今日からの睡眠に役立つ快眠法

新宿区後援・5月新宿フレンズ講演会
講師 杏林大学医学部精神神経科学教室・精神科医 高江洲義和先生

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【どうして睡眠が必要なのか】
 我々人間にとって睡眠がどうして大事なのか、健康と何が関係あるのかをお話します。
まず、私たちの睡眠時間は、加齢とともにどう変わっていくのでしょうか。生後すぐは睡眠時間が非常に長く、1日の3分の2の16時間ぐらい寝ています。だんだん年を重ねるごとに睡眠時間が減っていく中で、中途覚醒という途中で起きてしまう時間はどんどん増えます。つまり人間は、年齢を重ねると生理的に睡眠が浅くなって、不眠症状が出現しやすいのです。
 そもそも我々人間はどうして睡眠が必要なのか、実は未だに解明されてはいませんが、大体の予測はついています。
疲労回復:ぐっすり眠るとその日の疲れが取れて疲労回復になることは、皆さんも実感として分かるでしょう。
記憶の定着:例えば眠れない状態が続くと、頭がボーッとして物覚えが鈍くなったりするのは、眠れない経験をした人には分かるかも知れません。
子供の成長:睡眠外来では最近、子供達の睡眠不足が大問題になっています。夜中にスマホを見ていたり、塾に行ったりで、子供たちは「眠い」と言うのですが、お母さんに「睡眠時間が短いからもっと寝かせた方がいいですよ」と話しても、「受験で忙しいので無理です」と言います。

【眠れない時の問題】
 では、眠れないと体の中でどういうことが起こるのか。例えば、睡眠不足とか睡眠覚醒のリズムがずれて昼夜逆転になった場合、体でホルモン分泌のバランスが狂ってきます。レプチンという食欲を抑制するホルモンの分泌が減って、グレリンという食欲を増すホルモンの分泌が増え、食欲が出て肥満になりやすく、その結果、糖尿病や高血圧になりやすいのです。また、自律神経機能が悪化したり、体を活発にする神経が元気になり過ぎて血圧が上がりやすくなったり、コルチゾールというストレスホルモンの分泌が増えたりすることによって糖尿病や抑うつ的になりやすくなります。
 こういった生活習慣病が合併して、それによって例えば抑うつ症状、気持ちの落ち込みが出てくると、さらに夜眠れなくなってしまい、不眠と生活習慣病、うつ病などの精神疾患が悪循環を生んで、最終的には心筋梗塞や脳梗塞など命に関わるような重篤な問題を引き起こして寿命が短くなると言われています。従って生活習慣とともに、睡眠を整えることはとても大事です。

