発達障害の理解と対応、精神疾患との関連―青年期、成人臨床の立場から―

新宿区後援・6月新宿フレンズ講演会
講師 大泉病院診療部長・精神科医 木崎英介先生

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 発達障害の診断基準は小さい時からの時間経過で追っていきます。ですから「発達障害かもしれない」と大人になって受診された場合、見立ての形や、会話の仕方、話の持って行き方などで診るのですが診断は難しいと思います。
 発達の障害は大きく2つに分けられます。1つは発達そのものが滞るパターンで全体的な能力に制限があり、知能指数(IQ)で診断を行う知的障害です。
もう1つは発達のパターンが通常とは異なる(定型発達にない、と表現します)発達障害で、個人の能力や発達は元々ばらつきがありますが、パターンが典型的ではなく年齢に比して差が大きいものです。これは個人の特性ですが、それが原因で生活上の困難を伴う場合を障害と考えます。
 発達障害は、自閉症スペクトラム症(ASD:Autism Spectrum Disorder)、注意欠陥多動性障害(ADHD:Attention-Deficit Hyperactivity Disorder)、学習障害(LD:Learning Disorder)と分けられています。自閉症スペクトラム症は、以前にはおおまかに広汎性発達障害と称され、大きく分けて自閉症とアスペルガー障害と言いましたが、今日的にはまとめて自閉症スペクトラム症という診断をつけることが多くなりました。

【自閉症スペクトラムの3つ組】
 自閉症スペクトラムには、ある特定のパターンの偏りがあり、それを「障害の3つ組」としたのがローナ・ウィング(1928-2014)の概念です。

社会的相互交渉の障害:適当な人との距離感がつかめず、喜怒哀楽を人と分かち合うのが苦手などの困難を抱えており、その結果、人との関係が保てない、自分から求めに行かない、あるいは求め方が性急だったりして「このタイミングでここまで寄ってくるの?」といった感じを与えたりします。

コミュニケーションの質的異常:独特の言葉の使い方、例えば杓子定規な言葉、その場にそぐわない丁寧言葉を急に使う、自閉症の傾向が強い場合に同じ言葉をずっと繰り返す(エコラリア)、独り言が多くて統合失調症の独語のようにみえることもあり、独特のイントネーションや、声量のコントロールがうまくいかない人もいます。

想像力の障害と反復した常同的動作:いわゆるごっこ遊びや、創造的な遊びが苦手とされています。その人独特の遊びはあるが、周りから見て理解し難いのです。ある感覚に固執しやすい。例えば冷たいものを見ると触らずにはいられないなどです。  

感覚の独特さ:物凄く敏感だったりそうかと思うと妙に鈍感であったりします。布団を何日も使い続けて臭いがついても変化が嫌で変えない、人の香水が変わるとパニックになるなど普通の人なら気にしないことが気になる人もいます。

記憶が色褪せない:ふつう、昨日のことと10年前のことは思い出してもニュアンスが違い、古い記憶は長年の経験で色々と修飾され、セピア色という言葉もあるように生々しさは薄れていきます。ところが彼らは、10年前も昨日のこともほとんど同じようにリアルに思い出されるので、嫌な記憶もなかなか忘れられず、フラッシュバックを来たしたり、トラウマという形で残りやすいとされています。

