再発と家族の感情表出

2月 勉強会より 講師   桜ヶ丘記念病院医長   岩下 覚先生

 きょうは再発と感情表出というテーマを頂きましたので、それについてお話を進めます。
スキゾフレニアという病気はきちんと治療すれば治る病気です。ところが、我々医師はなかなか「薬を止めてもいいです」という状態にはなりにくいものです。どうしても再発の問題が起き得るということを頭に入れておかなければならない病気です。
 しかし、この再発はスキゾフレニアに限ったことではありません。慢性といわれる病気には必ずと言っていいほど再発の可能性があります。例えば、糖尿病、高血圧、いわゆる生活習慣病は皆そうです。従って、病気が起きたら、まず症状を抑える、その後はどのように再発を防ぎながら、リハビリテーションを行い、生活上の問題を一つひとつ解決していくか、ということが大切なことです。
 再発という概念について、以上のような点を踏まえて、きょうのテーマである、感情表出について述べてみたいと思います。
 感情表出という言葉は英語ではExpress Emotion です。これを略してEEと呼んでいます。このEEがスキゾフレニアとどう関係するのか、ということですが、元々、このEEという言葉が言われ出したのは、1950年代終わりのイギリスでした。当時、イギリスでも精神疾患で長期に入院している患者さんがいて、そういう人たちをどのように退院させるか、あるいは社会復帰させるかということが問題になっていました。さらに退院した後、いかに再発を防ぎ、安定した社会生活が営めるかが大きなテーマでした。
 そこで、この問題に因んで様々な研究が行われまして、特にブラウンという人が1958年に退院後の患者さんの再発率を調べました。そこで、両親あるいは配偶者の元に退院した人と、兄弟の元、あるいは下宿屋(独居)に入った患者さんの再発率を比べてみました。すると、前者(両親、配偶者)に退院した患者さんの方が再発率が高かったという結論を発表しました。これはどういうことか、前者は後者より患者さんとの距離は近く、本人の好み、癖、性格、あらゆる面で後者より詳しく知っているから、一般的には看護の面でもより条件がいいので再発率も少ないだろうと考えます。が、結果は逆だったのです。ということは、余り距離がない近い関係よりも、ある程度距離があった兄弟や独居生活の方が再発が少ないと見ることができます。
 これはなぜだろう、という疑問がでます。そこで、先ほどのEEという概念が考えられます。これは家族が患者さんに対して持っている感情がどの程度、どのような形で出てくるか、その時の言葉であるとか、態度とかを家族に面接試験を行って、研究データを作成しました。そこでわかったことは、家族が患者さんに対して取る態度や言葉によって、再発に影響を及ぼすということでした。特にそこでは3つのタイプに別けられるという結論を出しました。EEの中で家族が<批判的>な感情表出、例えば、何もしないでゴロゴロしていてしようがない、とか、いい年をして仕事もしない、という態度や言葉です。それからさらに上回る感情表出として<敵意>、例えば、いっそあんな子なんかいない方がいい、とか、一発殴ってやりたい、という態度や言葉があります。それから、<情緒的な過度の巻き込まれ>という感情表出があります。ちょっとしたことで家族が泣き崩れてしまったり、冷静さを失ってしまう態度。これらが再発を呼び起こす家族の感情表出であるという結果が示されました。
 面接試験ではこれら3つの要素をその家族がいくつ示されるかをカウントしました。そして、カウントが多かった家族をHigh EE(ハイイーイーまたは高イーイー)、低かった家族をLow EE(ローイーイー)として2つのタイプに分類しました。ここで注意したいのは、その家族がハイEEに分類されたからといって、何か社会的に欠陥がある、ローEEだから優れているということではないということです。これは飽く迄患者さんと家族の関係でのハイであり、ローということです。家族が良い、悪いという問題ではなく、関係性の問題だということと理解してください。私たちの人間関係でもそうですね。私はこの人とはいい関係だが、あの人とは合わない、まずい関係にある、ということがあります。そのとき、この人が絶対的に優れていて、あの人が絶対的に劣っているか、そんなことはありませんね。それと同じことです。飽く迄、患者さんとその家族の関係性の問題です。
 さて、このEEの概念がイギリスで生まれて、各国で追試が行われました。そこで、各国の研究者たちは確かにEEの概念はあると証明されました。その後、1972年にボーン、レフという2人の研究者が、長期に入院していて退院された患者さんの9ヶ月後の予後を、家族への面接を含めて調べました。
 そうしますと、全体はハイEEと分類された家族が51%、ローEEが13%、その他は中間的家族という結果がでました。ハイEEが大半ですね。それは無理もないことです。長く患者さんが入院していて、家族としても苦労があったわけですし、その心理がどうしても表出されてしまうものでしょうね。
 次ぎにローEEと判断された13%の家族の内で、服薬している患者さんと、していない患者さんの調査を行いました。規則的に服薬していた患者さんと不規則、あるいは時には飲まない患者さんの再発率を調べました。そこで規則的に服薬している患者さんの再発率が12%、不規則が15%でした。つまり、9ヶ月後の段階では、ローEEの場合、規則的に服薬しても不規則の服薬でも再発率はあまり変わらなかったという結果でした。