【睡眠薬の種類と問題点】
 では、どうやって睡眠を取ればよいのか。パッと思いつくのは睡眠薬でしょう。睡眠薬は20種類くらいあり、短時間型は寝つきが悪い人に、作用の時間が少し長い薬は、途中で起きてしまう人や朝方目が覚めやすい人に使います。
 これら睡眠薬は全部処方箋でもらう薬です。薬局で買える薬としては、ドリエルなどが代表的ですがあまり効果がなく、耐性ができたり、日中眠気を起こしやすくなるので、実は危険です。病院の処方薬のほうが強そうで怖くて、薬局の薬の方が安全だと思うかもしれませんが、睡眠に対する薬に関してはいろんな問題を持っています。眠れない時は安易に薬局で薬を買ったりしないほうが良いかもしれませ。最も良くないのはお酒を飲んで寝ることですが、そんなことをせずに、専門家にかかるほうが安全です。
 しかし、薬には即効性があって確かに睡眠効果としては非常に優れているのですが、睡眠薬を使うことの問題点もたくさん指摘されています。
◆眠気の問題:睡眠薬の副作用は、まず1つは翌日に眠気が残ってしまうことです。また、脳をリラックスさせる作用がありますが、体の筋肉もリラックスさせてしまうので転びやすくなります。特に高齢者は翌日の運動機能の低下や集中力の低下が、結果的に転倒事故や交通事故を起こしやすくします。
◆認知症との関係:「睡眠薬を飲み続けたら認知症になるんですか」という質問は外来で非常に多く聞かれます。薬で脳がずっとボーッとして認知症になりやすいのか、実は結論は出ていません。睡眠薬を飲んだから認知症になったのか、認知症になりかけた時に不安や不眠症状が出て、睡眠薬を処方されるから、見かけ上睡眠薬を飲んでいることが認知症の発症に関わっているように見えるのか、データを調整してもなかなか見分けることはできません。
睡眠薬と再入院:私は3年ほど前に、大学病院に統合失調症で入院した200人くらいの方の退院後の2年間、再入院とベンゾジアゼピン系の睡眠薬との関係を中心に調べました。睡眠薬を飲んでいないかもしくは低用量群と、睡眠薬を2種類以上飲んでいる高容量群を比較すると、高容量群の人たちは再入院が6.5倍という結果がこの研究から分かりました。
◆ベンゾジアゼピン系受容体作動薬と依存の問題:依存には精神的な依存と身体的な依存があり、精神的な依存は違法薬物やアルコール、つまりその物質を欲してしまうのを精神的な依存と言います。
 一方でベンゾジアゼピン受容体作動薬は、不安だからとデパスなどの抗不安薬を沢山飲むといった依存はありますが、精神的な依存は少なく、それより問題になるのは身体的な依存です。長く飲み続けると体に薬が馴染みすぎて、止めた時に離脱症状が出て元よりひどく不眠になることが起きてしまいます。
◆新薬の有効性:では、新薬はどれくらい有効で安全なのか。ロゼレムは、メラトニン受容体作動薬つまり体内時計を整えます。ベルソムラは、脳内のオレキシンという睡眠と覚醒、寝たり起きたりのスイッチ ON-OFF を入れ替えると言われています。ともにベンゾジアゼピン受容体作動薬の持っている副作用がほとんどない、安全性が高いと言われています。
◆睡眠薬以外の薬:では、睡眠薬以外に寝つきを良くする作用がある薬はどうでしょうか。例えば抗ヒスタミン薬は花粉症の薬にも使われ、結構よく眠れたり日中眠くなったりします。市販の睡眠薬のドリエルがこれですが、すぐ効かなくなってしまうし翌日に眠気が出やすいので良くありません。

【体内時計と不眠の関係】
 いったい、眠れない時はどうしたら良いのか。睡眠の問題は起きれば深刻で、誰もが睡眠薬ゼロというのは難しく、また、その必要はないと思っています。
 1つは量です。私の外来には何百人かの患者がいますが、睡眠薬を2種類以上処方する必要はほとんどありません。私は睡眠薬を1種類飲めば、あとはこれから説明する快眠法をうまく使えば、きちんと眠れるようになると思って指導しています。
 快眠法は、そもそも眠れないイコール不眠症ではないというところから入る必要があります。眠れない=不眠症=睡眠薬となってしまうことが実は一番の問題です。

