オープンダイアローグに学ぶ家族の「対話」

新宿区後援・11月新宿フレンズ講演会
講師 臨床心理学 東京学芸大学准教授 福井里江さん
科学哲学 東京大学准教授 石原孝二さん

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石原孝二 2人ともオープンダイアローグ・ネットワーク・ジャパン(ODNJP)に属して、私は共同代表、福井さんは運営委員をしています。

福井里江 この講演会の前には新宿フレンズさんの家族相談会がおこなわれていましたが、自分の気持ちを話せて聞いてもらえて、いろんなアイデアを交わせる場があるのは大事なことだと思いました。

 今日は、オープンダイアローグ(開かれた対話)とは、どういうものかを説明し、後半は、家族の関わりの中で活かす1つのキーワードは「ダイアローグ」ですから、日頃の「会話」とは少し違う「対話」をグループワークで体験して頂きます。
 色々と難しい状況にある時は、互いに自分の気持ちを上手く伝えられず、家族のコミュニケーションが難しくなることが多いのですが、それは本人も家族も悪いわけではない。互いに工夫して暮らしやすくするための1つが「対話」だと思います。
 オープンダイアローグについての何かの会に参加したことがある人はいますか。(半分以上が挙手)すごいですね。

【一人ひとりの声が尊重され、つながりが続くことで精神状態が改善する】
 福井 オープンダイアローグは、フィンランドの北方、スウェーデンとの国境近くの西ラップランド地方にあるケロプダス病院という小さな病院で、1980年代に生まれた、対話を中心とした治療的アプローチによる精神保健システムです。
 統合失調症では薬物治療が必須と考えられている精神医学界において、オープンダイアローグの登場は大きな衝撃を与えました。初発の統合失調症の患者さんとその家族にオープンダイアローグをおこなったところ、抗精神病薬が必要だった人は35%にとどまり、2年後の追跡調査でも、症状が残っていないか残っていてもわずかだった人が8割以上だったのです。この素晴らしい治療成果によって、オープンダイアローグは世界的に注目を集めることになりました。
 「対話によって精神疾患が治るのか」と驚きますが、対話を中心とした治療の仕組みをよく聞けば、「一人ひとりの声が尊重され、つながりが続くことで精神状態も良くなっていく」ということなのです。

ケロプダス病院のシステムの優れたところ】
福井 ケロプダス病院では、危機的状況で困った住民が電話をかけると、最初にベテランのスタッフが電話を取り、必要があると判断されればすぐ、電話から24時間以内に支援がスタートします。家族が大変な思いをしているのに、何週間、何か月も待たなければいけない、ということがありません。そして、本人だけ、あるいは家族だけと話すということはしないで、最初から大切な人をみんな招いて治療ミーティングをおこないます。スタッフも1人ではなくチームで対応します。
 2017年、ODNJPでは、オープンダイアローグを始めた当時のケロプダス病院長で精神科医のビルギッタ・アラカレさんと、臨床心理士のヤーコ・セイックラさんを招いて講演会(*)を開いたのですが、このとき、オープンダイアローグは「本人のいないところで、本人のことを話さない」とスタッフ全員で決めた日から始まったと聞きました。それが1984年8月27日のことです。その日以来、治療チームが本人や家族のことを話すのは、彼らがその場にいるときだけになりました。オープンダイアローグが実現するのにどれくらい時間がかかったのかといえば、「1日です。その1日で全てが変わりました。」というのです。
 ヤーコさんの話で印象深かったことがあります。最初はヤーコさんも治療計画を作ろうと思って治療ミーティングに関わったのですが、そのうちに、大事なのは計画を立ててその通りにやることではなく、「対話そのものが本人にとって最善の治療である」と気づいて驚いたそうです。
 なお、オープンダイアローグは薬を使わない反精神医学と誤解している人もいますが、必要があれば薬も使い、1対1のトラウマ治療が必要であれば行うというように、ニーズに応じて柔軟に対応します。しかもすべて無料という素晴らしい仕組みです。