 今度は同じく9ヶ月後の調査で、51%のハイEEの家族について、患者さんと家族の接触時間から調査を行いました。週35時間・一日5時間以上、患者さんと家族の接触がある家族と35時間未満の家族を見てみますと、69%が35時間以上(A)、28%が35時間未満(B)でした。未満の場合は患者さんがクラブなり何らかで外出するか、家族が外出して35時間未満としている場合です。この両者について服薬を規則的、不規則でみてみますとどうなるでしょうか。
 まずB(35時間未満の接触)で規則的服薬の患者さんの再発率は15%、不規則の服薬では42%です。そして、Aの35時間以上の接触で服薬している患者さんの場合は53%、不規則では92%の再発率となっています。
 以上ことをまとめると、一番再発が少ないのは、ローEEのところに退院して、薬をキチッと飲んでいた患者さんで、12%です。一方、ハイEEのところに退院して、1週35時間以上家族と接触していて、薬を不規則か止めてしまった患者さんの92%は再発しているということです。また、ローEEの家族の元への退院では服薬が規則的、不規則的でもあまり変わらないということです。ただ9ヶ月後の段階ではです。この先はわかりません。
 それから、ハイEEの家族の元に退院しても、接触時間が週35時間未満で、服薬を規則的に飲んでいれば、ローEEの服薬不規則と同じということがわかります。ですから、ハイEEの家族でもあまり顔をつき合わせないようにすれば、かなりの再発は防げるということも言えます。さらに、ハイEEでは接触時間が少なければ、服薬が規則的、不規則に関わらず再発率は小さいということが言えますね。また、当たりまえですが服薬を規則的に飲んでいた方が再発が少ないということもこの研究結果でも示されています。
 だいたい感情表出が患者さんに与える影響の度合いはこれでおわかりいただけたかと思いますが、EEは飽く迄、患者さんと家族の相互関係の問題であって、ハイEEが悪い家族、ローが良い家族という単純な基準ではないこともよく理解してください。最近EE、イーイー、とあちこちで聞かれるようになり、EEが高いのは家族が悪いという風潮があります。しかし、患者さんの症状が落ち着いていれば家族も落ち着いてローEEになれますよね。ですから家族のEEが高い、低いといっても、その前に患者さんが安定しているか、不安定にあるか、ということが関係してきます。それが、相互関係ゆえの問題だということです。言い方を変えれば好循環、悪循環の関係に似ていますね。しかし、だからといってこの研究結果が無意味ではなく、その局面での問題点を示してくれています。そこから私たちは類推して、家族が患者さんに対してどのような対応をしていったらいいかを理解すべきだと思います。その説明はお手元のグラフを見ていただければお分かりいただけると思います。
 さて、再発につい付け加えますと、服薬さえしていれば再発はゼロか、といえば、そうではありません。では、薬のほかに何があるか、それは社会的心理介入の再発予防効果(Hogarty, GEら)というグラフにありますが、患者さんが薬を飲んでいる条件下において、社会技能訓練(デイケア、SST等)を受けているかいないか、家族が家族療法(家族会、家族教室、教育プログラム)を行っているかいないか、による違いを示したものです。
 最初は服薬はしているが社会技能訓練を受けず、家族もなんら家族療法を行っていない場合、1年後の再発率は41%となっています。次ぎは服薬して社会技能訓練を受け、家族がなんら家族療法を受けていない、は20%の再発率、3番目、患者さんが服薬して技能訓練を受けず、家族が家族療法を受けている場合、19%の再発率。最後は患者さんが服薬して技能訓練を受け、家族が家族療法を受けた場合、ゼロの再発率となっています。
 これは、服薬は非常に大切なことですが、薬だけでは再発は防げないということを物語っています。薬に何をプラスして行ったらいいかということが、この研究の主眼です。一つは生活技能訓練、デイケア、SST、作業所などですね。もう一つが家族が学ぶことです。家族教室、このような家族会活動に参加すること、保健所等が行う講習会、講演会等に参加することなどです。これらの条件をすべて満たしたとき、再発率が限りなくゼロに近づくということです。
 では、さきほどのEEの話は、このこととどう関係してくるのかを考えてみましょう。家族が家族療法を受けることがなぜ再発を防ぐのに役立つのか。例えば、患者さんが長く入院していて退院して家に帰ってきたとします。その当初は家族も「よかった、よかった」と歓迎します。ところが、1ヶ月たち、3ヶ月経っても患者さんは何もしない。ただ1日中ゴロゴロしているだけだとします。すると親は「いいかげんにしてくれ」と言いたくなってきます。ここで、道がわかれます。例えば患者さんがスキゾフレニアだったとして、家族がその知識があるかないかで、その患者さんに対する態度が異なってきます。例えば、スキゾフレニアの陽性症状にはどんなものがあるか、陰性症状とはどんな状態か。これらを知らない親は、毎日ゴロゴロしている姿をみて、「あれは親に対する嫌がらせか」「わざとあんな態度をとっている」などと受け取ってしまい、感情的な態度をとってしまうことが多く見られます。これらが、家族が知識をもっていれば、かなり冷静な受けとめ方ができるはずです。つまり、家族が勉強することによって、EEを下げることができるということです。
 もう一つの患者さんが生活技能訓練に参加する、しないことによる再発率の問題では、少なくても家庭内で患者さんと家族の接触時間はゴロゴロしているよりは減ります。そこから、家族のEEが下がるということにもなります。そして再発率が下がるということにつながります。
 では、お話はこの辺にして、質問があればお受けしましょう。

