院後もいろんな社会資源を使って、社会に出て行けるようになったらいいと思います。希望を失わないで下さいね。

家族D(妻):初めて参加したときは、それまで誰にも相談することが出来ず、こんな近くにこんなすばらしい家族会があるのかという思いで、今日は2回目です。病気なのは夫で、統合失調症を20年ほど患っています。私が働いている間1人になるため、夫の実家に預けようかと思いましたが、急に連れに来たので大騒ぎになってしまい、今では私に任せたから…ということになっています。
 薬が殆ど効かない状態で、週1回は調子が悪くなります。薬を増やすと目が上を向いたり排尿困難になったり、副作用がひどくてこれ以上増やせません。どんどん引きこもり状態になって、家から一歩も出られなくなっています。今日は、家から出すにはどうしたらいいかもいろいろ相談したいと思って来ました。

リーダー1:引きこもりの方が急に、週に何日かは通うデイケアや就労継続の作業所では「行かなくてはならない」という負担感が起きるかもしれませんね。登録制だけれど通所には自由度のある地域生活支援センターとか、最近はアウトリーチをするクリニックなどもあって訪問支援も増えてきたので、そういうところから初めてもいいかもしれません。

家族B:うちの場合、地域生活支援センターを中心に、センター職員、作業所職員、保健センターの保健師さん、親というチームが出来ました。

家族E(母):息子が10代後半に発病して治療し、16年間順調に来ました。ところが薬の副作用の遅発性ジストニアで首が曲がってしまい、薬を止めないと治らないため、少量に減薬しました。それで再発して入院になり、退院しましたが病識も無くして、勝手に薬を全部切ってしまいました。いつ再発するか分からない状態で、薬のことやジストニアを直すにはどうしたらいいか、どういう病院があるかをお聞きしたくて参加しました。

リーダー1:ジストニアによる斜頸の治療には、過去にボトックス治療をお勧めして、効果のあった方がいます。ただ、神経や筋肉の弛緩に関係する注射なので、病院も選び、熟練した医師にかかることが大事だと思います。

家族F(母):息子が高1の頃、「捨てたゴミを誰かが食べちゃって死んだらどうしよう」とか、昔々のことを自分の罪だと思ってしまう。「ルールを守らなかったから死ななくちゃ」とか加害者意識が強くなりました。ネットで調べて強迫性障害かなと思いましたが、小学生の頃を思い出しては辛くなっていたようです。大学生になって、通学途中にお腹が痛くなりトイレに駆け込んでしまうことが不安になり、自転車なら通えるかなと下宿してみましたが、「急に吐き気が出た、もし授業中に嘔吐したら迷惑だ」というふうに、誰にも迷惑をかけていないのに自分を不安な状況に追い込んでしまう。心療内科へ行って2ヵ月ほど服薬しましたが、良くならないので止めてしまいました。パニックやリストカットもあり「苦しくていられない」と言うので入院させたいのですが、本人は「入院したくない」と言い、病院は「説得して連れて来て下さい」と言い、どうしていいか分かりません。

リーダー1:家族だけで説得するのは無理なことが多いので、どなたか、ご本人が信頼している第三者にお願いできるといいのですが…。

家族G(母):1人暮らしの娘が2年くらい前から家から出られなくなって、その後、就労支援で始めたアルバイトも通いきれず、お薬が増えてよく効いて、治ったと思って止めてしまい、3ヵ月ぐらいしてこの春に再発しました。その時は親が行くとドアにチェーンを掛けて拒み、駅前の交番に駆け込んで入院になりました。今はクリニックに通院していますが、1人暮らしが不安です。

リーダー1:ご家族以外に、娘さんがお暮しの地域の社会資源を使って、ときどき訪ねて下さる訪問支援をお願いできればいいかもしれません。
 皆さんといろいろ話し合いましたが、すぐに解決するグッドアイデアがあるわけでなく、その中で一生懸命考えて良かれと思っても、時には恨まれもしながら何とか対応していくしかない、辛い病気だと改めて思いました。それでも粘り強く治療を続けて、少しでも良い状態に持って行きたいですね。

