精神障害を持つ人と社会復帰

1月 勉強会より    講師 都立中部総合精神保健福祉センター
         地域保健部生活訓練科長 医師  熊谷直樹先生

 まず、私が勤務します「生活訓練科」とはどういうところかと申しますと、中部センターの仕事である精神保健福祉相談、通所訓練、入所訓練の内の通所訓練部門です。通所者の多くはスキゾフレニア(分裂病)と言われる病気の回復期にある方で、社会参加とか働くことを目標にして通って来られています。

 新宿家族会の場合、どのような患者さんが多いのかちょっと手を挙げてみてもらいましたが、やはりスキゾフレニアの患者さんが多いですね。その他には鬱病の方、神経症、最初神経症と言われたけれども後になってスキゾフレニアと言われた人とかいますが、とりあえずスキゾフレニアを例にとりながらお話したい思います。

「社会復帰」とは
 そもそも"社会復帰"って何だろう、ということから考えてみたいと思います。皆さんはお子さんが「早く働けるようになって欲しい」「自分のことは自分でできるようになって欲しい」というようなご希望をもっていると思います。ともかく社会の一員として参加して生活できることで、そのための応援のようなものを広い意味で「社会復帰」とか「社会復帰活動」と言えるでしょう。

 病気を持つ人に「じゃあ、何で治療以外に社会復帰活動が必要なんだろう」といったことがきょうの私の話のポイントだろうと思います。皆さん方のご家族から出された問題を少し分類してみると、医療に関わる問題とそれから仕事に関わる問題、そして日常生活や住まい、友達とか広い意味で人付き合いに関わる問題などがあります。

 さらに細かく分類してみると、なかなか病院に行きたがない、病院に行ってもすぐに止めて別の病院へと転々として、じっくり治療できないとか、病院とつながっていても薬を飲みたがらない、再発してしまう、といった困り事を抱えている方など、それぞれ細かくは違いますが、おおよそニュアンスとしてはこんなところだと思います。
 それから、仕事の面、活動の面でいうと、例えば働かない、働けない、ちょっと高望みをしていて働けないとか、あるいは意欲がない、という悩み事があります。

 日常生活では50代で発病された方のお話を伺ったことがありましたが、ある程度の家事はできるが、買い物では買うものが決まってしまうとか、決まった店にしか行かないとか、中には身だしなみの問題だとかで、周囲の方の支えが必要だというようなことがあります。また、患者さんが一人暮らしをするようになって、ゴミ出しのルールなどが守れなくて、部屋がゴミの山になってしまったとか、あるいは大家さんから文句が出たりとかいうことを聞きます。それから、風呂なども特別なこだわりがあって、お湯や石鹸の使い方で変わった様子を見せるとか、お金についても余裕がないことから、入浴回数が少ない人を多く見受けます。

 人間関係ではかなりの人が閉じこもりになるケースが見られます。一方、インターネットにはまって、人間関係はメールだけのような人もいたりします。これらは医学的には「自閉」と言いますが、人付き合いが乏しいということが言えます。
 それに人付き合いができても、会話がぎこちなく、上手く話せない。中にはトゥーレット症候群のように、病気そのものが症状で、自分の意志に反して言葉がワアーッと出てきてしまう方もいます。
 スキゾフレニアの場合、どちらかというと上手くその場での適切な言葉が思い浮かばない、または場に相応しい話の展開がなかなかできないというようなことが起こったりします。

これまで分かった心の病気
 そこで、実はスキゾフレニアの詳しいことは私以外の先生方が既にお話されていると思いますので多くは述べませんが、これまでにわかった心の病気の経過について少しお話します。
 最初はどなたも病気かどうか分からないような時期があったと思いますが、その際に現れる生活障害というものがあります。それは病気そのものの症状とはちょっとひと味違った意味で、患者さんにとっても、それを支えるご家族の方々にもご苦労につながる部分として大きいものです。

 この生活能力の障害というのは、病気だけで引き起こされるものではなくて、病気のために人付き合いしない期間、例えば入院してしまったために、それまでの友達付き合いが途絶えてしまった場合とかですね。ですから、それ以降お友達付き合いがなくなったために、他人との会話の仕方、生活の送り方を学べなくなってしまったといった悪循環の二次的障害が生まれます。

