保健所と保健センターを知る ~東京都新宿区の場合~

3月 勉強会より 講師 新宿区保健所予防課         河野課長
               新宿区保健所予防課保健指導係   木村保健婦
               西新宿保健センター保健サービス担当 桜庭保健婦

河野副所長

まず最初に、今日のきっかけとなったことを少しお話しいたします。新宿家族会会長より、ここ何年か家族会と保健所との関わりが少しばかり途切れていたということで、副会長さんを交えてこれからのかかわり方をどのようにいたしましょうか、という話し合いをさせていただきました。その際、会長さんから「実は保健所の組織が変わったのも知らなかった。家族会の勉強会にて講演者に保健所に相談なさるといいですよ、と言われてもどの保健所に相談すればいいのか分からない」と伺いましたので、それならば新宿区の保健所、および、保健センターという所の案内、特に精神障害者の方に対する業務やご利用方法などを知っていただくことから始めましょうということになりました。

 新宿区保健所は新宿区の衛生部に所属しているのですが、保健所の業務と衛生部の業務は、ほぼ同一とお考えください、新宿区衛生部は新宿区保健所・保健センター・区民健康センターの3つに分かれておりますが、本日は保健所・保健センターに関連するものですから、前者2つについてお話しいたします。
 衛生部のパンフレット(新宿区保健所・保健センター・区民健康センター ごあんない:新宿区衛生部発行)には「あなたの健康生活、私たちが支援します。それぞれの分野の専門職員が相談・助言をいたします。」とあり、これが保健所・保健センターの仕事の全体です。一応、健康に関してはどんなことでも相談に応じております。保健所・保健センターには様々な専門分野の人間(医者、保健婦、栄養士、歯科衛生士、環境監視員など)が各分野で、相談に応じたり、助言申し上げたりという活動を行っております。保健所・保健センターで連携しながら様々な業務を行っておりまして、保健所では専門的かつ広域的な業務を行い、保健センターでは住民に身近な密着したサービスを行なう所というかたちで役割分担しております。
 平成11年4月に衛生部の組織が改正されてまして、それまでは3つの保健所(新宿・四谷・牛込)と1つの相談所(落合保健相談所)体制であったのが、1つの保健所(新宿区保健所)と4つの保健センター(牛込、四谷、西新宿、落合保健センター)体制となっております。

 まず保健所の仕事をざっと説明いたします。新宿区の衛生部とほぼ一緒と考えていただいてよろしいかと思います。5つの課に分かれておりまして、保健計画課・試験検査課・予防課・健康推進課・衛生課となっております。最初に言い忘れましたが、保健所と保健センターの役割分担というのは大きく分けますと。保健所では専門的かつ広域的なことを行なって、保健センターでは住民に身近な密着したサービスを行なうところです。
 保健所は五つの課に分かれています。保健計画課というのは保健衛生の全般に関わる企画調査・情報収集であるとかいう保健所あるいは衛生部の企画をするところです。試験検査課は保健センターで行なう健康診査の臨床検査を行なっております。それ以外にも井戸水などの水の検査も行なっております。予防課は結核など感染症全般、それから精神保健福祉関係も一部やっております。精神保健福祉の中でも酒害相談や痴呆専門相談のように専門的で広域的なものは保健所で行なっております。健康推進課、成人の健康診査あるいはがん検診、予防摂取、母子と成人に関するもの、あと公害についても行なっております。衛生課は食品・環境に関連した、対物サービスを行なっています。
 保健センターについて、前述の衛生部のパンフレットに「健康相談は、担当地域の保健センターへ」とあるように、住民に身近なサービスは全部こちらで行なっております。基本的には感染症を除いては今までの保健所の業務はほぼ行っているとお考えください。
 「心の健康」については、精神保健福祉相談・精神障害者社会復帰援助(デイケア)・精神障害者手帳および通院医療費助成の申請の窓口となっております。その他にも幅広いサービスがありますし、保健婦は担当地域内の方の健康に関する相談に応じています。ご利用の際は、各保健センターにご連絡ください。