その前に、眠れない病気についてお話しましょう。
◆睡眠時無呼吸症候群:夜中に仰向けになった時に、舌で喉の奥の空気の通り道を押しつぶしてしまって、呼吸が止まってしまいます。実はうつ病や統合失調症の40%ぐらいの方がこの病気を持っているのではないかと言われています。いろんな要因がありますが、薬剤の影響や生活習慣が乱れて体重が増えると空気の通り道が狭くなり、睡眠時無呼吸症候群になりやすいと言われています。
◆むずむず脚症候群:寝ようとしたら足がムズムズしてきて眠れないという病気で、抗精神病薬の副作用のアカシジアとは少し違うと言われています。抗うつ薬や抗精神病薬で20%くらいの人にこの症状が出てくるものの、あまり症状が重くないからと放置され、本当は足がムズムズして眠れないのに不眠症の睡眠薬を出されてなかなか良くならないということがあります。眠れないのは他にも色んな原因がありますが、これらの症状は睡眠薬とは別の対処が必要です。
 ここからは病気というより、いわゆる睡眠障害の問題で、これらは「快眠法」の対象になります。
◆概日リズム睡眠覚醒障害:簡単に言うと昼夜逆転、つまり日中太陽が出ている時は沢山寝てしまうのに、夜になると目が冴えて眠れなくなる。これは不眠の問題に関係はしていますが、体内時計が乱れることによって生じた睡眠スケジュールの異常というのが基本的な考え方です。   
 その中で一番多いのは、睡眠相後退型で、簡単に言うと夜更かし・朝寝坊型、徐々に体内時計が後ろ側にずれてしまって昼夜逆転型になったような感じです。朝4時や5時になってやっと眠れて、朝すぎて昼12時ぐらいになってやっと起きることが出来る。この状態の睡眠相後退型は、もっとも多い概日リズム睡眠覚醒障害です。 
 我々の体内時計は、太陽の光によって調整されているので、光を感じることができない全盲の人は覚醒障害になりやすく、また、うつ病や双極性障害、統合失調症等の精神疾患を持っている人たちもなりやすいと言われています。さらにひどくなると不規則睡眠覚醒型と言って、寝る時間と起きる時間がてんでバラバラになり、いつ寝る時間でいつが起きる時間かわからない状態になります。体内時計が完全に狂ってまったく作動しないような状態で、こうなってしまうと結構大変です。
 体内時計は、地球上で生きるほとんどの生き物が持っていて、太陽と同調するためのシステムで、太陽が昇ってきたら起きるようにできていて、太陽が沈むことによって眠る。外敵から身を守るために暗い夜は隠れて寝るという、昔から人間やほとんどの地球上の動物が持っている機能と言われています。従って、キーになるのは光です。
 目から光を感じること、特に朝や午前中に太陽の強い光を浴びることにより、体内時計の睡眠物質であるメラトニンが分泌されます。朝に強い光を浴びて起きると、夜はぐっすり眠れるようになります。
 しかし、人間は人工の光を作り出し、日が沈み太陽がなくなった後に光を感じると、体が勘違いしてまだ昼だと思って眠れなくなってしまいます。ポイントとしては朝、光を浴びると眠れる、夜に光を浴びると眠れない。このことは皆さん気づいていると思いますが、なかなか実生活でどこまでできるかとなると難しいでしょう。

【おすすめの快眠法】
 ここから、私の勧める快眠法を具体的に詳しく説明します。それには、光をうまく利用することです。
1)起きて朝の光を浴びる:「眠れなくて困っています。寝かせてほしい」と患者さんは訴えますが、「まず起きましょう!」が一番大事だという話をします。起きる時間を一定にして、午前中のうちに外に出て光を浴びます。昼夜逆転している人にいきなり朝の6時に起きるのは無理です。「では、まず毎日11時に起きるようにしましょう」と時間を決めて、「とにかく1日、30分でも外の光を浴びます。這いつくばってでも外に出てください。」と説明をして、外に出てもらいます。
2)夕方以降の蛍光灯は禁止:非常に大事なのが、夕方以降の光を徹底的に排除することで、私の睡眠障害の患者さんのほとんどは蛍光灯禁止です。よく考えたら実は蛍光灯は家ではあまりいらないのです。必要なのはお母さんが料理を作る時ぐらいで、あとは食事も薄暗い光でもできますし、テレビも蛍光灯が点いてなくても観ることができます。実際に意外とできる事が多く、しかもやってみたらやはり良くなる事が多かったので、これはかなり徹底して奨めています。
3)規則正しい生活習慣:もう1つ大事なのが、毎朝同じ時刻に起き、夜も定時に寝ることです。「今日は頑張って朝9時に起きました。明日は頑張らなくて午後1時になりました」となると、体内時計がいつ寝ていつ起きるか覚えてくれません。体内時計に正しい時間を覚えさせるために、寝る時間と起きる時間を一定にし、食事も三食きちんと摂ります。患者には「あなたには大晦日もお正月もありません。年越しをする前に寝ましょう」と話します。
4)温度を上手に利用する:深部体温、体の芯の体温と体内時計は深く関係していて、入浴や激しい運動をした後は体温が上がった状態で、その時は眠気が来にくいのです。ですから、就寝2~3時間前に入浴でリラックスし、その体温が下がってくるのが2、3時間後なので、そのタイミングでちょうど良い眠気が来ます。