質問;私の子供は頂いた資料には書いてない、陽性症状ですが、破壊衝動とでもいうべきものです。こういう例は精神疾患の中では少ないものですか。

先生;少ないということはありません。一般的に、そうした粗暴な行動が見られるのは急性期の症状と関連して見られる場合があります。
 それは、外部に向けられれば粗暴な行動になりますが、逆に内部に、つまり自分に向かう場合もあります。それは自殺であったり、自分を傷つける自傷ということになります

質問(続き);いまは落ち着いていますが、やはり再発でまた粗暴な行動は出てくるものですか。

先生;それは患者さんの生活のあり方とかによってずいぶん変わってきます。例えば、外部に出かけられる状況にあって、アルバイトとか、デイケアとか、ご本人が毎日の生活に充実感、あるいは達成感とかを感じているかどうかによっても大きく影響されます。それがあれば衝動とか自暴自棄とかの心理は生まれないでしょうから、その辺だと思います。ただ、この感情というのは、何も病気の人に限らず誰にもあるものです。我々も自己評価できるもの、達成感とでもいうのかがあれば、落ち着けますよね。ところが何もやることがないと、不安やムシャクシャしたりすることがあります。
 患者さんなら余計にそういう感情は強くなります。何もすることがない、できない。家族には迷惑かけている。あるいは家族は自分をどう見ているんだろうという不安感があります。特にスキゾフレニアの患者さんの場合、その辺が過敏です。ですから、アルバイトやデイケア等で自ら達成感が味わえた時というのは、自分を肯定的に見ることができるわけです。さらに周囲の人も自分を肯定的に見ていてくれるだろうと思えるわけです。
 そういう意識があるのとないのではそうした衝動や粗暴という面でも表れかたが全然違うわけですよね。ですから、病気の症状として判断することも大事ですが、ご本人の生活のあり方によっても結果が大きく異なる訳です。