【発達障害の捉え方の歴史】
 発達障害といわれる一連の症状が報告されたのは、1943年のレオ・カナー(1894-1981)の早期幼児自閉症という概念が初めです。「1人を好んで他の人を避ける、視線が合わない、呼んでも無視をする、言葉を話しても独り言、いつもと同じでないとパニックを起こす、手をヒラヒラなどの奇妙な独特な動き、知的障害を伴う」。いわゆる自閉症を考えた時に一番イメージしやすい概念かもしれません。これをカナー型の自閉症といいます。
 自閉という言葉は、カナーで初めて出現するのではなく、統合失調症の症状として扱われてきました。精神科医オイゲン・ブロイラー(1857-1939)が唱えた統合失調症の症状に、連合弛緩(思考がまとまらない)、両価性(相対する感情の動き)、情動障害(感情の平板化)、自閉の4つを挙げています。カナーが自閉症と名付けた中には、子供の時期に始まる統合失調症も入っていたかもしれない。この場合の自閉は引きこもっている状態、陰性症状の酷い時期のイメージで使われていたのだろうと思います。
 次にハンス・アスペルガー(1906-1980)が、1944年に自閉性精神病質という名前で報告しています。
 「彼らには常同行動(いつも決まった行動)が見られ、ある程度決まった日常生活のルーチンを変化させることを嫌がり、鉄道の時刻表や惑星の動きとか特別なものに興味を示して夢中になる。機械的な記憶に優れているものの抽象的な概念の把握が苦手である。奇妙な身体的な動きをする傾向があり、彼らの多くが複雑な動作での協応が難しく、統一した動作にならずにぎこちない動きをする」。カナー型とは違って、もう少し人との関係を持ち、いろんな所に力を発揮できるために自閉症の高機能型ともされました。この時代の精神病質という言葉にはパーソナリティ障害も含まれており、今でいうスキゾイドパーソナリティも含んでいたようです。
 当初は色々な概念が入り乱れていた発達障害を、現在の自閉症スペクトラムの概念として明確にしたのが「障害の3つ組」とよばれているもので、これが今の診断基準に繋がっています。
 さらに最近、DSM-5で新しく入ってきた基準では、感覚の刺激に敏感・鈍感であることや、体が固まって動かなくなるカタトニアも自閉症スペクトラムの診断基準に入りました。
スペクトラムとは、あいまいな境界を持ちながら連続している濃淡です。これを診断に当てはめると、3つ組の特徴の、色合いの濃い人をカナー型の自閉症、やや薄くなるとアスペルガー症候群、薄くからほとんどない場合は定型発達となります。
 先ほど挙げた例で、「自分もその傾向がある」と思うかもしれませんが、「人間はみな自閉症スペクトラムに含まれる」という医師もいます。

【その他の発達障害】
注意欠陥多動性障害(ADHD):症状は不注意と多動および衝動性です。注意力が維持できず作業がうまくいかない、順序立てるのも容易ではない、物忘れや落し物が多い、そわそわ落ち着かない、喋り過ぎる、場にそぐわぬ突然の動き、待てない、これだけ聞くと該当しそうな人も多いのですが、これもスペクトラム、濃淡です。多動は小さい子供に多いと言われます。
 大人になると不注意だけが残ったり、物忘れがあったり、その年齢に比して注意力や行動を維持し続けたり調整することが難しく、何かを一生懸命片付けていたが、気がついたら別のことに移っていて、その修正が利かなかったりと、社会生活に困難を及ぼします。
自閉症スペクトラム症に対する薬物療法として確立しているのは、ADHDだけです。ADHDの症状があれば、診断をつけて薬を使う対処をすることで症状が軽くなり、他の症状も良くなる場合もあるので診断は大事です。

学習障害(LD):他は良く出来るのに文字の読み書きがなぜか苦手、あるいは計算能力、数の感覚だけが分からないという偏りがある場合です。
 LDは以前、自閉症スペクトラムと重複することはないと言われていましたが、今は重複する可能性があるということになっています。例えば、定義上はLDと知的障害は被らないと言いますがカナー型自閉症の傾向が強いとか、ADHDと自閉症スペクトラム、知的障害とADHDなどの重なりは現場にいるとしばしば認められます。

【診断が難しい大人の発達障害】
 発達障害や自閉症スペクトラムという言葉が、一般社会にも浸透したため、かなり上の年齢になって「自分もそうではないか」と受診にくる人が非常に増えています。症状があっても無事に生活できていれば良いわけですが、実際に社会に出て本人や周りが困難を感じるために精神科を受診するわけです。
 どの病気もそうですが、診断をどうつけるかが治療すべてにかかってきます。しかし、大人の時点で自閉症スペクトラムを診断するのは難しいのです。
 子供の頃から診ていれば、生まれつきの障害ですから何らかの症状があるわけで、その特徴も分かりやすいのです。しかし大人になって受診した場合は、そこに成長、発達という修飾が入ります。このため、元々どんな人だったのかが診断には重要で、幼少期の情報を得るために医師は成育歴を聞きます。首の座りや発語、性格、遊び方、小さい時からの得意不得意、苦手なこと、好きなこと、ずっとやり続けていること、幼少時の体験、また家族や周辺の第三者の客観的評価、通信簿や保育手帳なども参考にします。
 自閉症スペクトラムの診断基準はその人を外から判断する項目ばかりなのですが、その人の内面、主観も重要だと私は思います。当事者の方の本に「コミュニケーションが苦手とは何たることだ。コミュニケーションは片方の責任ではなく、双方の問題です」と書いてありました。その通りだと思います。なぜ、コミュニケーションが取れない現象が起きているのかと考えなければいけないわけです。外から見て「文脈が読めないんだよね」ではなくて、なぜ双方がかみ合わないのかと突き詰めないと、本当にそれがスペクトラムから来ているのかは分からないと思います。
 また、二次障害といい、表面的には適応障害、統合失調症、気分障害、不安障害などの精神症状でも、よく診ると自閉症スペクトラムによって引き起こされた症状であったりもします。自閉症スペクトラムを持っているか、今の精神症状がそれとは別個のものか、二次障害なのか、という見極めが大事です。このため、あってはいけないのですが、担当する医者によって診断が変わってしまうことも、おそらくあるだろうと思います。