 私はきょう、この会場に初めて大江戸線に乗って来ました。新宿駅で大江戸線の乗り場を探し回って、それがなんと都庁前で乗り換えて、上がったり下がったり、相当複雑な回廊を上り下りしながら、やっとの思いできました。お陰で遅刻してしまいましたが。つまり、初めての土地で初めての乗り物に乗るなど、新しいことを覚えることはそれなりに練習が必要ですね。

 ですから、患者さんが退院しても、私が初めての電車に乗って大変な思いをしたのと同じことを体験せざるを得なくなります。病気そのものとしては良くなっていても、生活能力としては「低下した」ということになってしまうのです。そうすると、これは医者の側ではどうすることもできないということがあります。
 先ほどどなたかが「薬の治療だけで良いのでしょうか」というお話がありましたが、確かに薬は社会復帰をしやすくするために役立ちますが、それだけでは不十分であることは言うまでもないことです。

 しかも、もう一つ大事なことは、この生活能力の低下から普通の人にとっては何でもないことが、退院したばかりの人には相当なストレスになります。逆にいうと、病気の人は「だから、新しいことができない」となってしまうこともあります。いままで何とかうまくやってきた範囲の中で生活しようとする一つの表れと私は見ています。
 そして閉じこもりもその一例に過ぎないと思います。新しいことをやると大体どなたも心配や不安のストレスが増えて、苦しく、辛くなります。そういうことを患者さんたちは、自ら察知し、閉じこもりによって防御し、それを体現しているのだと思います。この解決の一つは治療による服薬は勿論ですが、周囲の生活支援があること、ストレスへの対処が自らの力でできるようになることです。

 逆に状態を悪化させる要因は薬を止めてしまうこと、ストレスのある環境に入ること、といったことがあげられます。これらをどのように組み合わせて、ご本人の生活を全体として良くしていくことができるか、社会の一員として生活できる社会復帰の目標を果たせるかということになっていくだろうと思うんです。

病気の治療という面から 
 そこで、医者の側で考えていることとしては、病気の治療という面だと、特に回復期の場合、薬の継続と段階を踏んだリハビリの導入ということで、ご本人については、できればいきなり働くということではなく、段階を踏んだ通所の訓練ができるような場を経験されることですね。それから、どうしても働かないということが経済的問題に繋がってきます。今は経済的な問題が現れていなくても、先々どうしたらいいだろうというようなお話があちこちで聞かれます。この問題は患者さんを支えているご家族、ご兄弟がいない方や支えきれなくなった時どうするか、ということで大変大きな問題になりつつあります。

 それから、この病気は再発しやすい病気であることがあります。再発に対してはその時に現れる注意信号というものが必ずありますから、それを周囲の人もご本人も具合の良い時に話し合って知っておくことです。例えば、人によっては眠れなくなるとか、イライラがひどくなってくるとか、あるいは一人になりたがるとか、そういう注意信号をご家族もしっかり認識しておくことです。また、その注意信号が出た時の相談できるような仕組み、状態を日頃から作っておくことです。
 薬についてはそれなりに工夫が必要です。薬は概して症状、特に幻覚や妄想などの症状には効果を表しますが、副作用もかなりあって、働けるようになるまでの回復は期待できません。精神の薬が治療に使われだしたのがほんの40数年前からですからね。

障害と付き合うヒント
 そこで、そうした生活能力の低下という意味での障害と付き合うヒントとしては、まず、焦らないことです。焦ると大概失敗しやすいし、それから発病してしばらくはご本人もなかなか自分が病気をもった生活をしているということを受け入れづらくて、やっぱりいろいろな調整をしてみたくなるわけです。それは当事者としては尤もなことだと思いますが。中にはその失敗を通して自分の病気を認識する人もいれば、残念ながら自ら命を断たれるみたいな悲しい結果に至ることもあります。

 そして、医療機関と上手く付き合っていくということも必要だと思います。そういう意味では日本の精神科の治療というのは反省しなければならないことが多いと思います。例えば、埼玉県のある精神科病院が特定の資格を持たずに患者さんをむりやり縛るということを行っていました。それが新聞やテレビニュースで伝えられたのを皆さんも知っていると思いますが、そんな状況がまだ日本にはあるんですね。