石原 オープンダイアローグは対話実践のことだけと誤解されることも多いのですが、むしろシステムが重要で、システムが無ければオープンダイアローグを実行することはできません。
福井 イタリアのトリエステも、精神保健システムを改革し、精神病院を閉鎖したことで知られています。そこの元ドーミオ地区精神保健センター長でオープンダイアローグ・トレーナーのピーナ・リデンテさんが、先日来日して講演されたときに強調していたのも、対話実践とシステム改革の両方をセットでやらないと医療は変わらないということです。

【オープンダイアローグの7つの原則】
福井 オープンダイアローグの7つの原則は、長年の対話実践の積み重ねの中で、治療がうまくいったときは何が良かったのかを振り返り、そのポイントを抽出したものです。ケロプダス病院のスタッフは今でも毎年、これが本当に自分たちにとって大事な7原則かを確かめるダイアローグをしているそうです。

原則1)即時対応
福井 クライシス(危機、急性期症状)があった時には24時間以内にすぐに対応するということです。
石原 24時間以内というのは非常に意味があります。オープンダイアローグの場合は急性期を重視し、急性期だからこそ窓が開いていると言います。普通の精神科医療では、まず薬を投与して鎮静を掛けてから治療を始めるのが普通ですが、オープンダイアローグは急性期に、スタッフが2人以上で行って対話することが非常に重要な治療だと考えます。

原則2)社会的ネットワークの視点を持つ
福井 治療ミーティングには、本人だけでなく家族も招き、本人にとって大事な人がいたら、その人にも入ってもらいます。例えば友だち、学校の先生、必要であれば他の専門家などです。本人を支えるネットワークの中で、皆の声を聞きながら治療を進めます。

原則3)柔軟性と機動性
石原 ニーズ適合型アプローチのシステムは、例えば統合失調症だからとりあえず投薬というのではなくて、1人1人のニーズに対応する治療を行います。ミーティングの場所も病院の外来やクリニック以外にも、本人が自宅を希望すればそこでなど、クライアントのニーズを重視して対応します。
福井 2016年、ヤーコさんと未来語りのダイアローグで知られるトム・アーンキルさんが初めて来日され、東京で3日間のワークショップが開催された時、ある精神科医が「私はこれまで、まず診断をつけ、次に治療プランを立て、そのプランに添って治療をしてきました。でも今、オープンダイアローグを学んでそれが揺らぎ、苦しいです。」と発言されたのが心に残っています。ヤーコさんたちは研修会の締めくくりの時間に、その精神科医と、オープンダイアローグが日本にないことへの危機感を表明したご家族のお2人を舞台に招き、愛情を込めてムーミングッズをプレゼントされました。日々変わっていくニーズに柔軟に対応し、必要であれば自宅でも他の場所でもミーティングに出かけていく機動力は、治療者の見立てや治療プランが優先されがちな病院中心の医療文化とは大きく異なるものであることを痛感します。

原則4)責任を持つこと
福井 最初に連絡を受けた人がネットワークを作り、その後はそのチームが治療全体に責任を持って関わっていきます。例えば本人がアルコールの問題を抱えていたら、その人にアルコール専門病院に行ってもらうのではなく、アルコールの専門家に治療ミーティングに来てもらい、チームの責任のもとで対応していきます。たらい回しにしないところが重要なポイントです。

原則5)心理的連続性
石原 原則4と同じようですが、必要とされる限り入院時も退院後の外来も、クライアントが回復して「治療の必要はない」ところまで同じチームが責任をもって治療にあたります。
福井 日本では年度替わりに医師などの交替がよくあり、主治医が変わると最初からやり直しのようなことも起きますが、ケロプダス病院の場合、スタッフの離職が非常に少ないので、前からのことを知っている人にずっと担当してもらえる安心感があります。

原則6)不確実性に耐える
福井 オープンダイアローグ全体に関わる非常に重要な言葉です。対話の場では、本人の思いと家族の思いが一致しなかったり、葛藤が生じたり、お互いに違いが出てくることがよくあります。それでもつながりを切らず、皆が安心安全に対話できる場を保ち続けるには、たとえ葛藤があったとしても、すぐに結論に飛びつくのではなく、不確実な状況に耐えることが必要です。
幻覚や妄想のある急性期では特にそうです。投薬という結論をすぐに出すのは慎み、必要に応じて毎日でも対話を続けます。抗精神病薬を導入するのは、その他の努力をしても不十分であると分かってからにするのです。