【精神疾患と発達障害】
統合失調症:自閉症スペクトラムの人が統合失調症のような症状が出て受診した場合、統合失調症の治療をしても薬が効かず量がどんどん増えて行くことがあります。その時には自閉症スペクトラム症の二次障害として統合失調症様の症状がでている可能性も考えなければいけないかもしれません。精神科病院に長期入院している統合失調症の人の中に、実は自閉症スペクトラム症の人がいたというデータもあります。
 統合失調症の症状のある人の診察時に医師として迷うことはあります。統合失調症と二次障害としての統合失調症様症状の間には、似通った症状も、これは違うという症状もあります。幻覚妄想、少し奇妙な感じ、独特の雰囲気、緊張病(カタトニア)の症状がある時などは非常に迷います。
 発達障害や自閉症スペクトラムの妄想は体系化されることはあまりないとされ、ある環境やストレスの要因で出現し、その状況から離れると引いていくとされます。ただ、必ずしも一時的ではなく、長期に持続する場合もあります。例えば親と密接に家で生活してきた自閉症スペクトラムの人が、親を亡くした途端に被害的になって受診したが妄想が持続してしまう。それは環境の変化に対する反応であり、悲哀の感情が続いているからでしょう。
 「独特の雰囲気」もあるとされます。場にそぐわない動き、少しズレる感じの特徴がある人がいます。統合失調症の診断をつける時に何か違う空気感があるのをプレコックス感と言いますが、自閉症スペクトラムもそれに似た間合いの取りづらさがあるとも言われます。
 急に動きが止まり体の固まるカタトニアも、統合失調症の場合には薬物療法でないと回復は難しいのですが、自閉症スペクトラムの場合は状況が変わると症状が消失すると言われています。

双極性障害(躁うつ病):ADHDと双極性障害の合併は多いというデータはありますが、臨床場面でそれを見極めるのは難しいものです。

うつ病:最近はあまり主張されることは少ないのですが、病前性格と言って、こういう性格傾向の人はこういう病気になり易い、馴染みやすいという考え方があります。例えば、真面目で融通がきかない人は、会社で決まったことをきちんとやれば良いという明確な中では力を発揮するタイプですが、臨機応変に自らすべきことを見つけ動くという流動的な作業を求められる環境への変化でうつ病になり易くなったと言われています。

自閉症スペクトラムの人の、こだわりが強くて優先順位を振ることが苦手な特徴も、見方を変えれば、真面目で几帳面と言えますが、これは環境が急に変わると適応が難しくなる人とも言えるでしょう。現場での作業が評価されて、マネジメントの立場に変わった途端にうまく行かなくなることも多く、昇進や移動もリスクファクターとして挙げられます。
 先行きや見通しを立てることが苦手で、諦めることが不得手なので、不安や焦りが強くなりがちです。社会的文脈の読み取りづらさから問題のポイントが見えづらく、「自分はちゃんとやっているのに…」と被害的な視点になってしまうかもしれません。そこを誤解され、うつ病は自分を責める病気だというのがあるので、人を責めるうつとはなんぞやという話になったりします。このあたりが新型うつ病をめぐる議論と被ってしまうかもしれません。

強迫性障害:自閉症スペクトラム症の人にも強迫行為、強迫観念様の訴えがあることがあります。
 本来、「手を洗うのを止められない」「不要と分かっていても鍵を確認してしまう」など、強迫観念、強迫行為というのは「分かっているが止められない」という苦痛を感じるもので、自分にとっては違和感があるものだと定義されています。
 この自分にとって違和感がないことが強迫性障害と大きく異なるところです。しかし成長し、社会生活が広がったり、他者交流が増えていく中、こういった点で「どこか自分が違う」と違和感を持ち始める人は多いようで、そうなると見極めが難しくなります。
 転換性障害:何か嫌なことがあった時、受け入れがたい事があった時、心の中で嫌だと感じるのではなくて、足が動かなくなる、声が出なくなるなど体の運動機能の症状として起きるもので、歴史的には後の身体表現性障害と合わせてヒステリーと言いました。