 精神科の治療において、治療者と患者さんが信頼し合って、病気の症状のことや生活のことなどを話し合える環境が必要なんですが、日本ではその辺が充分に作られていません。診察時間が5分なんていうのでは信頼関係を作れませんよね。しかし、日本の精神科の病院は他の科目の病院から差別されている状況があります。どういうことかと言いますと、他の科目の場合、入院治療ですと16人に1人の医師を配置しなければならない、となっています。ところが精神科は48人に1人でいいとなっています。本当は精神科の治療こそ心の通った話し合いとか、生活の相談とかが大切な治療ですが。医師以外の人の配置でも手薄なままでいいというふうな、今の日本の法律や保健制度の立ち後れがあります。
 但し、その分皆さんを含めて、国民全体がお金のかかることですから、その福祉を高めるためにお金を出し合おうという合意づくりも必要ですね。さらにそこで働いている看護婦さんやケースワーカーさんなどが適正な給料をもらっているかも我々がチェックして、スタッフも気持ちよく働ける環境づくりが大切です。

 医療の根本に戻って、精神科医師から「どうしたら良くなるか」の説明を十分に受け、お互い信頼関係の上で治療が行われていくことが、患者さんの回復、そして社会復帰へと繋がる道であるべきです。ところが、実状はそれが満足に行われている病院は極々わずかでしょう。私がここでこんなことを言うこと事態がそれを象徴しています。
 しかし、こういうことをチャンスにして、皆さんがよく勉強されて、皆さんの手元に配られている全家連、つくし会の資料などもいい参考書ですから、病気、社会復帰について知識を身につけて頂けることが最良の方法と言えます。

健康な部分を伸ばす
 回復への道筋として大切なことは、健康な部分を伸ばしていくという発想を持たれると、良い結果が期待できます。確かに病気を持たれた方は困っていますが、それでもご本人しかできない、あるいはご本人でもできることがあります。その辺を働きかけてみることも大切です。

 特にきょう私が言いたいのは、「病気を持つことが本人にとって人生の損にならない世の中づくり」です。社会資源の充実と病気とは直接関係していない人たちの病気の理解によってそれは可能となります。それともう一つ私の提言は「医・職・住・遊・友・援」です。これは各医療の改善とともに、職としては活動や働く場を増やしていくことです。きょうはムツミ作業所の方もおいで頂いておりますが、作業所とか授産施設、病気の理解ある職場を広げていくことです。それから通所の訓練とか、障害者職業センターでの援助とかです。日本全体からみると新宿区はどちらかというと、資源が豊かな方です。

 例えば、社会復帰のための施設・団体で、職親会の事務所は新宿区高田馬場にあります。共同ホームもやっぱり新宿区高田馬場、それに当事者の会・新宿区高田馬場となっています。さらに、精神障害者法律相談事業「ステップ」、これも新宿区神楽坂ですね。このように、新宿区を拠点にした東京都の社会復帰のサービス機関が集まっています。こうした施設を積極的に利用することによって、社会復帰は早い実現が可能になるでしょう。

 次に日常生活における面での援助では、いきなり一人暮らしができる人、それはそれで良いのですし、家族と一緒で上手くやっていけるなら、それもそれでいいです。しかし、一般的にはすぐに一人暮らしは難しいと考えたほうがいいでしょう。その場合、援護寮があります。これは私が勤務する中部総合精神保健福祉センターにもあります。一人暮らしの練習をするための一年半の訓練コースで、ほとんどアパートに近いような一人部屋でやっていくということです。それから共同住居といって、世話人付で何人かの病気を持った利用者が暮らす場所です。こういう住宅が徐々にできつつあります。

 それから、友達付き合いにしてもいきなり健常者の友達を作れといっても、そう簡単にはできませんね。人が集まる場所に行くと人数が多くて圧倒されて、雰囲気に馴染めないという方の場合に、まず病気をもった方同志が気楽に過ごせるような場として、例えばクラブハウスとかがあります。
 それからアメリカなどでは「ドロップインセンター」というような施設が各地にあって、気軽に寄っておしゃべりとかなんかできるような場というのが段々できてきています。
 それから、家で本人がすぐ何かできるようになってくれればいいのですが、それも簡単にはいきませんね。そんな場合、サービスの方が家に来てくれて、支援するという形の訪問看護があります。