<グループ2> 医療・病院・入院について

リーダー2(母):こちらのグループは、医療に繋げたいご家族のお話や、転院希望のご家族など、それぞれにお話していただきます。

家族H(父):34歳の息子ですが、情緒不安定というか、精神的疾患か、極度の自己中心なのか、極端な我が儘なのか分からないのです。手立てとして専門的治療を受けたいと思いますが、病院へ行く取っ掛かりがつかめない。親は地域の保健センターなどへ行っていますが、本人がその気にならないので止まってしまっています。親子のコミュニケーションが全く取れないので、何かつかめればと思って初めて参加しました。

リーダー2
:親子間ではとても難しい問題ですね。移送会社でお姉さんを医療に繋げたSさんが<グループ5>に参加されていますから、後ほどご紹介しますのでお聞きになるといいと思います。

家族I(娘):母が遠方の地方住まいで、今年の1月から入院しています。父も脳梗塞で倒れたので、私の家に呼んで一緒に住んでいます。そのため母親の傍に家族が誰もいなくなったので、病院側から転院したらどうかといわれています。こちらの病院が分かりません。また、移動させるのにどうすればいいのかを皆さんに教えていただきたいと思います。

リーダー2:お母さんの状態にもよりますが、長距離移動になるのでその辺も心配ですね。Hさん同様、 入院やその後のケアについてSさんにお聞きしてみてはどうでしょうか。
 小さいお子さんを抱え、お父さんのお世話 、更にお母さんの転院等、精神的肉体的にも大変な状況ですね。私は息子が病気を発症した後、「息長く支えるには、自分の心と体の健康を大事にしなくては」と、手を抜けるところは“いい加減”?にしながらやってきました。お身体を大事にしてください。

家族J(娘):母が統合失調症で、いま世田谷の病院に通院していますが、歩くことができなくなってきてタクシーで通っています。お金がかかるので、家の近くの東京武蔵野病院に転院しようと思っています。評判はどうか、知っている人がいたら教えていただきたいと思います。

リーダー3
(父):私の息子が入院から通院になって15年東京武蔵野に厄介になっておりました。2人の先生にお世話になっておりましたが、最初の先生の時、良くなったというので退院しましたが、退院した夜に暴れだし、再び入院になりました。この時から2人目の先生に変わりました。ある集会に出た時、うちも東京武蔵野です、お宅は何先生?と聞いて来た人がいました。私がX先生です、と答えると、その女性は、エーッ!あんな怖い先生?!というのです。息子に聞いてみると「いい先生だよ」というので、私は約10年間1度もX先生に会わずに息子1人で通院させました。要するに、いい先生、悪い先生というのは、相性というものがあるでしょうね。息子には相性が合っていたのでしょう。病院名で決めるというより、先生個人との相性で決めることと、ある程度こちらも先生に合わせる努力も必要であろうと思います。

<グループ3> 就労・作業所・デイケアについて

リーダー3(父):病気からの回復途上でデイケアや作業所に行くのは、社会参加への道であり、就労への過程であると同時に、リハビリでもあります。お話をお聞きしていくと、やはり人それぞれで、話があちこちに飛んでしまいました。
 ちょうど、先月の友利幸湖さんの講演に「安定した職業生活を送る個人の側の要件」というお話がありましたが、それはまず健康管理をしっかりやること、次に日常生活管理、次に対人技能、次に基本的労働習慣、つまり挨拶や報告・連絡・相談など、そして最後に職業適性、ここで就労となる。つまり退院したらどこで働かせようかとか、早く就労しなくては、といったことを考えてしまう親が多いことに対し、ご本人には回復の段階があるということで、それを参考にしました。このテーマを話し合うために役立ったと思います。

家族K(母):昨年大学生になった息子が、1週間で学校に行けないと言い出して、1年間精神科に通院しつつ引きこもりました。これから学校に出たらいいのか、就労支援をしたらいいのかを考えながらやっていきたいと思います。

家族L(母):20代後半の息子が2月から6月まで入院しました。デイケアにもなかなか通えずに、今やっと週1回午後のみ通っている状態です。息子にとってはデイケアも作業所も、今は「行ければいい」という状態です。