身体性表現障害:これは心の中のトラブルを体の自律神経症状で表現するものです。負荷がかかって心臓がドキドキする、胃の具合が悪くなるなど心身症のようなイメージです。歴史的に転換性障害と合わせてヒステリーと言われており、転換性障害と合わせて症状が出現することがしばしばです。

自閉症スペクトラムの独特の記憶やこだわりの強さに関連すると想定される疾患】
 
自閉症スペクトラムの人はこうした特徴から人間関係にも苦労される人が多いと考えられるわけですが、当然その苦労は友達や近親者間でも起きるわけで、それは時として虐待やいじめという形になってしまうかもしれません。
 一般にPTSDとなりうるトラウマは、PTSDという概念がうまれたベトナム戦争の帰還兵の精神障害に始まり、地下鉄サリン事件などの事件、大事故、大災害など命に係わる体験とされます。このため、そのトラウマの強さ、残り方という点で自閉症スペクトラムのPTSDは、本来のPTSD概念とは異なるという議論もあるようですが、その人にとっての体験は恐らくは同様のものでしょう。

解離性障害:解離とは、日常の自分の意識がないままに何がしかの行動をとっているというもので、よく言われる多重人格などが含まれます(正式名称は解離性同一性障害です)。一般的には外傷やトラウマが原因だと言われています。前述の事情から、解離の人に実は自閉症スペクトラムの人がいるという事は充分想定されるのではないでしょうか。

パーソナリティ障害:PTSDは一般にはある一つの事件、事象が心に留まり続けることから起きるとされますが、これが慢性的に複数回続いていくとき、例えば命や自己存在に関わる酷い虐待を毎日のように、慢性的に受けてきたという場合に起きるときに複雑型のPTSDと表現することがあります。この病態がボーダーライン・パーソナリティ(境界性人格障害)に近いのではないか、ともされます。実は元々自閉症症スペクトラムの傾向がある人が、色々な人との関係、とりわけ自分の養育者との関係がなかなか安定せず…ということが想定されましょう。これに重ね着症候群(衣笠)という名前を使うことがあります。

摂食障害:女性に多く、食事の内容や容姿についてのこだわりから抜け出せない病気です。どんなに「食事量が足りない、痩せ過ぎだよ」と言っても非常に頑なに強迫的に拒み、変化を怖がります。皮膚感覚や味覚も独特で、何か特定のものにこだわる人もいます。私の知っている人ではミルク飴だけ1日に20袋も食べて生き延びている人がいました。痩せを追求し続け、症状が進むと体形以外に目が行きません。痩せているのが綺麗だという割には、身なりや服装には構わないなど興味が狭窄してしまいます。また、摂食障害になると同時に強迫症状を持つことが多く、物の配置や手順などにこだわる人もいます。

【対応と治療-その個人の外側から】
薬物治療:発達障害関連に効果的とされる薬は、現時点では、注意欠陥多動性障害(ADHD)に対する薬剤のみです。商品名としては、コンサータ、ストラテラであり、小児例に対してはこれらに加えてインチュニブという薬剤もあります。
 他の症状、二次症状に対しては対症療法になります。幻覚妄想症状に対しては抗精神病薬、気分変動に対しては気分調整薬や抗うつ薬、不安に対しては抗不安薬を使わざるを得ません。
 薬物療法については一般使用量でも副作用が出やすいとされます。少量でという話もありますが、当然少量では効果の乏しい人もいるので非常に難しい。抗うつ薬でも開始後に落ち着かなくなったり、衝動性、希死念慮が生じるアクティベーションが起きる場合もあり、気をつけなければなりません。