 さらに平成14年から本格的に地域で展開する予定ですが、ホームヘルプとか、それから具合が悪くてもなかなか病院に行きたがらない、しかし病状的には治療を受けたほうがいい。そんなケースの場合、昨年の精神保健福祉法で改正され、施行されたものとして、場合によってはご家族の同意によって治療に繋げられるというような、あるいは必要な場合入院にも繋げられるということが法律で正当化されました。

 働かないということは経済的な困難に繋がるという面では、年金とか保健福祉手帳による色々なサービスがあります。例えば都営交通も昨年の秋から精神保健福祉手帳を使うと1000円で無料パスがもらえることになりました。このように、ちょっとづつ変化があるです。
 そうした総合的な相談や援助の窓口して、現状では保健所とか、精神保健センターなどが役割をもっています。今後は地域の中にもっと気軽に相談できる民間の方を応援する地域支援センターというものを作っていこうという動きもあります。現在、都内全体ではこのような施設は17カ所あります。

 また、一方皆さんも病気の方と一緒に暮らすという大変さがあります。例えば、皆さんの中にはこうした家族会に参加するだけでも、ご本人に何か言い訳しなければならないとか、どこに行くのか説明するのは結構勇気が必要だったりする方がおられるかもしれないわけです。逆に言うと、そういうご家族が集まって、孤立してしまう関係から連帯し合うということがかなり大事な力になっていくだろうと思います。

精神障害者への援助の動向
 スキゾフレニアなど精神障害を持つ人の援助の方向性の最近の動きを簡単にまとめますと、一つは治療の基本が少なくとも1980年代の後半位から、精神の病の人は閉じこめておいて、そこで何とか暮らしてもれえればいい、というところから、地域で共に暮らすという、社会復帰重視の方向に切り替わってきました。そこで、長期入院というような方向から、短期入院でなるべく地域での社会復帰活動というふうなことを重視する時代になってきたわけです。まだまだ充分とは言えませんが。

 それから治療のやり方についても、治療をするための基準みたいなものが、なるべく公表されて、それを患者さんやご家族が選ぶ時代となりつつあります。かつては具合が悪いから何処か駆け込んで「先生お願いします」という関係だったのが、これからは皆さんが良い治療を行っている病院はどこか、ということをよく見極めて、選ぶ時代に段々なりつつあるわけです。

 病院に限らず社会復帰のための施設などもそうなっていくだろうと思います。そうなると、治療における患者さんやご家族が治療の方針などに参加していくという、充分な説明を受けることは勿論のこと、選択という、インフォームド・コンセントなんていうような、新聞などで出たりしますが、そういうことが重視されていく時代になってきているんです。
 その中で。特に私が注目しているのは、薬の使い方というのが、本当にここ5年間くらいで大幅に変わりつつあって、昔はともかく、病状を抑えて、大人しくなってくれればいい、というそんな薬の使い方だった訳です。欧米ではもう70年代から社会復帰に役立つような、あまり副作用が出ない薬というのが使われて来たわけですが、日本の場合、その導入が非常に遅れてきたわけです。

 いまから5年前にリスペリドンという薬をようやく日本でも使えるようになって、今年にはオランザピンという薬とペロスピロンという薬が売り出される予定になっていますけれども、一つは副作用が少ないことと、それに意欲が出なくなるとか、身体がこわばるみたいな、そういうことが起こりにくい、そんな薬が中心となる時代になりつつあります。

 ですから、逆に皆さん方もご家族がどんな薬を飲んでいるのかっていうのをお知りになって、病院によっては薬局でそれを紙に書いて渡してくれますね。それは渡すことによって、その病院の利益になる時代になってきています。それを見て、薬の内容や副作用について情報を得て、主治医と相談できる、そんな時代になって来ているわけです。
 大体現状では薬だけでうまくいくというふうな大革命となる薬の効果は挙がっていませんで、それがまだまだ医学の発展の余地でもあるわけです。しかし、仮に病状が良くなってきても、先ほど申し上げたように、社会体験なしに社会生活能力は高まりませんから、やはり社会参加のための準備はそれなりに必要だろうと思います。

リハビリテーション、地域生活支援
 そこで、それより効果的に行うための技術の面での進歩という点で私が注目しているのは、一つは患者さんやご家族への教育的な治療や心理教育と呼ばれていますが、その治療を行ったりだとかです。中部センターでも4ヶ月に一度くらい日曜日に家族セミナーという、ご家族の方も参加できるような参加しやすい曜日に開催しています。