木村保健婦
●新宿区保健所予防課の精神保健福祉に関する業務について
 保健所では精神保健福祉に関して担当地区を持たず区全域を対象とするため、個別のケアなどは行なっておりません。実際に行なっているのは、酒害相談や昨年4月から始めた痴呆専門相談ということになります。各々の地域の保健センターでケアしている保健婦を経由して、こちらの専門相談に予約のうえご参加いただくというかたちになっております。
 精神保健福祉講演会、新宿全体の問題ですので、これも各保健センターでなく、保健所の予防課が企画運営しております。平成12年度も7回実施しており、スキゾフレニア(分裂病)については1回、その他、思春期の問題、夫婦・恋人間などのドメスティック・バイオレエンス、痴呆、うつ、など全体を網羅したかたちとなっております。
 あとは家族教室、このあたりが皆さんに一番近いところかと思いますが、去年10月に4日制で行ない、今年2月にフォロー教室というかたちでもう1回実施しております。スキゾフレニアと診断されてからの日にちが浅い方を対象に、家族の方がどのように対応すればよいのか?、スキゾフレニアというのはどういう病気なのか?、といったことなどを、医師など様々な方々に講演いただきました。
 こういった会を開催するときは、新宿区の広報や「わたしがわたしであるために、あなたがあなたであるために」というパンフレットにて周知しておりますので、ご覧頂いて、こ参加いただければと思います。

桜庭保健婦
●保健福祉センターの業務について
 精神保健福祉相談、これは各保健センターで月1~2回(牛込・西新宿は月2回、四谷・落合が月1回)、治療はできませんが精神科の先生にお願いして、ご本人さまやご家族の方などに対して病気についての様々な相談を予約制でお受けしております。区報にも日程は載っております。小一時間、精神科の先生とお話ができますので、よろしければご利用くださいませ。それぞれの保健センターで区内の近所の精神科の先生に来ていただいておりまして、牛込・四谷が慶応の精神科の先生、西新宿・落合が今のところ東京医大の先生をお願いしております。ただ、病院や各保健センターの事情もありまして、今年4月からは変わることになっております。
 それから、デイケアを各保健センターにて毎週一回実施しております。保健センターに通ってきていただいて、レクレーションしたり、スポーツしたりと過ごしていただいております。心の病気の方というのは、とじ篭りがちになってしまったり、自分の居場所がなくなったり、人との付き合いがうまくできなくなる方が多いので、こういうデイケアなどに来ていただいて、同じように心の病気をもった方々と一緒にいろんなことをすることで、ゆっくりできる場、自分自身を取り戻せる場にしていただければいいなということでやっております。その様な中で、再発の防止や社会復帰につながればと思っております。
 精神障害者保健福祉手帳と通院医療費の公費負担の受け付け窓口も、各保健センターになっております。申請にいらしたときに何かご相談でもありましたらお声をかけてください。家庭訪問もいたします。精神障害だけでなく、赤ちゃんからお年寄りの相談まで、地区担当の保健婦が行なっておりますので、不在であっても折り返しご連絡してこちらから相談にのりたいと考えておりますので、何かありましたらご連絡いただきたいと思います。また、精神障害だけでなく、赤ちゃんからお年寄りの相談まで応じております。
 以上、大ざっぱですが、私たちの説明を終わらせていただき、ご質問があればお受けいたしたいと思います。

●質疑応答
Q1 保健センターにて何でも相談に乗っていただけるというお話なのですが、例えば、去年新潟で女性が9年間監禁されたという事件について考えたとき、現地の機関で迅速な対応がなされないまま、実際に警察が来たときに事件が発覚したらしいのですが、私がいちばん残念というか気の毒に思ったのは、何故、もっと早いうちから適切なアドバイスなり行動なりを起こせなかったのかということについて、どうお考えですか?