原則7)対話主義
石原 対話主義は、多様な声に耳を傾け、対話を続けることということになりますが、オープンダイアローグと考えても良いくらい重要な原則です。普通、医療の場での会話は、本人を変えようとか、落ち着くようにとか、何か目的をもってやる場合がほとんどです。しかし「そうではない」のがオープンダイアローグの大きな特徴で、対話を続けることを目的にします。
無理やりでなく対話を続けるには、特にクライアントである当事者が、その場が居心地良い、少なくともこの対話を続けたいと思ってもらわないと続きません。スタッフはそのことを念頭に置きながら対話を続けることを目的にします。
福井 対話の継続は、本人と家族が自分の世界の中で主体性の感覚を増すことに意味があります。対話では、ポリフォニー(多声性)といって、多くの声が重なっていくことが大切にされます。シンフォニーつまり調和しなくてもよくて、それぞれ全く違うことを言っていても、それが否定されないで、ずっとその対話が織りなされていく。対話を続けると「自分はこういうことを思っているのだな」という感覚が生まれてくる。それが大事なのです。

【治療ミーティングの流れ】
福井 初回の治療ミーティングでは、自己紹介を丁寧におこない、お互いをどんな呼び名で呼んだらよいかなども確認します。ファーストネームで呼び合うような対等な関係性の中で、皆にとって安心安全な場を作っていきます。
 次に、今日この場に集まってくださったことへの経緯と期待を聞いていきます。「どんな経緯で今日この場に来てくださいましたか」「この場に何を期待してこられましたか」「この場がどんな場であると来てよかったと思いますか」という質問です。これは、1人1人に必ず聞きます。
 その後も、スタッフは開かれた質問つまりYes、Noで答えられないような質問をして、本人や家族の声を聞いていきます。すると、今まで聞いたことのなかった思いや望みが初めて語られたり、それを聞いてお互いの気持ちが動いたりします。そうして全員の思いが語られる場を作っていきます。
 大事なのは最後の締めくくりです。皆さんも、診察が終わってから「これも言えばよかった、あれも言えばよかった」と思った経験があると思いますが、15~20分くらいは締めくくりの時間にあてます。「そろそろ終わりの時間が近づいています。何か言い残したことはありませんか」と丁寧に聞いていき、最後までそれぞれの声を拾いながら、結論は無理に出さず、次回のミーティングを約束して終わります。これが治療ミーティングの進め方です。

【「対話」を実感してみよう】
福井 オープンダイアローグはシステムでもあるので今すぐの実現は難しいけれど、その中でも私たちの日頃の暮らしに少しでも役に立つものをということで、今日のワークは「対話についての学び」です。「対話」とは日常の「会話」とはどんなふうに違うのかを感じていただければと思います。
石原 聞くことと話すことを分けるのが特徴です。普段の会話では空気を読んでこの方向にまとめたいとなってしまいがちですが、それを避けるためです。

ワーク1:「今日どんなことを期待してここに来たか」についてのリスニングワーク

お互いに5分ずつ話し役、聞き役となって対話する。

その感想。

「5分は長い。3分くらいは引き出しの中にあるものを出せばよいが、話が途切れそうになると、そのさらに奥にあるものを必死に引き出すような感じ。でもそこで出てくるものこそが大事なのかもしれない。」

「自分は無口な方なので聞くことは違和感がなかったが、相手が家族、特に父親とは無理そうだと思った」

石原 様々な場でワークをしてきましたが、家族会から出て来る感想は援助職の人たちとはちょっと違うなという感じがしました。第三者が入った方が純粋に聞けるので、家族だけでオープンダイアローグをするのは難しいかもしれません。

しかし、オープンダイアローグの考え方自体、とくに対話は関係を変えるきっかけになると思うので、このワークの体験を頭の片隅において日々の生活をしていただけるとよいと思います。