【ベッドの中で頑張らない】
 最近、非常に注目されている認知行動療法は、睡眠薬より良い治療と言われています。アメリカやヨーロッパの睡眠ガイドラインを見ると、「睡眠薬ではなくて、認知行動療法をやりましょう」と書いてあります。日本でまだ難しいのは、これができる施設が非常に限られているからです。私が働いている「睡眠総合ケアクリニック代々木」でやっているので、もし興味があればそちらに来ていただいても良いと思います。
◆睡眠スケジュール法:睡眠の認知行動療法の核になる部分の治療です。眠れなくなった方が陥りやすい悪循環の行動パターンがあって、例えばもともと11時に寝ていたが眠れなくなった。すると「眠れないからもっと早くベッドに入ろう」と、寝る時間を早めてしまう行動を取りがちです。しかし、体内時計は決まっているので、早くベッドに入ってもなかなか眠れない。やっと眠れても何度も目が覚めて、朝6時に起きた時、「あ~眠れなかったから、もっといっぱいベッドにいよう」と、結果的に非常に長い時間をベッドの上で過ごしてしまうという行動に陥ります。
◆寝スマホ:その時、シビアな問題になるのがスマホです。「寝スマホ」というのは、私が考えた言葉なのですが、寝ている状態でベッドの中でスマホを開くことです。寝床に置いて、メールが来る度に見てしまう。1回見るとコーヒーを3杯飲むくらい目が覚めるらしいのです。もちろん何も困ってない人は良いのですが、「眠れなくて困っている人や日中眠い人は、ベッドの中にスマホは持っていかず、音を切ってリビングに置きましょう」という指導をします。
 こういった日常生活でできる快眠法を実行して良くなってきたときに、もともと睡眠薬を飲んでいた人に、「できれば睡眠薬を減らしていきましょう」と言います。ただ難しいのが依存の問題で、睡眠薬に馴染み過ぎているので、急に止めると離脱症状が起きてしまいます。主治医と相談しながら、少しずつ減らしていくのが良いと言われています。