質問;そうした粗暴な行動をとっているときに、親は「止めろ」と叱ってやったほうがいいのか、ただ見ていて落ち着くのを待っていた方がいいのでしょうか。

先生;叱った方がいいでしょう。 その行動は容認できない行動ですから、それは言うべきでしょう。その時、ただ「止めろ」ではなく、ご本人もそういう時というのは辛いわけですから、彼の背景にある辛さをくみ取ってあげるという話しかけなり親の姿勢というのでしょうか。そういうものも必要ですね。というのは衝動的行動をとっている最中は、ご本人に何を言っても受け付けないということがありますから。それは、落ち着いてから聞き出すということです。

質問;私の息子はアルバイトに行きたいと言ってますが、親として注意すべき点はどんな点でしょう。

先生;基本的にはストレスの問題です。職場でのストレスというのは、ご存じの通り、かなり高いものです。家庭のなかでしたら気に入らなければ、ゴロっと出来ます。職場ではできません。それから、いまこういう世の中ですから、厳しいですよね。雇い主はとにかく出している給料分だけは働いてもらいたいわけです。それに答えなければならない。そして、一般的な職場ではマイペースが許されません。どんな職場ですか?

質問者;清掃の仕事です。

先生;以前、こんな話もありました。その人はスキゾフレニアでしたが、ビル清掃を行っていました。その後、配置転換で新宿駅地下街とかの場所に変わったんですね。すると駅の回りはご存じの通り酔っぱらいの嘔吐や暴力団まがいの人が絡みついたり、ホームレスの人に邪魔扱いされたりして、その方は再発してしまいました。
 こういうのは薬の問題ではないわけです。やはり環境要因とでもいうのでしょうか、そこから来るストレスというのが大きいと再発してしまうことがあるわけです。
 それから就職問題では病気のことを明らかにするかどうか、ということがあります。患者さんというのは我々のような要領よくこなすとか、適当に、ということができないですね。純粋で繊細で100%頑張っちゃいます。仕事は適度に手を抜くということは結構難しいんですね。ところが、それがないと人間持たないですよ。ところが、患者さんはそれができないですね。それからウソがつけないです。それは素晴らしいことですが、実際仕事につくとなったら、それが再発のきっかけになったりします。

質問;その面では身体障害の場合は社会がけっこう認めてくれていて、職場も開かれていますが、精神の場合はまだまだ、社会が認めてくれていないようですね。

先生;ですから、そういうことのためにデイケアとかが就労を目的にしたグループ活動も生まれてきていますから、そういうところで同じ様な悩みをもっているもの同志が情報交換したりとか、お互いがアドバイスしたりとか、大事なのは、そうした悩みをもった人は自分だけではないのだ、ということを知ることです。そういうグループから一人、二人と就労ができてくれば、それはあとに続く人にとっても自信につながることによって、ますますいい方向に向かうことになります。
 それは医師や看護婦、あるいは家族から「そんなことは気にしなくいい」と言われてもご本人たちはなかなか理解できないのが、同じ境遇にある人が、外に出ていく、あるいは就職していけば、そして適当にやっていく姿をみれば、その方がずっと密接な関係として理解できるわけです。
 ある当事者から聴きましたが、その方は仕事中は全くストレスを感じないが、昼休みになって、みんなで話をする時になって、一緒に飯を食いにいくとか、世間話とかで自分の病気のことが気になって入っていけないから、一人で過ごしている、というような苦労があることを聴かされました。
 まあ、それにしても最近は就職の状況が変わりましたから、フリーターが増えてきていたりして、精神疾患の経験者だからといってそんなに目立つこともなくなったという面もあります。