家族M(父):娘もデイケアに月1回か2回しか行っていません。どうしたらスムーズに行けるか、その動機付けのようなものが何かあるかと思って参加しましたら、皆さんも同じような悩みを持っておられるようですね。
 娘の場合は対人関係が根本的な問題で、本人は自己肯定感が持てない。そのために自閉的になって引きこもって、社会参加が積極的になされない。最終的目標は就労でしょうが、就労支援は選択肢の1つに過ぎないわけで、本人が社会の中で折り合いをつけながら自分なりに生活してゆく、そのためにはどのようなスキルを身につけていったらいいのか。その意味ではイエス・ノーだけでなく、すっとぼけるとか、罪にならないウソをつくこともあるとか、そういうスキルを覚えていかなければいけない。社会に少しずつ関わっていければ…と思います。

リーダー3:まず、日常生活管理をこなし得たら、次の対人技能、そして基本的労働習慣を身に着け、最後に就労となるでしょう。ご本人はそういった段階を踏んで行ったら、いつかは就労も夢ではなくなるでしょうね。

家族N(母):息子は大学を8年かかって卒業しています。本人は大学院に行きたい気持ちがある反面、仕事も情報系の学部を出ているので、プログラマーになりたいとか、電子ソフトを作る会社に行きたいとか、仕事もしてみたい、大学院も行きたいと二律背反みたいなことを言っています。親としては、大学院進学は援助できないとはっきり言っています。社会に出たくない気持ちと、就職したい気持ちがあるのでしょう。
 ただ、私は地方に住んでいるので、親元を離れたときに通院や服薬ができるかが心配。親の目の届くところで仕事に就いてほしいというのが本音です。息子は「地方はやりたい職種が少ない、東京に出たい」と言っています。もし自分はこうして就労した、大変な中でも現在仕事に従事しているという方がおられましたら、後ほどお話をお聞かせ願えればと思います。

リーダー3:私の息子も同じようなことを言っていた頃があります。夢をもっているのですよね。でも、その夢は大事なことで、進学も就労も両方の夢を大事にしてあげるのが親として大切ではないでしょうか。但し、「進学も就労も極力自分の力でやりなさい」と。「お母さんはどちらも賛成だが、必要なお金はあなたが工面するのよ。私にはないのだからね」と付け加えることも必要ですね。

家族O(母):30代半ばの息子ですが、相変わらず「自分は病気ではない」と言いつつ、どこかで認めているのか、入院で懲りているのか、薬は積極的に飲んでいます。
 職歴が無いので、資格をとらないと就職は叶わないと思っているようで、取り易いと言われた宅建をめざしています。10月に試験があり、受験できるところまでたどり着けるかどうかです。今まで私は「あなたは病気なんだから」と繰り返していましたが、本人も「言わないでくれ」といっており、私もそれは言わず、応援する気持ちになりました。

リーダー3:お母さんの意見に大賛成です。そうなんです、応援することが大事です。宅建だって難しい試験ですよ。受かれば儲けもの、落ちても息子さんは納得することを学びます。この納得なしに進めると、あとあとややこしくなるんですよ。いいですねえ。

家族P(母):息子は就労移行支援事業所に通っています。20年の職歴があって、引きこもっていてはダメだと自分で気がついて「社会資源を利用したい」と言い出し、私が一緒について回りました。今の事業所はこの新宿フレンズで聞いて、3日間体験して決め、1年弱になりました。自分のやりたいことと、実際に仕事してみてどうなのか、いろいろ悩みがあって、対人恐怖が非常にあるので、くたびれはてて私にぶつけるのが困ります。しかし今日、家族会に来たのも、息子に「行けば」と勧められてきました。

リーダー3:あと一歩ですね。対人技能を身につければ、もう健常者と同じですね。お母さんとしては対人技能を身につけるにはどうすれば良いかを、この一年の計画としてやってみる価値がありますね。息子さんから「家族会に行けば」と言われるなんて、初めて聞く嬉しい話です。

<グループ4> 当事者として願うこと

リーダー4当事者a(男性):皆で話して、<困っていること>は、「障害者といわれること」「妄想や幻聴」「人付き合いの面で困っている」「挨拶のことで悩んでいる」「言いたくないこともあることを言えないで困っている」という話が出ました。
 <自分がやりたいこと>は、「幸せになりたい」「普通の生活をしたい」「絵を描きたい・画家になりたい」という人もいました。<当事者の要望>としては、「偏見の無い社会を望む」「わかってほしい」「いじめないでほしい」「小・中学校の時から精神病のことを学んで、当事者とも交流をしてほしい」ということです。
 私の困っていることは「障害者と呼ばれること」です。この病気は統合失調症という病気の面と、精神障害という障害の面とがあります。私は精神障害者の「精神」という言葉に、偏見を感じています。もう1つは公の教育に、この病気を取り上げてほしいことです。

