こころを病む兄弟を持って親に望むこと

9月家族会勉強会 講師:東京兄弟姉妹の会 代表 渡辺 悦雄さん
                                      K.S.さん
                                      M.O.さん

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◆渡辺さん 今日はお呼びいただいてありがとうございます。私は昨年の4月から前代表の後を引き継いで代表をしております渡辺と申します。まだ1年半くらいの経験ですが、きょうだい会にかかわって感じたことや、今日のテーマである「こころを病む兄弟を持って親に望むこと」、どれほどこれに即した内容になるかは分かりませんが、お話させていただきます。

【自己紹介】

 私は姉と二人姉弟です。姉の発病は18歳の時で病名は統合失調症です。年子ですので、姉が大変な時期は私の受験あるいは大学生活の時期にぶつかっていました。。
 精神障害者のきょうだいがいるという自覚を持つきっかけは、5年前、姉と両親が乗った車で父が起こした交通事故です。突如として降りかかった事故は、必然的に姉のことを今後どうしていくのか、どうかかわっていくのかという問題を投げかけたと思います。

【姉に対する家族のかかわり】

 発病時は通常どの家庭でも同じだと思いますが、それが精神病であることすら分からずにあたふたするものだと思います。私はそれほど姉の病気には当時かかわってきませんでしたが、姉は2階の屋根づたいに家を飛び出すことがよくありました。

 統合失調症にかかった家族は、精神病に対する社会全体の偏見もありますが、病気に対する認識は最初から当然のごとくないわけです。
 きょうだいの病気を医師や病院だけには任せられない現状があります。統合失調症とひとくちに言っても100人いれば100種類の症状があるわけです。薬漬けの体質は未だに変わっていませんし、病気への対応は結局主治医の裁量によって全てが決まってきます。

 社会資源の利用を通して社会で生きていくための訓練が必要です。私の姉がいる場所は社会資源といっても非常に貧弱です。そうであってもヘルパーさんも含めて色々な社会資源を利用することを通して外の空気に触れたり、社会的に生きる訓練はある程度できるので、その辺のことは今となっては遅いのですが、最初からそういった訓練がなされたり、家族やきょうだいがかかわっていくことの重要性を感じました。

【きょうだい会に入ってから】

 私は4年半前からきょうだい会に入って活動するようになりました。きょうだい会は親にはなれないというところが出発点にあります。親になれないというのは一緒には生活できないということです。 
 私の親は姉がこれ以上悪くならなければいいと思っています。あまり変わったことをやると姉が悪くなるのではないかと考えています。

【親のことや、社会に対して思うこと】

 やはり今の精神科医療、福祉について色々勉強していかないとなりません。主治医に任せることが必ずしも良くはないと思います。そういう面では当初から的確な医療、リハビリをやっていけばもっと良くなった面があるのではないかと思います。田舎の社会資源も非常に貧弱ですが、社会性を持つことがすごく大事ではないでしょうか。

◆K.S.さん

【わたしの兄弟は…】

 私のきょうだいは妹で、現在一人暮らしをしています。発病時の入院は2年に及びました。退院後は比較的安定しており、その後両親が亡くなるまで10年位は再発もなく仕事もやっておりました。親の庇護のもとで好きなように過ごせていたからでないかと思っています。ところが10年前に父が亡くなり、その後母が亡くなって、その3年後に再発しました。

【妹の現在の生活】

 日中はデイケアや地域生活支援センターに通っています。薬に関しては自分で何とかできるようです。ただ種類が多くて、これだけの量をこれから年を重ねていくのにかなり心配なので、何とかしたいと思っています。それから経済状態ですが、収入は障害年金と重度障害者福祉手当というのが月2,500円自治体から出ています。

【わたしたちの気持ち】

 本音を言うと自分の生活が一番大事です。もちろんきょうだいなので困ったときは病気の妹に限らずお互いサポートしたいという気持ちは持っていますが、普段は一線を画しておきたいというのが本心です。この病気を持つ人は十分な庇護が必要といわれますが、私は十分な庇護を与える力はありません。