福井 5分間、自分の話をずっと口を挟まずに聞いてもらえるという経験は、普段の暮らしの中にはあまりありません。最初はスラスラ出てくるけれども、その後、絞り出されるものは、日頃は意識してないけれど、実は自分にとって大切なことだったりします。ただ聞いてもらうだけで、自分が意識してなかった心の声が出てくることがある、そこが「対話」の可能性です。

ワーク2:「家族と関わるときに自分が大切にしている価値観」というテーマでのリフレクティングワーク。

先ほどのペアが2組集まってチームを作る。1組目(AさんBさん)は話し手チームとなり、Aさんが話し役、Bさんが聞き役となって話をする。2組目のCさんDさんはリフレクティングチームとなり、1組目の話し役Aさんの話が終わったら、それについて思ったことを前向きな言葉で語り合う。そして、リフレクティングを聞いてどう思ったかを、さらにAさんとBさんとで語り合い、最後に4人で振り返る。

このリフレクティングワークを実践後の感想。

「私はA さんになり、自分の発症に母親の理解がないことに苛立ち、言葉の暴力があったという話をしました。20歳で発症し、現在38歳ですが、ようやく相手を傷つけないという価値観に気が付きました。それを話すと、リフレクティングワークの時のCさんとDさんは涙ぐまれてしまいました。自分の話を聞いて誰かが涙するという経験は今までなかったので、びっくりしました。」

「看護師なのでワークをやるのは初めてではありませんが、今日は家族として参加しました。家族同士で話すのは、支援者と話すのとはまったく違いました。今後、支援者間だけで話すのではなく、家族と本人との対話をやりたいと思います」

「時間が足りず、リフレクティングはとても難しいと思いました。研修を受けないと効果がないのでは?」

福井 リフレクティングというのは、聞いていて心に浮かんだことを反映するという意味の言葉です。価値観というテーマを語る時に、今日の時間配分の5分は短いでしょうが練習と思ってください。相手の言葉を聞いて、自分の心がどう動いて、それをどう話したら相手を大切にしたことになるのかは深いテーマですので、やはり練習が必要です。
 
「一番心に響いたのは、話し手のAさんが『言わなくても分かるだろう、という気持ちがあった』と言ったことです。リフレクティングは言ってるつもり、聞いてるつもりを表面化させるシステムなのではと思いました」

 「私は話を聞く役Bでした。その話を聞いていたリフレクティング役のCさんとDさんが『自分のことをもちこまずに、本人を大切にするためにどうすればよかったのか』という話をするのを聞いて、改めて考えました。リフレクティングは、本人Aさんについて話すことだったのか、それとも本人の話を聞きながらCさんとDさんお2人の中に出てきたものを反映させることが正解だったのかと…」

石原 リフレクティング時に、いつも強調して注意しているのは、「話を聞いて触発されてつい自分の話をしたくなる」ことです。例えば苦しかった経験を聞いた時に、自分の苦労の話に終止することや精神医学的な解説をするなどは控えます。
福井 「そういえばあの本にこう書いてあった」などの話は、Aさんの話を聞いて1人の人間として心がどう動いたのかではなく、あくまでも自分が話したいことです。「人間にとって応答がないことほど恐ろしいことはない」という言葉がありますが、その人の語ったことに、違う話を持ち込まずに応答することがダイアローグでは大切です。

石原 リフレクティングは傾聴ではありません。共感して聞くだけではなく、それに加えて応答することは、心の中に浮かんだことを言うことになります。単に言葉を繰り返すだけではなく、自分の中に浮かんだことを言うのですが、それが本人の話と無関係なものや気持ちを害するものであってはいけない、というところが難しく、何回か繰り返し練習しないとできないところです。応答するには本人に好奇心を持つことが大事です。「もっと知りたい」「もっと話をしたい」という気持ちをもって、「自分が聞きたいことを聞く」ではなく、「相手が語りたいことを語ってもらえるように聞く」ことです。ここが「会話」と「対話」の違いでもあります。