答1 基本的に相談を受ける場合、強制力を行使する権限は保健所にはなく、あるとすれば警察ということになります。
 新潟の一件については、私も大変に気の毒なことであったと思いますが、保健センターが訪問できるのはご両親なり保護者の方から訪問してください、と頼まれた時だけであって、勝手に乗り込んで行くことはできないんですね、おそらく新潟でもお母様と話し合いはしてらっしゃったとは思うのですが、結果的には遅れてしまったということだと考えております。それに一度強制的に入院させますと本人が退院したあと、なんで入院させたんだという思いを大変強よく抱きます。できるだけ、ご本人の理解を得た上で入院していただくというのが望ましい。つまり、任意入院(精神保健福祉法22条)で、ご自分の意思で入院を決断するような方向に持っていくのが、ご家族なり保健所の基本姿勢です。それでも駄目な場合、入院が必要で本人は納得しないけど家族はなんとか入院させてほしい、とそういう場合には医療保護入院(精神保健福祉法33条)となりますが、ご家族の方が病院へ連れていくのが大変という問題があります。その次は、いよいよ暴れていて、周りに危害を及ぼしたり、自分の身を傷つけたりする。そういう場合には措置入院(精神保健福祉法29条)といって、警察官に来ていただいて(精神保健福祉法24条)、病院へ連れて行っていただくしかないということです。その場合は強制力があるのですが、保健所にはそのような強制力はまったくなくて、できることは、あくまでも普段からの相談ことです。その辺りの権限の違いは了解いただければと思います。

Q2-a 私の息子を病院へ連れて行こうと考えたとしても、親に言わせると、暴れているときは説得してもさらに暴れるだけで、血気盛んな青年の力ですから我々にも危害が及ぶかもしれない、主治医には身の危険を感じるときは110番するしかないと言われたんですが、では、警察というのは実際にどのような対応をしていただけるのでしょうか?

答2-a 警察官がご自宅に伺った時点で暴れている状態であれば、警察官通報ということで保健所に連絡がありまして、診察が必要でありそうならば、以降は東京都の役割として、精神保健指定医に診察を受けていただく手順になります。そこで、警察が精神保健指定医のいる専門病院までお連れすることになっております。そこで入院(措置入院)が必要と判断されることもあれば、ご自宅にもどっても大丈夫と判断されることもあります。
 ただ、実際には自傷・他害の怖れがあるという状態、刑事事件につながりかねない状態でないと警察官も介入できないということになりますので、そのときに言動などが問題かもしれないときに始めて精神鑑定していただくことになりますので、ご自宅に伺ったときに、落ち着いていたりしたらお連れしないという場合もあります。

Q2-b でも、警察の方は医師でもないのに、現場だけで病院へ行っていいのかどうか判断してしていいのですか?、私の息子の場合ですと、他人からは本当に病気か?と思われるくらい人前ではおとなしく、日常会話も普通にできますが、他人がいなくなると今までニコニコしてたのがガラっと変わってしまうので、警察官が見て「これは何でもない、大丈夫だ」と判断されて帰られたとしたらこちらも困ってしまいます。その辺は時間をかけて専門の先生に見ていただけるよう協力して欲しいと思います。また、連れて行っていただいたとしても、やはり医師の前でも納まっていて大丈夫だと言われてしまったりすると、やはり困ってしまうのですがノ

答2-b 医師についてですが、それは専門家ですので今までの経緯とかをお聞きしたり、ご本人を診察したりして総合的に判断しております。それに措置入院の場合は一人でなく二人の医師が判断するということになっております。

Q2-c これまでの経歴・経過の中で実際に説得されて入院するというケースもあるんですか?