◆M.O.さん

【現在の状況】

 当事者は3つ上の兄です。10年前に発病し、入院しました。退院後は元の職場に戻るも退職したり、生活訓練施設で暮らしたり、アルバイトをしたりしていましたが、現在は仕事はしていません。でも再発もなく落ち着いています。私も病気を意識してないけれど、ただ家でぶらぶらしているのはかっこ悪いなと思うくらいです。母はもともと積極的で、地元の家族会に所属し県精神障害者家族連合会の副会長をしています。

【兄が病気になって思うこと】

 それまでは、将来両親が年をとっても長男がいるから面倒を見てもらえるだろうし、自分も何かあったら頼ろうという甘えた気持ちがあったんですが、兄が発病してから、これは甘えられないと思いました。両親も兄の方に家も残すとか色々兄に集中するでしょうし、もともと当てにしていたわけではないけれども、当てにしちゃいけないという気持ちが芽生えてきました。

【両親に対して希望すること】

 今ほとんど満足しているに近い感じです。母が家族会のことを一生懸命勉強して先のことを考えてくれているし、父も理解してくれています。母もやっぱり一緒に住んでいるといくら勉強していて、こういうふうに言っちゃいけないと分かっていても頭に来て兄に怒りをぶつける時もあるようです。そういう時、父はまあまあと抑えたり、クッションになってくれています。割といい関係ができていると思っています。

【これから…】

 今後ですが、母は勉強していて今後のことを考えてくれていて、経済的なことも、多分障害年金だけでは生活できないけれども両親の建てた家がありますし、それは兄の方に残すというのは暗黙の了解になっています。母の構想ではそれをグループホームにしたいと。そうすれば他の方も来て家賃収入も入るし、それで何とか生活していけるのではないかと思います。

(途中ですがここで終わります)

平成17年4月からの新宿家族会ホームページ「勉強会」の表示形式について

 新宿家族会では4月から「勉強会」ホームページの表示について、概略掲載とすることになりました。そして、「フレンズ」(新宿家族会会報紙)ではいままで同様、あるいはより内容を充実させて発行することにしました。これまで同様に勉強会抄録をお読みくださる方は、賛助会員になっていただけますと「フレンズ」紙面版が送られますので、そちらでお読みできます。
どうぞ、この機会に是非賛助会員になっていただけますよう、お願い申し上げます。

賛助会員になる方法

新宿家族会へのお誘い 
 新宿家族会では毎月第2土曜日、12時半から新宿区立障害者福祉センターに集まって、お互いの情報交換や、外部からの情報交換を行い、2時からは勉強会で講師の先生をお招きして家族が精神障害の医学的知識や社会福祉制度を学び、患者さんの将来に向けて学習しています。
入会方法 

編集後記

▼9月の勉強会では3人のきょうだいの方からお話を伺うことができた。当初のテーマは「きょうだいが親に望むこと」と設定した。しかし、3人の方からこのテーマに沿ったお話はあまりなかった。むしろ親の努力に感謝するといった感じである。

 それぞれ事情が異なるが、最後のまとめでは皆同じに当事者の自立を願っている。それは、社会、あるいは国の施策に対する要望になっている。

 奇しくも国は「障害者自立支援法案」なる美名の法律を打ち出した。国会解散で一時頓挫したが再び成立されるだろうと関係者は見ている。様々な会場で説明会、講習会が行われている。しかし、誰もその説明を次の人に説明できない。

 おぼろげながら判るのは精神障害者の障害が他の二障害と同様の扱いになった、というのがプラス面として伝えられるが、これまでの無料であった医療費負担が一割負担となるほか、介護等のケアも多額の費用負担が当事者に課せられる。

 人がこの世に生まれ、何の過ちを犯したわけでもないのに、障害という過酷な負担を強いられるのが、精神障害者問題である。そして、その負担を当事者と共に引き受けているのが親ときょうだいである。それを人類全体の問題として捉えられるにはあと何年かかるのか。