環境調整と精神療法:環境をどう整えるか。小児の治療機関では暗く静かな感覚遮断の部屋があったりしますが、残念ながら成人の一般医療機関にはなかなか無いので落ち着ける環境を作ることや工夫が課題です。耳栓を使う、低い音量で音楽をかける、触り心地の良いものを使うなど、何がその人にとって適切なのか相談しながら進めていきます。
 分かりにくい文脈などに関しては、箇条書きなど見やすい形にして一緒に相談しながら優先順位をつける。こだわりについては、良いこだわりと悪いこだわりがあるので「これは困る」という部分を減らして、やっても良いこだわりに振り分けるような方法もあるようです。
 不都合なところを減らすことは難しいので、他の部分を如何に広げるか、難しい作業ですが、現場で試行錯誤していくことだろうと思います。
 次に援助を巡ってですが、本人の苦手とか困難とする部分をどう考えるか、出来ることと出来ないことをどう見極めるかが非常に重要かつ難しいところです。
 このことについて自閉症関連の著書の多い本田秀夫医師(信州大学)は、「自閉症スペクトラムに関わる時に、(我々支援者は)2つの相矛盾するところに放り込まれる」と言います。それは、発達を伸ばし促すのか、不足しているものを補うのかという視点です。
 この「本当に出来ないのか、できるのにやらない(やれない)のか」といったジレンマはそもそも人の発達は同じではないこと、同時に定型発達と呼ばれるパターンと比べるとスピードも違うのだという視点を持ち続けることで対応していくしかないと思います。そもそもが3つ組の特徴があっても個人によってその度合いは異なるので、結局、個人個人に応じた対応が必要になります。
 例えば発達を強いる、つまり出来ないことを「出来るはずだ」としてしまうと、当事者に大きなストレスがかかります。一方、始めから補えば良いかというと、その人の持つ可能性をあきらめることになりかねません。繰り返しになりますが、支援者にとっても当事者にとっても難しい判断です。
 また、3つ組も含めた診断基準は外から見えるものですが、我々には時として見えない問題があることもあります。例えば見た目は問題なく出来ているようですが、「他の人の真似で乗り切って来たが、どういう意味か分からない」とか、「怒られるから従っているだけ」というものです。当然、その人には実際は大きな負荷がかかっているということで、問題がないと考えていたことで後々にその人が破綻してしまうこともありうるわけです。
 こうして考えていくと、診断基準としてある3つ組の特徴には囚われないことも大事で、医療者も含め周りの人たちが本人の体験をどれだけ聞いて感じられるかにかかっていると思います。
                                          ~了~

平成17年4月からの新宿家族会ホームページ「勉強会」の表示形式について

 新宿家族会では4月から「勉強会」ホームページの表示について、概略掲載とすることになりました。そして、「フレンズ」(新宿家族会会報紙)ではいままで同様、あるいはより内容を充実させて発行することにしました。これまで同様に勉強会抄録をお読みくださる方は、賛助会員になっていただけますと「フレンズ」紙面版が送られますので、そちらでお読みできます。
どうぞ、この機会に是非賛助会員になっていただけますよう、お願い申し上げます。

賛助会員になる方法    

新宿家族会へのお誘い 
 新宿家族会では毎月第2土曜日、12時半から新宿区立障害者福祉センターに集まって、お互いの情報交換や、外部からの情報交換を行い、2時からは勉強会で講師の先生をお招きして家族が精神障害の医学的知識や社会福祉制度を学び、患者さんの将来に向けて学習しています。
入会方法 

編集後記

 相変わらず梅雨空が続いている。しかし、今、太陽は最も日本に近いところを通っている筈だ。日本に梅雨がなかったら、などとタラレバの話をしても意味がないが、恐らく7月は猛暑の連続であろう。梅雨の入りを入梅。終りを出梅という。なぜ梅なのだろうとインターネットを調べると「梅の実の熟する頃に降る雨の意」とあった。なるほど。

 さて、今月の木崎先生の「発達障害の理解と対応・・」であるが、あまりにも発達障害の病名・症状の種類が多くて、記憶力の鈍ってきた私などは何度も読み返すほどである。そして、専門とは言え、これらの病名を記憶し、患者の症状から診断を下すのだから精神科医とは余程記憶力に優れているのだろう。

 それから先生の話の中で、自閉症スペクトラムの「障害の三つ組」の診断基準。発達障害を語る上でこの三つ組がいかに大切かが判る。自閉症スペクトラムでカナー型の濃い人からだんだんと薄くなるに従い、アスペルガー症候群となり、さらに薄くなると定型発達となるという。そして、それは人間誰しも自閉症スペクトラムに含まれるという医師もいるという。

 よく精神障害者は五体は何の問題もなく、だから健常者と思われてしまうが、日常的に行動に何か違うところがある。それは発達障害の人も統合失調症の人も同じだ。そこから、苛めの対象になったりするのである。それが判るのは我々が同じ悩みの子をもつ家族であるということからだ。それを誇りと思うのはとんだ過ちであるが、そのような場面に出会ったならば、苛められている彼を助ける親でありたい。