答2-c 実際には、急性の陽性症状があった時に始めて関わった医師が判断できるかというと、まったくできません。その時始めて会った人の言葉を鵜呑みにはできません。ですから普段の時からある程度関わっていただきたいと思います。家族だけで抱えてて、何かあったときだけ連絡するというかたちにされますと、我々も非常にかかわりがもちにくい、ということになってしまいます。普段から連絡なり相談し合える関係を作って行くことがお互いに必要なのではないでしょうか?、私たちも万能ではありませんから、そういったことを考えると普段からの相談の積み重ねが大事なのだと思いますし、相談の関係ができていれば入院の説得も進めやすいということです。

 例えばデイケアに通っている方でしたら年中お話しているので、その方もこちらを信頼してくれているからこそ、具合の悪くなったときに判断ができるのであって、急性症状があるときは誰であっても的確な判断はできないですよね?、本当にそういうことが起こらないように、薬も続けて飲めるようにしておくことと、普段から相談できる人がいると思ってもらえる方がよいと思います。
 普段から保健所や病院のデイケアなどに通っていただいておりますと、その方自身にとっても行く場所が決まっているということで、非常に本人の中で心の支えになっている部分があるようです。逆に、家族の中だけの人間関係になってしまうと外からは何も分からなくなります。通い続けることで、ピアカウンセリング的に他の患者さんからご本人も様々なものを受け取れるようにもなりますし、そんま中で自分をコントロールしたり、治療を続けていくことをして行けるはずなので、そういう関わりを持てるのが一番いいかなと思います。
Q2-d 私の息子なのですが、作業所やデイケアなどに行っても人間関係やプログラムが気に入らないとかで長続きできないような状態です。保健センターに相談に行かせたいのですが、家に篭りがちなので、例えば家族などが代理で行ってもよろしいでしょうか?

答2-d 作業所は現在利用中の人だけを対象にするので、やめた後も訪問したりとかはしませんので、もし、地域の保健センターと関わりをもつことができれば、何かのときに相談できる人がいることになります。さらに、地域の作業所に通いながら時々保健センターに行くというかたちをとれれば、作業所はダメだったとしても、その後も相談を続けられるので関係が保てます。
 結局、あちこち行くものの、つまみ食い的に行って全部あれもヤダこれもヤダで、そことの関係が全部切れてしまうと、そのまま孤立してしまうことにもなりますので、やはり地域の資源を使ったり保健センターと相談しながら、作業所に通うとか、デイケアに通うとか、とそういうかたちがいいのかと思います。

 ご相談については、普段はまずご家族の方が見えられて、まず医療に繋げるにはどうしましょうかって相談もありますし、繋がってはいるけど今どこも行くとこなくてこのままだと状態悪くなりそう、とその方によって、保健所・保健センターの精神保健福祉相談を使おうかとか、主治医の先生と連絡とろうかとか、作業所も一緒に何ヵ所か回ろうか、その後のご不満もどうしましょうかなどと対応しております。ご本人も最初からというのはなかなか無理でしょうから、ご家族が相談にいらっしゃるので全然構いません。
 ただし、なるべく状態の悪くないとき相談に来ていただければと思います。悪い時にこられても先ほど申しましたようにどうにもならないことの方が多く、病気に支配されていて誰の言葉も入らなくなってるときはこちらもどうしようもなくなりますので、少し調子がいいとき、例えば退院してきたときに信頼関係があれば、調子が悪いときでも全てが悪いわけではないから、こちらも話聞けたりとか、お話もできたりします。どうしても波もありますし、いいなと思ったら悪くなったりその逆もありますし、長丁場になりますので、とにかく調子のいいときに長く繋がっていただけるといいとは思います。

Q3 下の子がデイケアにお世話になったことがあるのですが、時間が決まっているので行けない場合が多くなって休むことが多くなって、行っても時間を守れないでいると困ると言われて、だんだん遠のいているのですが、決めれられた時間に行けないというのが問題になってて、自分もだんだん行きにくくなって篭ってしまうのですが、たまに行っても受け入れてもらえるような対応はしていただけるのでしょうか?