当事者b(男性):大学生です。今日参加して分かったのは、統合失調症には色々な症状があり、みな希望を持って生活していることです。僕も希望を捨てず、まずは大学を卒業して、社会に出て幸せになるようにがんばって行きたいと思います。

当事者c(女性):20代前半で、この病気にかかってから薬を飲むようになって、辛いときは物に当たったりしましたが、ある男性から「1人じゃないから」と言われ、その言葉をずっと胸に抱いてきました。誰もがいつかかるか分からないこの病気を恐ろしいと思います。少しずつ周りの人と自分から向き合って、少しでも改善していけたらいいなと思っています。

当事者d(男性):15歳のときに統合失調症になって、6年経ちます。大学は無理と思って、これから就職を考えています。一番したいのは、体重が増えてしまったので、ダイエットして、病気を治しつつ就職できたらと思っています。

当事者e(女性):私は今30代半ばです。20歳ごろからおかしかったのですが、大学卒業の頃ひどくて就職できなかったのです。まわりからはさぼっているとかやる気が無いとか、理解が無く苦しんでいました。その中で理解されないのなら自分で治してやろうといろいろやった結果、統合失調症になってしまって、通院している状態です。酷い時もあって2回ほど入院していますが、ジプレキサを服薬して、ちゃんと普通に生活できて働けたし、1人暮らしも出来たし、今は油絵を書いていて個展をしたいと思っています。私は逆にこの病気を利用してやろうくらいに思って、絵を描き、苦しんでいる人に少しでも役に立てればいいと思っています。

家族Q(母):ここにいる当事者の方はみな爽やかで、しっかりしていて、夢も持っていて本当にすばらしいと思いました。当事者さんの気持ちを伺いたくて、加えて頂いて良かったです。

会長:今年初めて設けた当事者のグループです。aさんの司会のもと、生き生きとした発言は、改めて親はどう判断すればよいかのヒントを得たような思いです。親の心配は薬がどうの、幻聴がどうのといったようなことばかりですが、要するに親の心配とは関係なく当事者1人1人が希望を持ち、病気を考え、人生を豊かなものにしていこうと頑張っている。私を含め、親たちは少々差し出者的態度があったのではないかと思います。ありがとうございました。

<グループ5>親亡き後・自立について

リーダー5(父親):このテーマに参加された当事者さんからお話して頂きます。

当事者f(女性):両親と同居で、今年の2月まで働いていましたが、今は休んでいます。弟がいますが、遠方に住んでいてあまり接触がありません。私自身は身の回りのことは出来ますが、何か問題が起きたとき、たとえば相続をどういう風に決めるかとか、果たしてちゃんと対応できるだろうかという不安があります。無年金ですが、病院にケースワーカーのような相談する人がいませんでした。

リーダー5:公の相談できるところを増やしたほうがいいでしょう。地域生活支援センターや市の福祉課、また保健センターでも相談に乗ってくれます。

家族R(母):<親亡き後>のグループには最初2人しかいなくて、皆心配していないのかなとか思っていましたが、これだけ集まって、やっぱり心配しながら生活しているんだなと分かりました。知的や身体障害の場合は、生まれながら障害のある場合が多く、親が元気なうちに色々頑張れるのですが、精神の病気は、親が年取ってから発症する病気なので、いろいろ遅れてしまう。親亡き後が心配ということは、皆さんと共通している悩みだと思います。
 息子は40代半ばになりました。高校生のときに発症して30年近く、統合失調症と闘って生きてきて、私は70歳を過ぎました。息子は最初の10年は自動車や家を壊したりで、警察とか保険会社にお金も一杯払ったりと大変でした。その息子が去年の3月から働き始めたのです。この10年くらい飲んできたジプレキサが体に合ったのですね。ジプレキサ単剤に移行するのと同時に、デイケアの日数が増えていきました。デイケアに通いながら、携帯の占いサイトにお金をつぎ込んで200万ぐらい使ってしまいましたが、自分でバカなことをしたという自覚があって、それが、うまく就労支援に進むきっかけになりました。悪いことからどういう風にひっくり返るか分からないから、皆さんも希望を持ってほしいと思います。
 高森先生は親亡き後の講演で、「親亡き後のことは、親がいる今でしょう」とおっしゃいました。この子は何もできないからと、ご飯を作り洗濯してあげて、手をもぎ足をもぎしているわけです。今現在、親がいる間のうちに、ご飯が作れるようになる、1人で暮らせるようにする、それが「今でしょう」ということだと言っておられます。