 それからSST(Social Skills Trainning・社会生活技能訓練)という人付き合いの仕方に特に焦点を当てて練習するような治療が精神科の病院で段々広まってきたりして、いろんなサービスを効率よく利用できるためのケアマネジメント・・・実はお年寄りの方々には介護保険の導入と共に、ケアマネジメントというのが行われるようになっているわけです。平成15年から精神障害の方もケアマネジメントを本格的に行うようになるだろうと思います。
 それから同時に、技術だけでなく、社会復帰のための資源がやはり増えてくれないと、退院はしたけれど、行き場がないということで、再発に至ってしまう場合もあります。ですから家でゴロゴロしていても、働きかけてくれる友達とか訪問のサービスとかがあれば、なんとか自らの力で解決できていくことができるようになります。

 再発は多くの場合、病気の悪化に加えて、人間関係に悩んで、それが原因ということもあります。ですから、社会資源とはそうしたきめ細かいサービスが今後必要になってくるのだと思います。
 その他、法律の面での社会参加の障壁、つまりバリアとなっていることが徐々に見直されて来て、皆さんはご存じかも知れませんが、一つは精神科の病気をもっているがために資格がとれなかったり、職業につけないということが結構多かったわけです。現在でもその傾向はあります。

 例えば、運転免許とか、ちょっと前まではお風呂やさんに入れないとか、パスポートも取れないとか、あるいは職業では医者や看護婦とかも病状によってはダメというのではなく、精神障害をもった人は全てダメとも読みとれるような、そんな法律の制度だったので、これはあまりにひどいというようなことと共に、そんなバリアを作ってしまうと、益々皆、この病気を隠したがってしまうということで、結局、バレなければいい、というようなことで、そうした資格なり職業につける状況にあります。しかし、仕事についても却って問題が起こったりして、これも欠格条項の見直しというのが今、全面的に行われています。

 それから精神障害をもった方の場合、なかなか日常生活の問題について適切に判断するのが自分だけでは難しい方が少なくないわけで、そのための判断についての協力ないし、本人に代わって判断することを受けられるサービスということで、精神障害者法律相談とか福祉サービスの利用支援事業などがあります。それは判断能力が難しい方のための支援サービスという、民法の中でも「成年後見制度」という形で位置づけられています。
 その他、「分裂病」という病名自体、非常に差別感が強い、そして「分裂」というと何かバラバラになってしまうような、あるいはもう元に戻らないというようなイメージで、病名として悪い、ということもあって、精神科の医者の学会全体でも、この病名を見直して差別感につながらない、そういう病名にしていこうという動きがあります。

 では、代わりに何にするんだ、というのがまだ答えが出ていないわけですが、そういうトレンドもあって、こちらの会報でもその辺は「スキゾフレニア」として表現しているようですね。
 きょうは最近の精神障害者の社会復帰とは、そして、そのための最近の精神医学の周辺ではどのような動きがあるのかについてお話をしました。

==講演はここで終わりました。この後の質疑応答は紙面の都合で割愛しました。会場へいらっしゃいませんか。あなたの悩みは私たち全ての悩みです。お互いに考えましょう==
                      テープ起こし=平井裕子(ボランティア)

編集後記

 こうして編集後記をまとめている間にも、テレビからは次ぎ次ぎと政治家や官僚たちの汚職、贈賄、怠慢のニュースが聞こえてくる。その金額も半端な額ではない。
 こうした半端でない金額の100の1、いや1千分の1でもいい。精神障害に限らず病気を背負いながらも、喘ぎ喘ぎ、冬空の下でバイトやパートで生計を立てている若者たちに与えてやりたいと思うことがある。しかし、若者たちはそんな汚れたお金など欲しくないというだろう。
 高学歴を持ち、派閥の波に乗り、盗人ごときに血税をむさぼる。そして追求されれば、知らぬ、存ぜぬと頬かむりで人前を通り過ぎる。こいつら人間か、と疑いたくなる。
 と、ついついこちらも感情の虫ゆえの発言。ついでに言えば、熊谷先生のお話にも出た病名改名問題について、医学会は何年考えれば答えが出せるのだろうか。小学生でも試験といえば制限時間内で行われているのに。
 世紀を超えても答えが出せぬ医学会。それは無責任か、怠慢なのか。もう学会には期待せず自主改名しかないだろう。「スキゾフレニア」!            嵜