【睡眠を整え、リカバリー】
 睡眠時間が細切れになっている、双極性障害の患者さんの睡眠時間を整えた具体的な指導例を紹介しましょう。
 まず「この睡眠の記録をつけて来てください。眠れなくて日中眠いのは分かったので、睡眠の状態を細かく見るために記録して下さい」と伝えました。睡眠の状態は簡単な問診では分かりませんが、ちゃんと記録した睡眠表ではバラバラなことが一目瞭然でした。
 次に「なるべく11時に寝て6時に起きるリズムに整えましょう。まずは毎週1回、朝9時に私の外来に来てください」と言いました。月に1回だったのを1週間に1回朝早く起きて来てもらうのです。それから半年ぐらいで何故整ったか。毎週毎週スパルタのように9時に来てもらったことで起きられるようになったのですね。
 朝起きて光を浴び、夜は光を浴びないことも大事ですが、それだけだとなかなか難しい患者さんは、体内時計がずれているから起きられないという問題に加えて、起きる理由がないから起きられないという問題があります。つまり専門用語でいうと社会的同調因子、社会的な刺激がない。この方の場合、具体的には週1回の通院にプラスして、週2回のデイケアから始めて、起きる理由を作っていきました。
 患者が病気と付き合っていく上で大事なことは、その人がその人らしく生きていくことです。精神疾患からの回復、リカバリーという言葉が使われていますが、引きこもりで勝手に寝て起きていた人が、3年かかりましたがその後、障害者雇用のフルタイムで働けるようになりました。ちゃんと社会との関わりを持てるようになったのです。
 私は、このことがやはり一番良かったと思っています。睡眠を整える方法の1つで、結果的にこの患者がその人らしく生活できるようになったことをとても嬉しく思っています。やっと病気から快復したのだなと実感して、今思い出しても胸が詰まります。
 ちなみに薬については、最初は大量に飲んでいましたが、最後はリーマスと睡眠薬1錠の2種類まで減ってここまで整いました。薬は減らして、薬以外の快眠法をやることで回復したという事実を皆さんに知ってもらいたいと紹介しました。
 睡眠を含めた生活習慣はとても大事です。精神疾患はその生活リズムを整えるのが難しい病気ですが、回復には大切なことだと思います。
 睡眠をとるために大事なことは、夜どうやって寝ようかを頑張るのではなくて、そのために日中どうやって過ごすかです。しっかり朝起きて外に出て7、8000歩くらい歩き、夜は蛍光灯やPCやスマホなどの光を浴びない。すると自ずと良い睡眠になると思うので、皆さんやご家族が実践して、今日からの快眠に役立てていただければと願います。
                                             ~了~

平成17年4月からの新宿家族会ホームページ「勉強会」の表示形式について

 新宿家族会では4月から「勉強会」ホームページの表示について、概略掲載とすることになりました。そして、「フレンズ」(新宿家族会会報紙)ではいままで同様、あるいはより内容を充実させて発行することにしました。これまで同様に勉強会抄録をお読みくださる方は、賛助会員になっていただけますと「フレンズ」紙面版が送られますので、そちらでお読みできます。
どうぞ、この機会に是非賛助会員になっていただけますよう、お願い申し上げます。

賛助会員になる方法    

新宿家族会へのお誘い 
 新宿家族会では毎月第2土曜日、12時半から新宿区立障害者福祉センターに集まって、お互いの情報交換や、外部からの情報交換を行い、2時からは勉強会で講師の先生をお招きして家族が精神障害の医学的知識や社会福祉制度を学び、患者さんの将来に向けて学習しています。
入会方法 

編集後記

 同じような事件が相次いでいる。高齢者の交通事故と無差別殺人事件、そして父親の息子殺傷事件だ。後者の事件は我々としては無視できない事件と言える。それは、TV評論家の口から統失という言葉が聞かれるからである。もしそうだとしたら。父親の苦労は如何ばかりか。しかし、そんな時なんで家族会に相談に来ないのか、と言いたい。残念至極である。

 さて、今月号は「眠り」について杏林大学医学部の高江洲先生にお話を伺った。眠りの問題はご本人の問題だけでなく、我々親にもためになる話である。私の眠りはTVの前で気持ちよく眠ることができるが、床に入るとカーッと目が冴えて、2時、3時頃までラジオを聞くと言うタイプである。明日仕事だと言うのに、3時頃まで眠れないと焦りが出てきて、余計に眠れない。これは概日リズム睡眠の一種なのか。

 高江洲先生の眠りに関する知識、研究の深さには少々驚いた。特に睡眠薬について、今日本で発売されている薬は20種類位あるという。しかし、先生はこんなにはいらないと思うと述べている。概して睡眠薬否定派だと感じたが、間違っていたらご容赦を。そして、薬で治すより、日中の活動を重要視している。

 ある患者さんに毎週一回、朝9時に来院することを伝えた。加えてデイケアにも通った。2年位して彼の体内時計が修正され、夜寝て、朝起きると言う生活リズムが整えられたという。それは、先生の治療法で、社会的刺激を彼に与えたからだと説明を進める。

 彼とは別れることになったが、今思い出しても胸が詰まるという。医療冥利に尽きる。