家族S(妹):当事者の姉は母と同居していましたが、母も少し物忘れが出てきて今後どうなるか分からない状態で、私の姉の親亡き後の自立が本当に目の前にあります。母も姉も自立しようということで、5月に姉を説得して1ヵ月入院して、その間も看護師さんや先生のサポートもあって、退院後はグループホームに入居することが出来ました。どうしても身内には甘えが出ますから、第三者に関わっていただくことが良かったようで、姉も親のところには戻れない、自立してゆくしかないと、気持ちが変ったようです。今までは服薬管理もちゃんとしなくて再燃を繰り返していましたが、今回はきちんと薬を呑み、グループホームから就労支援も進んでいます。自立はこれからですが、いい方向に向かっていると思います。

リーダー5:補足しますと、お姉さんの入院の際は、移送会社にお願いされたそうです。移送会社というと大暴れしたときの駆け込み寺みたいなイメージをお持ちかもしれませんが、その移送会社は入院先を決めるところから、グループホーム関係のフォローまでやってくれたそうですから、皆さんもご参考になさったらいかがかと思います。

家族T
(母):40代半ばの息子ですが、大学に入学後、すぐ行けなくなり、引きこもりが長く、薬も止めてしまったりして、最終的に私の実家を建て直した時に1人暮しをさせて、そこから自分で仕事を探してきて、今6年目になります。経済的にも全部自分でやっていますが、つい心配で月1回、私が掃除や洗濯をしてしまうので、それがいいのか悪いのかと思いながらやってしまいます。
 親亡き後が心配になって私自身がパニック状態になり、保健所に行って新宿フレンズを紹介していただいて、1年半ぐらい来ています。ここでいろんな方の意見を聞いたりしていると、自分が落ち着いてきて、息子にも影響して良い方向にいくようで、ずっと続けて来ております。

リーダー5:息子さんは5時起きして7時から11時まで働いておられるのですね。非常に独立心が強い。但しマイナス面として、精神保健福祉手帳はいらない、障害年金も受けようとしないということで悩んでおられます。先のことですが、このままいくと、相続財産まで国庫に収めてしまわないかとご心配なさっておられました。家族以外の、息子さんが信頼している人から説得して貰うのも一方法かもしれません。

家族U(母):40歳を過ぎた息子ですが、性同一性障害と発達障害です。新宿フレンズをネットで調べたときに該当しないかなと思ったのですが、フレンズに来れば、就労支援のこと、親亡きあととか、同じように問題となるお話を聴けるかと思って参りました。

リーダー5:2つも重い障害を抱えておられて、言葉も無かったのですが、お母さんがフォローされて年金は2級を受給なさっていて、作業所で1日働いておられる。また一般就労できないという点で同じ立場の方もおられるのでないかということで、参加なさったとも言われていました。 

家族V(母):40代初めの長男です。小さな自営業をやっているもので、この間、息子と話したら、「自分はこの家の自営業を継ぐから、別に外に出て就労しなくてもいいだろう」と、勝手に思い込んでいるようです。そのため社会につながることがなかなかできず、どうしたらいいのかと悩むのですが、この話になると喧嘩になって息子のペースにはまってしまい、感情だけをぶつけ合って終わってしまうのです。
 息子は精神科のクリニックに通院していて、主治医からは統合失調症の薬をずっと処方されていましたが副作用が強くて、うつ病の薬に変えて調子がいいと言っています。先ほど「言い合いになるのも発達障害から来るのでは」と言われたので、やっぱり…と思いました。発達障害は本当に厄介で、どうやって息子と話し合っていったらいいのかが、私の今の課題です。息子に親亡き後のことを話そうとすると、「あんたより上手く自営業をやっていくよ」と息まいているのですが、パソコンと向き合うことは得意でも、人と接するときは自分が思ったことをストレートに伝えてしまって、上手くやっていけない。それを悩んでいるところです。