答3 突然来て、勝手に来られて困るからダメだとは言わないと思います。例えば、時間までに行けない状態は他に同じ様な人もいると思うので、職員も了解しているとは思いますし、どうしようかという相談もしてると思います。こちらのほうからも「しばらく来てないけど、どうしていますか?」と働きかけはしていると思います。
 こちらとしても、ある程度の期間は、回数を減らすとか開始を遅らせるという風にご本人と調整しながらという相談はできますので、中断したからできないってことはないですから、まずは、ご相談いただきたいと思います。

Q4 入院のことで相談したいのですが、私の息子は去年うつ病ということで入院したのですが、入院するときの先生の方から医療保護入院と言われました。本人みずから入院したいと申し出たはずなのですが、自分の意思で言ったのに何で医療保護入院になるのかなという疑問があります。
 また、その際に保護者の認定などいろいろありまして、保護者がいないと自分では行動できないほど病気が重いのかと心配になりました。ちなみに、入院したきっかけは自殺未遂です。そうしたために、先生の方で状態は軽いけれどもっていう判断だったようなのですがノ

答4 一応、閉鎖病棟に入るためだったとも考えられるんですよね、もし実際に病院でそういうことがあってはいけないということがあったのかと思うんですよ。国立医療センターとかに入る時に開放病棟というのがありますね、ああゆうところに自分の意思で自由に入退院できるというようなことがあれば、別に任意入院という形になるかとは思いますが、心配があるから閉鎖病棟になったということなのかもしれませんね

Q5-a 兄がアルコール依存症で入院していて、兄嫁もスキゾフレニアと診断されて10年くらい前に二度くらい入退院してたことがありますが、本人は薬も飲んでいるので大丈夫だと自分で言ってるような状態です。
 ただ、兄の子どもたちから見ますと、兄嫁は家業をやってられないほどだということです。さらに、兄のアルコール依存症の離脱症状が出て誰も家事にタッチできない状態になっているらしいで、私もけっこう気にしているのですが、母親の身内も受け入れない、子どもも不登校みたいにならないかと心配しております。
 しかも、兄がお酒で暴れたと子どもから電話があったんですね、包丁持って刺されそうだというので110番して警察に来てもらったら5分前におとなしくなったらしくて、そのままにされてしまったのですが…

答5-a まずは、保健所に相談していただいて、そのお子さんたちをどうするかということで相談していただくといいのかとは思うのですが、お姉様の医療費助成について、保健所とか全然かかわっていないのですか?

Q5-b まったくありません。やっと私が目を届かせるって感じです。

答5-b 積極的に保健所などに何とか接触していただいて、子どもさんたちのことをどうするかといったことまでご相談いただいた方がよいと思います。保健所に相談があったならば、状態をみて児童相談所に連絡して、その中で子どもたちをどう保護したらいいかとか、あと生活面で福祉事務所に関係つけていくのも保健婦の仕事かなと思います。様々な資源に連絡調整する部分も含めて、いろいろご相談しながらやれると思います。できることできないこともあるかと思いますが、いずれにしてもまず保健所にご相談なさったほうがよろしいと思います。

Q6 スキゾフレニアと痴呆の違いみたいなことについてお話いただきたいのですが?