「話し手のAさんが聞き役のBさんに話をしている時に、横で聞いているCさんとDさんはうなずいてもいけないのですか。日ごろの癖で、ついうなずいてしまう」

石原 うなずくくらいなら良いでしょう。話に介入しない、というところが重要です。

「急性期の時こそ介入すべきだというお話がありましたが、急性期の当事者は大変な時で、話もできない状況です。日本の医療では、薬をどんどん与え、本人と対話するなどまったくありません。対話に時間をかけて行くと何とかなるのでしょうか」

石原 西ラップランドでの実践として、3回までは投薬をしないでミーティングをやるという決まりがあります。

福井 ダイアローグをしたくても本人がその場に一緒にいられないとか、座っていられないということが起こります。でもそれは本人の自由であり、部屋を出てもよいのです。それでも家族がダイアローグを続けることはできますし、本人も聞きたかったら扉1枚隔てて聞くこともできます。そのあたりの空間の作り方は、柔軟に対応します。

 毎日ミーティングを継続するとは、「1晩頑張れば明日が来る」ということ、それを重ねていくことです。ビルギッタさんの話では、誰から見ても薬を飲まないと乗り越えられないと思った危機を、薬を使わずに毎日ダイアローグを重ねて、30日くらい経った頃に、やっと落ち着きがもたらされた例もあったそうです。ずっとそばに居続ける、という支えがあるから成り立っていると思います。

*ヤーコ・セイックラ&ビルギッタ・アラカレさんの講演録・オープンダイアローグ・ネットワーク・ジャパンのHPを開けて、ODNJP会報_No.2.pdfをダウンロードしてください。その22ページ。https://www.opendialogue.jp/

「創始者が語るオープンダイアローグ

     ―誕生の物語と未来への可能性―」

平成17年4月からの新宿家族会ホームページ「勉強会」の表示形式について

 新宿家族会では4月から「勉強会」ホームページの表示について、概略掲載とすることになりました。そして、「フレンズ」(新宿家族会会報紙)ではいままで同様、あるいはより内容を充実させて発行することにしました。これまで同様に勉強会抄録をお読みくださる方は、賛助会員になっていただけますと「フレンズ」紙面版が送られますので、そちらでお読みできます。
どうぞ、この機会に是非賛助会員になっていただけますよう、お願い申し上げます。

賛助会員になる方法    

新宿家族会へのお誘い 
 新宿家族会では毎月第2土曜日、12時半から新宿区立障害者福祉センターに集まって、お互いの情報交換や、外部からの情報交換を行い、2時からは勉強会で講師の先生をお招きして家族が精神障害の医学的知識や社会福祉制度を学び、患者さんの将来に向けて学習しています。
入会方法 

編集後記

 今年も終わろうとしている。そんな時、二つの出来事があった。一つは中村哲氏の銃撃事件。そして、もう一つは吉野彰氏のノーベル賞受賞のニュースである。二つのニュースにその差の大きさを感じたのは私ばかりではないだろう。憲法九条を信じて活動していた中村氏。皮肉にも残念な結果となってしまった。一方の吉野氏はリチウムイオン電池を開発し賞を頂いた。今回の受賞がなかったら私などはリチウムイオン電池は海外の開発商品であろうと思っていた。両者とも世界レベルの人格者である。

 さて、新宿フレンズではオープンダイアローグについて学んだ。ODNJP共同代表・石原孝二さんと運営委員の福江理江さんに講師を依頼した。まず、福井さんからオープンダイアローグは対話による治療の精神保健システムであると述べられ、一人ひとりの声を尊重し、つながりを続けて行くことで精神状態も良くなるという。

 一方の石原さんはリフレクティングワークのところで、それは傾聴でなく応答するには本人に好奇心を持つことが大事であると言う。相手が語りたいことを語ってもらえるように聞くことであると述べている。

 なかなか難しい話である。しかし、オープンダイアローグは統合失調症、うつ病、引きこもり、最近は発達障害の治療法としても期待されているという。とにかく、薬偏重の日本の精神医療の世界に一石を投じたことは間違いない。 

 統合失調症患者はおおにして無口になり勝ちであり、そこから開放することを目的とする対話。これから大いに期待したい。