家族W(母):フレンズには3回目ぐらいです。20代半ばの息子に5年ほど前に、私が刺されてしまって、その時やっと病気だと分かったのです。息子は措置入院で、本人が一番辛いと思います。私も何でこんなことが起きたんだろうと、いろいろ話を聞いて少しずつ理解できるようになったかと思います。
 退院が長引いているのは、グループホームがなかなか決まらない。それは専門の方に言わせると、他害行為をしたことに反省が無いのだそうで、悪いと思っていないことが分かるらしい。いろんな方が病気だから仕方が無いと言ってくれますが、もし退院して他人様に危害が向かったら病院としても責任があるということで、まだまだと見守ってくださっているところなんです。
 もし子供が退院してきたときに、どのような立ち位置で子供と向き合っていくか。専門家からは一生会わないほうがいいと厳しいことも言われたりします。確かに自分が本当に弱い人間で、息子を見ると何かやって上げなくてはいけない心境にどうしてもなってしまう。私の所に生まれてこなければと思ってしまうんです。早く自立できて、好きなことを目標にしていってくれたらいいなと願っています。

リーダー5:男親の私としては、母親の子を思う強さと深さに打たれるばかりです。これは家内からも常日頃感じさせられている事です。

会長:当事者b君の「統合失調症にはいろいろな症状があるが、みな希望を持って生活している」との発言がありましたが、まさにそうだと思います。今日、お聞きした皆さんからの言葉はそれぞれに価値があり、そこに希望があり、苦難があり、喜びがあります。いつもは講師の先生からのお話を聞く講演会が主体ですが、今日は皆さんが発言してくれた言葉にこそ真の教えがあったのではないでしょうか。お疲れ様でした。

                                           ~了~

平成17年4月からの新宿家族会ホームページ「勉強会」の表示形式について

 新宿家族会では4月から「勉強会」ホームページの表示について、概略掲載とすることになりました。そして、「フレンズ」(新宿家族会会報紙)ではいままで同様、あるいはより内容を充実させて発行することにしました。これまで同様に勉強会抄録をお読みくださる方は、賛助会員になっていただけますと「フレンズ」紙面版が送られますので、そちらでお読みできます。
どうぞ、この機会に是非賛助会員になっていただけますよう、お願い申し上げます。

賛助会員になる方法    

新宿家族会へのお誘い 
 新宿家族会では毎月第2土曜日、12時半から新宿区立障害者福祉センターに集まって、お互いの情報交換や、外部からの情報交換を行い、2時からは勉強会で講師の先生をお招きして家族が精神障害の医学的知識や社会福祉制度を学び、患者さんの将来に向けて学習しています。
入会方法 

編集後記

  梅雨のような天気が続いている。これもまた観測史上初めてということだろうか。異常気象が続いているが、我々人間の生存が悪影響しているのか、単なる天然の輪廻なのか。

 今月の定例会は拡大家族交流会として、会員の皆さんの貴重な話が聞けた。中に薬を減らしたいと医師に告げると、医師は薬すべてを無しとして、本人が陽性症状になってしまった。もう一つは「引きこもりでも自傷行為がなければいいですね」と述べたという。

 まだまだ日本の精神医療のレベルの低さを露呈した話である。それでも従わざるを得ないのが我々親と本人の置かれた現実であることを思うと本当に悲しいことである。

 今年は当事者グループを新設した。大成功であった。A君「私は精神障害の精神という言葉に偏見を感じてしまいます」。確かにそうだ。脳の病気ならば脳の病気とはっきり言うべきではないか。精神という曖昧な表現をするから偏見として受け取られてしまう。

 Cさんは「一人じゃないから」と言われ、救われた想いを述べている。前向きな言葉は聞いていて、こちらもすっきりする想いである。

 D君も大学を諦め、就職するという。賢明な生き方に拍手を贈ろう。

 Eさんの「私はこの病気を利用してやろう、そして苦しんでいる人に役に立ちたい」という言葉に頭が下がる。病気をプラス志向に受け止められたらこんな素晴らしいことはない。この日、四十名近くいた親御さんで、この言葉を言えた人は何人いただろうか。悪いことを悪く考えるのは当たり前のこと。悪いことをプラスに考えるというのは、なかなかできることではない。今年は当事者Gに軍配が上がった。