答6 スキゾフレニアの原因は複合的なもので、脳の中に弱い部分があり、環境等の影響で発生するもので遺伝ではないということです。ただ、愛情不足が関係しているかというとそれもちょっとわかりません。
 痴呆は本当に病気で、脳の細胞が壊れる病気です。むしろスキゾフレニアとかよりは原因・壊れる部分がハッキリしている。スキゾフレニアだと別に壊れている細胞はなく機能的な病気です。伝達物質の関係かもしれません。ですけど、痴呆というものは、一番大きなものとしてアルツハイマーがあり、脳の細胞が壊れております。あと脳血管疾患でも痴呆になりますが、それは脳の血管が詰まったり出血したりしてそこが壊れてくるからその部分の機能が壊れてくる。一番は記憶障害です。それから、高度な思考が衰えてくる、原因として脳が変成して壊れてくるというのがハッキリしている。ですけど、痴呆でも、記憶は忘れても、人の気持ちというのは残るんですよ、非常にキツいことを言われると悲しくなるし、そういう意味でその人と接する場合に痴呆だからわかんないではなくてそういう意味では愛情を持って接して上げないとノ、接してあげれば、痴呆は変わらないかもしれないけどお互いに心は落ち着く分けですよね。
 ご家族だけでお抱えになると心配するだけに関係が悪くなることもありますよね、ちょっと外に向けていただいてご相談いただいたり、あるいは、他の資源を利用していただけるといいのかなと思います。

前会長 私も昭和60年からこの会に来ていろいろとお話を伺っております。今日のお話を聞いて、普段から保健所なり保健センターなりに連絡つけておけば、何かのときに話が着きやすいと分かりました。
 実は今まではそう感じてはいなかったので提案なのですが、そのことを日頃から区報に気付きやすいように載せていただいて連絡していただいけますと都合がいいと考えました。私は区報は隅々まで読んでいるのですが、今まであまり気付きませんでした。今後ともよろしくお願いいたします。

会長 確かに、私もこの新宿家族会から、上部団体としては中部地域家族会連合会で活発な情報交換会があるのですが、大田区あたりですと非常に行政の取り組みが格段に進んでいて、区によって違いが如実にあります。世田谷区で、広報誌が精神の特集をずっと行っていたことがあって、それによって区民に対して偏見の問題も含めて非常に寄与したことがありました。一つ思ったのは、新宿区保健所の活動として、そのように、社会全体から偏見をなくしていくという方向で、あるいは教育という意味で力を出していただければということです。

河野課長 最後に、本日は、ご家族の方のご苦労なさっていることがよく分かりまして、そういう意味でこの会も意義がある会だなと思いました。保健所・保健センターのことを良く知っていただくということでお話させていただきましたが、とにかく、困ったときや急を要する段階など、関わりができてない段階での援助は難しいですので、今後、できるかぎり普段からのちょっとしたことでも保健所・保健センターをご利用いただいて、ご相談いただければと思います。
 それから、先ほどご指摘ありましたように、区報などを通じての一般区民へのPRということも大切なことだと思いますので、検討したいと思います。
 私たちも大変勉強になりました。本当にありがとうございました。

(文中、講師陣の言葉でスキゾフレニアとあるのは、分裂病の改名を願う新宿家族会の編集方針により書き換えて表現したものです。)
                             <テープ起こし/構成:菊池>

編集後記

今回、近くて遠くにあった保健所、保健センターについてお話を伺った。区民の健康生活を守り、病に侵された人たちへの支援を行う方々の努力が伝わってきた。
 それにしても、こうして保健所、保健センターが手を差し伸べてくれているのに、こと心の病となるとなかなか足が向けられないという現実がある。健康診断や予防接種では何の躊躇もなく行けるのに、なぜか心の病の問題では、すんなりいかない。
 以前、保健所が主催した心の病・家族教室へこの小紙「フレンズ」を届けたことがあった。しかし、会場には入れてもらえなかった。守秘義務があるから、ということだった。やはり、そこにはこの病が他人に知られたくないという陰の部分がある。その陰を作っている原因は何かといえば間違いなく「偏見」である。
 先日、ある新聞で実名を名乗った当事者の特集記事があった。その論議の的はご本人の就職への影響、マスコミの扱いの問題であった。しかし、これも陰の部分、つまり「偏見」に起因している。この問題は、病そのものケアと同時に、偏見への対応も行政関係者に強く望むものである。                         嵜