質問;私が近々嫁いだ娘の出産に手伝いで家を空けます。すると息子は主人と二人だけになってしまうので、いまは落ち着いているのですが、私がいなくなることで問題が起きなければいいと思っていますが、どんなものでしょうか。

先生;考え方です。お母さんが1ヶ月いなくなるのは、息子さんが嫌いでいなくなるわけではないですね。その理由が明確であること、そして1ヶ月という期間が明確であること、こうしたことを息子さんによくお話すれば、息子さんはわかってくれると思います。
 それで心配だったら娘さんの家の電話番号を教えて、不安になったらここに電話しなさい、ということを伝えておけばいいのではないでしょうか。そして、あなたを信頼していること、あなたならできると自信を与えることも忘れないで下さい。実際にお母さんなしに1ヶ月、やれればご本人は大きな自信を持てることになります。そして、ご両親との関係性もさらに良くなるでしょう。とにかくやってみることです。

質問;私の息子は、それまで薬を飲まないで再発したり、事件を起こしたりしていました。3度ばかり入退院を繰り返す中で、ようやく薬をしっかり飲むようになりましたが、今度は薬依存症かなと思えるほど、忠実に飲んでいます。しかし、それまで出かけたり、専門学校への意欲などまったく消えて、ただ一日中自分の部屋に閉じこもっているだけとなりました。薬の内容に問題があるのでしょうか。

先生;いや、薬はやはり几帳面過ぎるほどに飲むことが基本です。この病気の治療の流れは急性期症状をまず薬で抑えて、そのあと引きこもり等の陰性症状に変わり、それが過ぎると徐々に外部に目を向け始めるという図式があります。ただ、この期間が何ヶ月とか何年とかは人によって、様々な訳です。内科や外科のように経過が一定していないんですね。
 確かにこの病気の急性期の治療では薬は思いっきり使って、とにかく症状を落ち着かせることを行います。それがだんだん落ち着いてきたところで、徐々に薬の内容、分量を変えていきます。ですから、絶えず患者さんの様子を見ながらコントロールしていくことですね。
 それから、閉じこもりの生活習慣についてですが、これは病気の面と性状心理学的とでもいうべき側面と両面から見ていかなくてなりません。例えば言われる意欲が無くなった点ですが、その患者さんにやってみたい事があるかどうかです。彼の動機付けになるようなものですね。しかし、外部から「これやりなさい」といってすぐやり始められるか、そんなことはないです。でも、いつか必ず、彼のほうから気づく時は来るものです。
 大切なのは、彼が少しでも意欲のようなものが見えたとき、回りがそれをいかに見て取り、支えて上げられるかです。せっかく彼が意欲を見せても、回りが気づかずにチャンスをつぶしてしまうことだけは避けたいですね。
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紙面の都合でここで終わります。あなたも会場でお互いに話し合いませんか。ご本人の悩みは家族の悩み。貴方の悩みは家族会の悩みです。

編集後記

先日、正月のカレンダーを破いたと思ったら、あっという間に今年も三ヶ月が過ぎようとしていた。
 毎年のことながら慌ただしい三月であった。つくし会・高山会長からサンクス応援の依頼を直々に受けながら、約束も果たせずに終わってしまった。
 私のような他に正業を持っている者にとって、外部へ足を運んでの行動は難しい。従って、こうした小紙「フレンズ」編集やインターネットホームページなどデスクワークでの活動が精一杯である。
 それでも、二月のつくし会単会交流会には参加することができた。午後のグループ別交流会では、私が参加したAグループで、各単会の会員名簿の作成状況について統計を取らせていただいた。十二単会のうち半数が名簿を作成、お互いが持っているという。そして、そのほとんどがここ数年内に発足した新しい単会であった。どうやら、三十年前後の歴史ある(当新宿家族会を含め)家族会ほど、名簿は御法度にしている感がある。
 会員同士の連絡もなくて、家族会と言えるのか。世は情報の時代、名簿については一考すべき時ではないだろうか。                      嵜